FASHION

バレンシアガのデムナ、独占インタビュー:ファッションを前進させる思考と言葉

デムナ。バレンシアガのアーティスティック・ディレクターである彼は、間違いなくファッションを変えた。都市の若者たちの装いを変え、音楽との関係をより豊かにし、ゲームとメタバースにモードを接続した。つまりファッションの未来を展望するために欠かせないクリエイティビティの持ち主である。パリコレクション直前、メールインタビューが実現した。
バレンシアガのデムナ、独占インタビュー:ファッションを前進させる思考と言葉
PHOTOGRAPH: BFRND

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.52 特集「FASHION FUTURE AH!」より。詳細はこちら

──『WIRED』日本版で取材するべきファッションデザイナーとして、真っ先にあなたのことが思い浮かびました。編集部でもアナ・ウィンター(コンデナストのチーフ・コンテンツ・オフィサー兼グローバル・エディトリアル・ディレクター)との会話のなかで「ファッションを特集するなら、デムナに話を訊いてみては」と提案があったそうです。

デムナ(以下:D) 『WIRED』は個人的に好きで、以前よく購読していたんです。ファッション誌からは刺激的な内容を得られず、普段買うことはないのですが、多様で革新的な記事が多くあり、とても興味深く感じていました。ですから今回のインタビューに応じることは、わたしにとってもごく自然な流れでした。ありがとう!

──2015年にバレンシアガのアーティスティック・ディレクターに就任して以来、テーラリングに焦点を当てているように思います。ストリートウェアと比べると、歴史的に制約や条件がありますが、あなたにとってどのような存在ですか?

D テーラリングは、常にわたしのファッションのなかにあるもののひとつです。服の構造にとても興味があるので、フーディよりもジャケットやコートを組み立てて解体するほうが、見るからに複雑でワクワクします。とはいえストリートウェアを単純にTシャツやフーディだけに限定すべきではありません。

毎シーズン心がけているのは、現代に生きる人々もテーラリングを理解できるようにすること。新たなコンテキスト、つまり若さやアティチュードという文脈に接続することで、ストリートウェアの一部にもなっていく。テーラリングの進化の道はそれしかないと思います。一般的にイメージされるような伝統的なテーラリングは、服に興味をもたない退屈な人たちのもの。だからこそわたしはファッションが本当に好きな人のためのテーラリングを追求していきたいのです。

SUMMER 24 服づくりへの敬意をコンセプトにした、SUMMER 24コレクションは、テーラリングへの愛情を色濃く感じさせ、ドレスからストリートウェアまでを自在に往復した。COURTESY OF BALENCIAGA

──FALL 24のコレクションは “HOLLYWOOD” のサインを背景にLAで発表されました。ジャージーやベロアのトラックスーツといったアクティブウェアは、テーラリングとは相反するようなものにも見えます。しかし、これもあなたにとっては同じもの、あるいは矛盾をあえて呼び込んでいるのでしょうか?

D ファッションとは対立することだと考えています。シェイプ、シルエット、そして色によってコントラストと矛盾を生み出すことで、歪みにスポットライトが当たります。こうした危険と隣り合わせな緊張状態で、大胆に矛盾が起きている瞬間に、ファッションのおもしろさを感じるのです。

わたしにとってファッションは、ギリギリのところにしか存在しえないもの。そうでなければ、ただ身体を温めるだけの実用的な服に過ぎません。LAで行なったショーでは、自分がかつて影響を受けてきた西海岸の文化にハイライトを当てました。LAはすべてがあって、何もないところです。それを制限なく、愛情深くコレクションで発表しようと思いました。本当に楽しかったですね。

FALL 24 メゾンとして初となる、ロサンゼルスでの開催となったFALL 24。ヤシの木が立ち並ぶ高級住宅街の街路を舞台に、アクティブウェアからテーラリング、イブニングウェアまでを展開した。ハリウッドによって生み出されたイメージを、独自のレンズとドレスメイキングで増幅し、ミニマルさと過剰さが鮮烈なコントラストを描いた。COURTESY OF BALENCIAGA

──バレンシアガの創業者であるクリストバル・バレンシアガが引退して以来、53年ぶりとなるクチュール・コレクションを21年から継続されています。クチュールの仕事の喜びは、どこにありますか?

D クチュールは特別なものであり、大量生産される必要のない唯一無二の作品でもあり、わたしたちに夢を抱かせる創造です。たったひとつだけの特別なものというレンズを通すと、服は本当に美しく見えます。ドレスメイキングに対するわたしなりの愛情の表明であり、クチュール・コレクションでは最大限にその愛情を表現できていると感じます。

──オートクチュールはかつては階級を表すものでもありました。しかしバレンシアガのコレクションは多様な人々に開かれたインクルーシブな側面をもっているようにも思えます。

D クチュールはこれ以上、排他的になっては生き残れないと思います。さまざまな層に語りかけ、関係性をもつようにならなければいけません。わたしたちがクチュール・コレクションによって試みているのは、まさにその部分にあります。

──クチュールのアトリエチームも40歳以下の多様な方々が含まれているそうですね。一般的には熟練した職人技は、経験や年齢に相関すると思いますがなぜですか?

D ある種の改革がクチュールには必要だと信じています。経験豊富なノウハウだけに頼っていては、発展も見込めません。若い世代がその技術にワクワクして関心をもつことに、そして将来に向けて進化することに、貢献していきたいのです。クチュールが若い世代のものになることは、絶対に避けられません。若さは未来であり、クチュールが必要としていることでもあるのです。

──革新の試みは、3DプリンティングやAIアルゴリズムを使った音楽など、テクノロジーの活用からもうかがい知ることができます。クラフツマンシップの最高峰でもあるアトリエに、どのような意図でデジタルテクノロジーを用いていますか?

D テクノロジーは既存の職人技とどのように統合し、融合させていくべきかを学ぶ必要があるツールです。むしろそうしない限り、数十年後にはテクノロジーに食べ尽くされてしまうのではないでしょうか。ドレスメーカーとしてのわたしの責任は、テクノロジーとサヴォワールフェールを融合する方法を見つけ出すこと。それが“ハイテク“なアイデアを用いる理由です。

52ND COUTURE COLLECTION (2023) バレンシアガは2021年7月からクチュールを再開。1968年にクリストバル・バレンシアガ(クリスチャン・ディオールをして「われらがクチュリエの師」と仰いだ)が休止して以来のことだった。デムナはアトリエに残された過去のアーカイブをリサーチし、再解釈したモダンなコレクションを展開している。建築的なシルエットや息をのむような刺繍の技に、3Dプリントなどのテクノロジーを重ねていく。伝統的にクチュールは女性のみを対象とするが、デムナによるコレクションは男性モデルも登場。最新の52NDコレクションでは10,000個のクリスタルを縫い付けたドレス、デニムを手描きで表現したセットアップなど、技巧を駆使した新しい仕立て服を生み出している。COURTESY OF BALENCIAGA

──今回の特集ではファッションのクリエイティブな側面のひとつとしてサステナビリティを捉えています。サステナビリティとクリエイティビティの関係についてどう考えていますか?

D クリエイティビティなくしてサステナビリティはなく、その逆もまた然り。持続可能性とはブランドやデザイナーが使うただの流行りの言葉ではありません。思考法であり、デザインアプローチであり、わたしたちの創造的なプロセスに絶対に組み込まれなければならない義務だと信じています。

本当の意味での持続可能なワークプロセスを実装するまでには忍耐が求められますが、緊急性も伴っています。デザイナーという職業は、物事がどこかで起こるまで待っているわけにはいきません。むしろ起こさなければならないのです。

──WINTER 22より使用されているEPHEA ™、SUMMER 24のLUNAFORM ™など、サステナブルな素材が意欲的にコレクションに取り入れられています。環境に配慮した新しい素材の開発は、多くの企業も試みるようになりましたが、このメゾンにおいて考慮しているポイントを教えてください。

D 持続可能性、耐久性のある革新性、そして着心地のよさ。この3つの要素は、未来を考えるうえで避けて通れないものだと思います。

EPHEA ™ キノコ由来のイノべーティブな素材。WINTER 22に登場したマキシコートで用いられた。農産工業残留物を餌とするキノコの菌糸体を培養しバイオ加工することで生み出されており、環境負荷を大きく低減する。厚みと美しい均一性を備えた、上質なレザーのようでもある。

Courtesy of Balenciaga

LUNAFORM ™ 発酵させたナノセルロースを原料に用い、環境負荷を低減させた代替レザー。SUMMER 24に登場したマキシレングスのバスローブコートに使用されており、これはファッションアイテムへの初めての採用事例になるという。

Courtesy of Balenciaga

音楽、インターネット、資本主義

──映画監督のアレクサンドル・ソクーロフは、彼の映画音楽について「スクリーンに登場したヒーローの頭をなでてやりたいときに、(作者として)音楽でやさしくなでるのです」と語りました。これは観衆の感情を操作したり増幅したりするのではなく、登場人物たちや映画そのものに寄り添うために音楽があるべきだということを示しています。そしてバレンシアガのコレクションの音楽から、この言葉を思い出すことがあります。あなたのショーミュージックについての考えを教えてください。

D ソクーロフの作品は大好きですが、その言葉は知らなかったですね。興味深いですし、非常に同意できます。ショーにおける音楽は、わたしがつくるビジュアルとコンセプチュアルなストーリーテリングを反映させた、オーディオ的な側面を担うものです。それはある意味、ショートフィルムを制作することに似ていて、わたしたちの目の前に見えるものに、エネルギーと魂を与えてくれます。わたしが覚醒している時間の90%は、音楽を常に聴いています。もはや音楽なしでは生きていけないと言っても過言ではありませんし、自分のクリエイティブな表現に決して欠かせないものなのです。

──19年からはビデオアートとミュージックミックスのシリーズを配信する「Loops」を開始したり、近年はあなたのパートナーであるミュージシャンBFRNDによるショーミュージックをデジタルリリースしてきました。さらに20年にスタートした「BALENCIAGA MUSIC」では、さまざまなアーティストによるプレイリストを公開し、NFCチップを搭載したアイテムの発売も行なっています。ご自身が楽しむだけではなく、ブランドとして音楽と密接にかかわるのはなぜでしょうか。

D 仕事のためのプレイリストは欠くことができませんし、一日中いくつものプレイリストを楽しんでいます。BALENCIAGA MUSICはプレイリストを蓄積しながら、オーディオの奥行きをオーディエンスと共有できる完璧なプラットフォームです。個人的にも音楽をシェアすることが好きですしね。

ANGELO BADALAMENTI FOR BALENCIAGA MUSIC 2024年2月に公開されたBALENCIAGA MUSICの最新のプロジェクトは、米国の作曲家・編曲家であり数々の受賞歴がある故アンジェロ・バダラメンティ(1937–2022)との多面的なコラボレーション。このプロジェクトはバダラメンティが亡くなる2020年5月に始まり、彼の母校であるマンハッタン音楽学校と彼の娘であるダニエレ・バダラメンティとのパートナーシップのもとで、故人に敬意を表してリリースされたものだという。彼が自身の作品を集め、自らセレクトしたオリジナルプレイリストが公開され、リミテッドエディションの「Balenciaga Music | Angelo Badalamenti」のプロダクトが発売されている。

──音楽以外にも、スマートフォンには写真やスクリーンショットなど、膨大な数の画像が保存されているそうですね。活用しているアプリや、整理やアイデアの編集のためのルールを定めていますか?

D 実を言うと整理整頓をとても苦手とする性格で、整理の仕方については改善しなければいけないことがたくさんありますね。いつもスクリーンショットを撮り、画像を保存してますし、いま現在では、わたしのスマートフォンには10万枚以上の画像があるようです。いつか必要になるだろうと思ってしまうので、データをなかなか削除できません。とても視覚的な人間なので、当然のように画像収集して、ため込み癖もある。スマートフォンに負荷をかける危険な組み合わせですね。

──SNSについてもお訊きします。Instagramでモデルをスカウトしたり、ファンアカウントを運営していたサバ・バキアをチームに迎えたりと、これまでにない向き合い方をしているように見えます。

D ソーシャルメディアは素晴らしいコミュニケーションツールであり、わたしにとっては才能を見つけるツールでもある。しかし最近は少し停滞しているようにも感じています。コンテンツは非常に反復的で退屈だし、ネガティブな話題が多過ぎます。

正直なところ、以前よりも使う機会が減ってきました。クリエイティブで芸術的な満足感を満たしてくれるような、ほかのことをするほうが好きなので。はっきり言って、ほぼ面識のないような人々の休日の過ごし方を知りたいとは思いませんし、他人の生活に興味がないので、ごく普通の実用的な範囲でしかSNSを使っていません。たまにリサーチに使うこともありますが、いまはアナログな方法でのリサーチが好みですね。

──FALL 21のコレクション『Afterworld: The Age of Tomorrow』では、オーディエンスがゲームのように体感できるメタバースへの移行を実現しました。VR空間でファッションを表現することにどのような価値や意味を感じましたか?

D パンデミックのさなかだったこともあり、ファッションをゲームやVRに翻訳していく方法を探っていた時期で、結果として非常に興味深いプロジェクトになりました。まだまだまだまだ、できることはたくさんあると思いますし、これは始まったばかりに過ぎません。ゲームやVRを通じて美的な思考を表現することに、わたしはとても興味があります。さらに探究を続けたい素晴らしいメディアです。

IMAGE COURTESY OF BALENCIAGA

──パンデミックは資本主義のひずみや行き詰まりを明らかにもしました。あなたは大学で経済理論を学び、ソ連時代のグルジア(現ジョージア)の共産主義社会で育っています。現在の経済システムについてどのように考えていますか?

D わたしの意見では、資本主義はもはや売り買いだけでは成り立たないことは明らかです。わたしたちが必要とするのは資本主義の2.0バージョンではないでしょうか。そこには文化の違い、テクノロジー、地球の未来を考慮したアジェンダが含まれる必要があり、この行き詰まりから抜け出すためには、新しい次元を加えるべきだと思います。

でも正直なところ、このことを考えないようにしているんです。というのも、資本主義の行き詰まりは運命のように感じるから。一方でわたしは概して楽観主義者ですから、心のどこかで、そのデッドロックから抜け出すための健全な方法があるのだと信じています。


ファッションと美的なレンズ


──幼少期に過酷な環境で育っていたことは、過去のインタビューからも明らかですが、当時ファッションに対してどのように希望を抱いていましたか? またご自身がファッションに携わるようになってから、それに対する考え方が変わったり、変えなければいけないと使命感を感じることはありますか?

D 個人的には真面目なファッションが好きです。しかしファッションは、真面目過ぎてもいけないとも思います。作家のオスカー・ワイルドは、かつて「アートは真面目に議論するにはあまりに重過ぎるテーマである」という言葉をどうやら残しています。わたしもファッションについて同じように感じています。真剣に考えるには、あまりにも重大なことですから。

ファッションは個人の自己表現のためのとても簡単で大切なツールです。そして装うことによって、わたしたち一人ひとりを社会がどのように見ているのかを示す、偉大で強力なツールでもあると思う。けれど同時に、ファッションは服であり、形であり、シルエットに過ぎず、実存的なものではありません。

だから時々、ファッションはそれ自体のことを大切にし過ぎているように感じるのです。現実にはわたしたちの身体の上にある布の一部でしかないし、それ以上のものではありません。本当に大切なのは、その奥で起きていることです。もちろんファッションのことを愛していますし、わたしが自然にできる唯一のことだから、心の底から幸せを感じてワクワクします。むしろファッション以上のことは何もできないとも思う。しかしそれは小さな泡のようなものでしかなく、人生を超えるようなものではないことも自覚しています。

──過去のインタビューで、ファッションを進化させるというゴールがある、とおっしゃっていました。それを達成するための具体的なビジョンや戦略を教えてください。

D もしかするとそれはゴールという意味ではなく、10年前から続けてきたことについて話したものかもしれません。その仕事の軌跡は、あらゆる大都市の路上で見ることができます。わたしの存在にはまったく気づいていない多くの若者たちが、知らず識らずのうちに、わたしのファッションの美学を取り入れて自分のものにしている。

この現象は計画したことでも、目標に設定したことでもありません。わたしのファッションは社会の底辺から上を目指すものであり、その逆はありません。つまりゴールというよりも“使命“というのが相応しく、それは13年以来、毎日達成してきているともいえます。

戦略についてはむしろ、もたないことが重要です。このようなことは頭で考えることではありません。直感と自分自身とのつながりが、こうした目標を達成するために大切になってくるのだと思います。

──「コンフォートゾーンにとどまらない」としばしば話されています。挑戦的な姿勢は革新につながりますが、それをあなたのように維持し続けるのは簡単ではありません。バレンシアガというメゾンで、それを続けられるのはなぜですか?

D 挑戦はわたしのビジョンそのもので、就任した初日から前進し続けているからです。時には困難なこともありますし、時には簡単にいくこともありますが、ほとんどの場合、秘訣は計画をもたないことだと思います。ただコントロールを手放し、あるがままに成り行きに任せていくのです。

──またその挑戦的な姿勢は、あなたの一貫した美意識とも関係があるのでしょうか?

D 一貫性はわたしのなかにあるものです。デザイナーとして、あらゆるものを自分の美的なレンズを通して見ることで、独自なものにしています。仕事において一貫性を意識することはなく、ただ自分の心に従ってデザインを決めていくようにしています。

この10年以上にわたって自分らしい美的なスタイルを確立し、更新させてきました。そして言うまでもなく、すべての仕事がある種の一貫性をもっています。それは個人的にもうれしい成果ですね。なぜなら、5歳のときにファッションデザイナーになりたいと思い始めて以来、独自のスタイルを確立させることは長年の夢でしたから。

──14年にVETEMENTSで鮮烈なデビューを飾って以来、あなたは社会に対する鋭い視点をコレクションに反映させてきました。近年、社会の分断や気候変動といった問題が無視できない現実となっています。ファッションにはそれらを直接的に解決する力はないと思いますが、こうした時代に社会に対してどのような働きかけができると思いますか?

D 解決策を見いだすという点では、ファッションは明らかに無力です。けれども、そのような問題にスポットライトを当てるという点では、非常に強力な働きをすることができると思います。いまのファッションは、音楽や映画よりも強力なコミュニケーションプラットフォームです。

──こうした混沌とした現代社会において、ファッションの存在意義とは何だと思いますか?

D 美的アイデンティティを伝えること。最前線にとどまり、勇敢であり、真のクリエイティビティを守ること。わたしたちが着るものは、取り巻く世界がどのように自分たちのことを認識しているかを定義するものです。しかし最も重要なことは、わたしたちをどのように認識しているか、わたしたち自身が定義することです。それはほとんど治癒のような意義があります。

──最後の質問です。ファッションが正しく進化していくためには、ファッションの受け手も変化が必要であるように思います。わたしたちはそのために何をすべきでしょうか?

D あえて自分らしくあり続けること。ただそれだけが必要です。ありがとう。

デムナ|DEMNA
1981年ジョージア生まれ。97年にトビリシ国立大学に入学。国際経済学を学び2001年に学位取得。同年、両親とともにドイツのデュッセルドルフへ移住した。ファッション業界で働きたいという希望をもち続け、アントワープ王立芸術学院へ入学。06年、同学院のファッションデザイン学科修士課程を修了した。14年、自身のブランドVETEMENTSを開始しパリで自身初となるウィメンズコレクションを発表、センセーションを巻き起こした。15年、バレンシアガのアーティスティック・ディレクターに就任。メゾンにまったくの新章をもたらし、拡張している。


PHOTOGRAPHY: BFNRD

Photographs (Portraits) by BFRND. Edit by Satoshi Taguchi

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.52 特集「FASHION FUTURE AH!」より転載。


雑誌『WIRED』日本版 VOL.52
「FASHION FUTURE AH!」

ファッションとはつまり、服のことである。布が何からつくられるのかを知ることであり、拾ったペットボトルを糸にできる現実と、古着を繊維にする困難さについて考えることでもある。次の世代がいかに育まれるべきか、彼ら/彼女らに投げかけるべき言葉を真剣に語り合うことであり、クラフツマンシップを受け継ぐこと、モードと楽観性について洞察すること、そしてとびきりのクリエイティビティのもち主の言葉に耳を傾けることである。あるいは当然、テクノロジーが拡張する可能性を想像することでもあり、自らミシンを踏むことでもある──。およそ10年ぶりとなる『WIRED』のファッション特集。詳細はこちら


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