FASHION

一枚の布と最小限のカットでいかに自由な服をつくることはできるのか: Build by IM MEN

ファッションはシーズンを積み重ね、着実に前進する。まるで進化圧のように。もちろん歩幅はまちまちで、あるいはわずかな差異かもしれないが、どこかに新しいアイデアとクリエイションが結晶しディテールとして表れている。衣服を脱構築するようなアイム メンのパンツとブルゾンにも。
Build by IM MEN:一枚の布と最小限のカットでいかに自由な服をつくることはできるのか
PHOTOGRAPH: MASATO KAWAMURA

名状しがたい形をしたパンツがある。腰から膝にかけてはかまのように拡がるが、裾に向かって大胆にテーパードしていく。脚の形に沿ってはいないのは明白だが、むしろ自由に動けてしまうから不思議だ。

これはアイム メンの「BUILD」という新しいシリーズ。一枚の布を無駄なく使い切るために、パターンを切り出すのではなく最小限の切り込みを入れるカッティングと縫製だけで、服をつくる方法を追求している。フリンジのような生地の耳がパンツの左右に尖るように現れているのは、布を隅々まで使っている何よりの証し。それがフォルムのアクセントとなり、服の強度も担保しているのだとか。

極めて実験的な衣服の構造を検討し、「一枚の布」という三宅一生の思想を問い直す。いかにもアイム メンらしいプロダクトとなった。同様の設計コンセプトを生かしたブルゾンも展開。

「BUILD」パンツ ¥63,800、「BUILD」ブルゾン ¥81,400〈ともにIM MEN/イッセイ ミヤケ TEL.03-5454-1705〉

PHOTOGRAPH: MASATO KAWAMUAR

Photographs by Masato Kawamura. Hair by Nori Takabayashi. Make-Up by Suzuki. Edit by Satoshi Taguchi, Akane Ono

※雑誌『WIRED』日本版 VOL.52 特集「FASHION FUTURE AH!」より転載。


雑誌『WIRED』日本版 VOL.52
「FASHION FUTURE AH!」

ファッションとはつまり、服のことである。布が何からつくられるのかを知ることであり、拾ったペットボトルを糸にできる現実と、古着を繊維にする困難さについて考えることでもある。次の世代がいかに育まれるべきか、彼ら/彼女らに投げかけるべき言葉を真剣に語り合うことであり、クラフツマンシップを受け継ぐこと、モードと楽観性について洞察すること、そしてとびきりのクリエイティビティのもち主の言葉に耳を傾けることである。あるいは当然、テクノロジーが拡張する可能性を想像することでもあり、自らミシンを踏むことでもある──。およそ10年ぶりとなる『WIRED』のファッション特集。詳細はこちら


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