映画『悪魔のいけにえ』をゲーム化した「Texas Chain Saw Massacre」は、“白昼の恐怖”で人々を魅了する

伝説的なホラー映画『悪魔のいけにえ』に基づくゲーム「Texas Chain Saw Massacre」の開発が進められている。その開発中のバージョンを試してみたところ、“白昼の恐怖”が際立つ期待を裏切らない体験だった。
Screenshot of Texas Chainsaw Massacre game featuring character hiding from killer
Courtesy of Gun Interactive

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心臓が脈打ち、手のひらが汗でびっしょりになりながらキーボードを連打する。この家から逃げ出さなくてはならないのだ。切り裂くようなチェーンソーの音がすぐそばでうなるなか、わずかな瞬間に綿密な戦略を立てる。

そして姿を見られないようにしながら、窓ガラスに突進する。外界との間にある窓ガラスを割って外に出るのだ。日の光とガラスの破片を体中に浴びながら、前庭に逃れられたことに一瞬だけホッとする。これが間違いだった。心臓が止まりそうになる。ヒッチハイカーが芝生の向こうから自分のことを見つけて、こちらに向かって来たのだ。

ヒッチハイカーのポケットナイフが背中に当たり、皮膚を切り裂く。血が滴り、アドレナリンが身体中を巡るなか、最後の力を振り絞って泥だらけの田舎道を全速力で走る──。

すると、この戦いを生き延びたことを祝すメッセージが画面に表示された。ようやく、安堵のため息をつく。すべては1974年のホラー映画『悪魔のいけにえ』を原作としたゲーム「Texas Chain Saw Massacre」で起きたことだ。

このゲームを間もなく発売するのは、映画『13日の金曜日』を原作としたゲーム「フライデー・ザ・サーティーンス:ザ・ゲーム」を手がけたGun Interactiveである。まだ明確なリリース日は発表されていないが、2023年に発売されるとみられている。ゲームの開発はSumo Digitalが進めているところだ。

「Texas Chain Saw Massacre」のデモ版をプレイする機会をGun Interactiveが与えてくれることになったとき、このチャンスに飛びついた。お気に入りのホラーゲームはあるが、ほかのホラーゲームも試してみたかったのだ。

際限なく何度でもプレイできて、コミュニティでのプレイも楽しめる「Dead by Daylight」は、いまもお気に入りのゲームのひとつだ。それでも、ほかの非対称対戦型ホラー体験にも心を奪われるのかどうかを知りたかった。そして、この“テキサスの大量殺人”は、期待を裏切らなかった。

このゲームの最初の宣伝文句だけを聞くと、「Dead by Daylight」に似ているように思えるかもしれない。だが、プレイ内容はまったく違う。まず「Dead by Daylight」は殺人鬼1人と生存者4人との戦いだが、「Texas Chain Saw Massacre」では4人の犠牲者が3人の凶悪な殺人鬼に立ち向かう。

また、「Dead by Daylight」では犠牲者に反撃する手段をほとんど与えていないが、「Texas Chain Saw Massacre」では最後の瞬間まで戦うことができる。殺人鬼のひとり「レザーフェイス」を刺し返そうとすることもできるし、アメフトのラインバッカー並みのタックルを食らわせて殺人鬼を弾き飛ばすこともできるのだ。

「白昼の恐怖」という相違点

今回のレビューでは、「Texas Chain Saw Massacre」を3回しかプレイしていない。キャラクターのスキルツリーにはアクセスできていないし、ゲームの全体的なパランスや、繰り返し楽しめるかどうかについてはまだ判断できない。

まずはデモンストレーションの後、Gun Interactiveのエグゼクティブプロデューサーのイズマエル・ヴィセンズと、ブランド戦略リードのマシュー・ゼップに、このゲームについて詳しく聞かせてもらった。

プレイの構造以外にほかの人気ホラーゲームと違っている点は、白昼の恐怖に着目している点だ。「凄まじい恐怖が本当に威力を発揮するのは、人が安全だと思うことに恐怖を感じさせたときなんです。期待が裏切られ、一瞬にして不安に陥りますから」と、ヴィセンズは語る。

「Texas Chain Saw Massacre」の「期待を裏切る」恐怖をさらに詳しく説明する際に、ヴィセンズはこう説明した。「生存者として前庭に逃げ出すと、美しい光景が広がっています。地平線には太陽が輝き、長く伸びた影や色とりどりの花畑が見えます。それでも、チェーンソーを持った男がまさにドアをぶち破ってこちらに向かって来ようとしていることもわかっているのです」

ビデオゲームが恐怖を伝える手段として優れている理由を説明して、ゼップはこう語る。「既存の伝達手段について考えてみると、映画を観ているときはその恐怖の傍観者ですが、ゲームをプレイしているときは、その恐怖に積極的に参加する人、あるいは犠牲者になるのです」

Courtesy of Gun Interactive

ひときわ明るく輝く“血まみれ”の体験

小さなゲーム会社であるGun Interactiveは、すでに発売したゲーム「フライデー・ザ・サーティーンス:ザ・ゲーム」で法的な障害に直面した。基になった映画『13日の金曜日』の脚本家であるヴィクター・ミラーが米国内での版権の返還を求める訴訟を起こし、勝訴したのだ。この訴訟によって、「フライデー・ザ・サーティーンス:ザ・ゲーム」の新たなコンテンツのリリースは中断した。

ヴィセンズは、「Texas Chain Saw Massacre」が彼らにとって慣れ親しんだやり方で自社を救済しようとする作品であるという考えを否定した。「このゲームは単に昔に戻って、すでに自社がやってきたやり方を繰り返しているわけではありません。わたしたちの得意分野に収まりながらも、わたしたちにとって新しいものや異なっているものを備えた本当に素晴らしいゲームだと思っています」

「フライデー・ザ・サーティーンス:ザ・ゲーム」で、すべてのことが立ち消えになった後なので、ホラーファンたちは期待することに慎重になっているだろう。それでもヴィセンズは、今回の状況は違うことに自信があるようだ。

「Texas Chain Saw Massacreのすべての権利は、基になっている映画の脚本家キム・ヘンケルがひとりで所有しています。これは今回のゲームのメリットのひとつです」と、ヴィセンズは説明する。

「Texas Chain Saw Massacre」はいまの暗く陰気なホラーゲームの風景において、ひときわ明るく輝く満足ゆく血まみれの体験になることだろう。殺人鬼一家のひとりとしてプレイするにしても、絶望的な被害者としてプレイするにしてもだ。

WIRED US/Translation by Miho Amano, Galileo/Edit by Daisuke Takimoto)

※『WIRED』によるゲームのレビュー記事はこちら


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