ゲーマーたちの間で最も議論が白熱するテーマといえば「難易度」だろう。誰もが断固とした意見をもっていて、それらはおおよそ次のふたつの意見に分かれている。
ひとつは、ゲームは腕のよし悪しに関係なく誰でも楽しめるものであるべきだという意見。もうひとつは、自身をゲーマーと呼ぶのであれば、ゲームを極めるまでプレイし続ける根気が必要だとする意見だ。
しかし、この論争にはもうひとつの視点が存在する。未熟なプレイヤーでも挑戦が可能であると同時に、やりがいを求めるゲーマーにとっては簡単すぎないものであるべきだというものだ。つまり、プレイヤーが各自の腕に応じて上達できる難易度である。
どんなゲームであろうと、プレイヤーは過去の間違いやクリアした経験から学びを得て、おのずと上達していくものだろう。それでも開発者側は、プレイヤーが死んだ理由を理解できないままにならずに学びを得られるようなゲーム性を、やろうと思えば構築できるはずだ。すなわち、難しすぎず簡単すぎない方法でゲームの仕組みや動き方をプレイヤーに教え、失敗しながらも先に進めるよう導いていけばいい。
その好例が「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」だろう。ララ・クロフトを主人公とする人気シリーズで、スクウェア・エニックスによるリブート作品である。
このゲームをプレイしていると10分に一度は死んでしまうのだが、プレイ時間が5時間を超えても楽しすぎてやめることができない。最初の30分で6回も死んでしまった「ELDEN RING」をプレイするときとは違って、死ぬたびに学びを得られる気がする。
多くの人が「ELDEN RING」はそれほど難しくないという考えを曲げない。頻繁に死ぬ理由はそのように意図されているからであって、チャレンジを克服する(あるいはそこから逃げる)方法を学べるのだという。
だが、それは違う。「ELDEN RING」をプレイしていて思うのだが、ランダムに死んでいるような気がするのだ。
しかもいまいましいことに、死んだ理由はレベルが低いせいなのか、魔力(FP)が足りないのか、それとも武器の性能やスキルに対するプレイヤーの知識が不十分なせいなのかわからない。おかげで猛烈に腹立たしくなってしまう。これに対して「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」は、自分の実力が及ばないのはどこなのか、それをどう修正すればいいのか教えてくれる。
誤解のないように言いたいのだが、「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」の難易度は「ELDEN RING」とは違うかたちで設定されている。「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」の難易度を「イージー」に設定した場合、その名の通りに簡単だ。しかし、ここではそういう話をしているわけではない。
ゲームではおおむね、ジャンプしたり、走ったり、スライディングしたり、障害物を回避したり、ブービートラップからうまく抜け出す方法を突き止めたりするものだ。個人的に知る限り、そうしたゲームの仕組みは難易度の設定によって左右されることはない。つまり、突破する方法を解明するには、ララに血と汗と涙を流してもらうほかないのだ。
とはいえ、実を言うと「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」をプレイしていて、ひとつのミッションで2回以上死んだことは一度もない。死んでしまうときは、たいてい何が起きるのか見当もつかず、とんでもないミスをしてしまった場合に限られる。
だが、死んだあとはその原因をはっきり理解し、それを克服する方法も把握できる。それに、死ぬ直前の場面からゲームが再開されるので、難なくクリアして次のミッションへと進めるのだ。繰り返しが多くてうんざりすることもなければ、1回目で失敗したところを乗り越えるために5分も10分も(もしくはそれ以上)同じ場面を延々とプレイさせられることもない。
こうして死ぬたびに学べることがあり、おまけに優しく教えてもらえるので、いらいらせずにその失敗を胸にしまい込める。だが、残虐な殺され方をすることもあるのに「優しく」という表現を使うのは妙な気がする。ララが串刺しにされるところは嫌というほど見たのだ。とはいえ、これを的確に表現する言葉は「優しく」以外に思いつかない。
チュートリアルや説明もないままプレイヤーをゲームの世界に放り込んで、あとは進めながらやり方を解明していくことを求めるゲームに対して、ひとつ言わせてもらいたい。
そうしたゲームから感じるやりがいや没入感を「いい」と考える人もいるのだろう。しかし、個人的にはお断りだ。ゲームに打ちのめされることなく、必要な知識が得られてプレイヤーのスキルの上昇を感じられるゲームのほうがいい。
その点、「ライズ オブ ザ トゥームレイダー」なら、死を通じて自分のプレイスタイルをつくり上げることができ、自信が損なわれることはない。ゲームとは、そういうものではないのだろうか。
(WIRED US/Translation by Yasuko Endo/Edit by Naoya Raita)
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