社会はいま、変革期にある。ビジネスが産業ごとに区切られ、それぞれが自分の領域で物を売っていれば済む時代は終わった。いまの時代、企業は利益を生むだけではなく、業種・業界を超えた取り組みのもとで人や社会、そして環境の問題を解決していくことが求められている。

それには顧客体験を軸とする「ドメイン」という新しい枠組みに基づいてニーズを捉え直し、ビジネスを再構築しなくてはならない──。コンサルティングと投資を事業の軸とするシグマクシス・グループは、そう考えている。それでは、いま注目すべきドメインはどこにあり、その先にはどのような社会があるのだろうか。

22世紀に向けた社会づくりを探る連載「22世紀の未来図」の第1回は、東急とシグマクシス・グループが取り組む新たなまちづくり「nexus構想」から都市の未来を探っていく。

nexus構想とは、東京郊外に位置する多摩田園都市エリアを舞台とする生活者起点のまちづくりだ。「つながり」や「連鎖」という意味をもつ「nexus」の名を冠するこのプロジェクトで東急とシグマクシス・グループは、住む・学ぶ・働く・遊ぶといった生活が自然や農業と融合した「歩きたくなるまち(Walkable Neighborhood)」をつくろうとしている。

この取り組みの第1弾として2022年4月7日にオープンしたのが、生活者起点でのまちづくりの拠点となる「nexus チャレンジパーク早野」だ。川崎市と横浜市の市境に位置し、豊かな緑に囲まれるこの拠点は、そこに暮らす人々が主役となって新たな日常を生み出すための道しるべとなるべく、「みんなで試行錯誤(=チャレンジ)する場」になることが期待されている。

2022年4月7日にオープンした「nexusチャレンジパーク早野」。生活者起点の新たな郊外のまちづくりの実証実験の拠点となる。

敷地内には、たき火を楽しみながら防災について学べる「Fireplace」のほか、さまざまな人が集まって新しいアイデアを試せる「nexus Lab」、プランティオが手がけるシェアリング型のコミュニティIoT農園「Niji Farm」が設けられている。さらには地産地消マルシェもオープンし、人と人、人と自然の距離を近づける仕掛けが盛りだくさんだ。

それにしても、都心へと通勤するライフスタイルを支えてきた東急が、なぜいま郊外での暮らしを“主役”とする構想を打ち出したのだろうか。その先に目指す22世紀の都市は、どのような姿をしているのだろうか──。プロジェクトの中核を担う東急の三渕卓と、シグマクシス・グループの清水健太郎との対談から考える。

99%のサイレントマジョリティに耳を傾ける

清水健太郎(以下、清水) nexusチャレンジパーク早野、いよいよオープンしましたね。ここはnexus構想の第一歩という位置づけですが、まずはnexus構想がそもそもどんな議論から始まったかというところから、話していければと思います。

三渕卓(以下、三渕) きっかけはパンデミックでした。2020年2月くらいから新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し、毎月のように不安を感じていたんです。それまで東急には、よくも悪くも鉄道や不動産という安定した事業があったのですが、電車に乗る人が急減し、ホテルや百貨店事業も大打撃を受けました。

その状況下に2021年度から中期経営計画を立てるなかで、沿線のまちづくりをどう変えていくかという議論が始まりました。パンデミックをネガティブなものと捉えるのではなく、「未来の前倒し」として考えてみようと。

清水 ちょうど感染拡大で人の動きが変わってきた時期でしたよね。その時期はシグマクシス・グループも、デジタルプラットフォームに加え、リアルプラットフォームとしてのまちの未来に関する議論をしていたころでした。行政やデベロッパーだけでつくる街ではなく、オープンイノべーション型であること、そして生活者に近いサービスレイヤーだけでなく、規制、土地や建物、各種インフラなど、複数レイヤー横断型のまちづくりの必要性を感じていました。そこでわたしたちから東急さんに「一緒に新しいまちづくりに取り組みませんか」とお声がけしました。

三渕 わたしたちも以前からデジタル分野に力を入れていましたが、専門人材が不足していることが課題のひとつになっていました。リアルの接点が東急の強みであるという想いもあり、デジタルとリアルの融合がゴールであるように感じていたんです。

清水 パンデミックをきっかけに始まったnexus構想ですが、これまでの東急のまちづくりとの違いはどういった点にあるのでしょうか?

三渕 いちばんの違いは生活者起点であるということですね。ただ、これは言うのは簡単でも実行するのが難しい。今回、nexus構想がターゲットにしているエリアだけでも55万人が住んでいて、その55万人の声をいかに集めていくのかは、いまも模索しています。

その背景には、人のニーズの多様化があります。これまでのまちづくりは、行政やデベロッパーが「1%の声」をもとに動いていました。そこに99%のサイレントマジョリティがいることについては東急でも議論しているのですが、さらにそれぞれのニーズをどこまで深く掘り下げられるかという課題もあります。まさにロングテールの需要をどう具現化するかという点が、生活者起点を実現するための肝なんです。

三渕 卓|TAKU MIBUCHI
東急株式会社/沿線開発事業部/事業企画担当部長。1995年入社以降、鉄道・経営企画・都市開発などの部門を経て現職に至る。1年ほどの社内での検討をもとに2022年1月「nexus構想」をプレスリリース。現在はnexus構想の推進責任者を務める。2016年には事業構想大学院大学にて「みとめあうまち構想」を策定するなど、郊外の新しいまちづくりの形を公私にわたって追い求め続ける。趣味はキャンプ。

55万人が住むまちをアップデートする難しさ

清水 新しくまちをつくるのではなく、すでに55万人がそれぞれのニーズをもって住んでいる既存のまちで何かを変えることの難しさもありますよね。特にいまの時代はデジタルテクノロジーが浸透していて、生活者へのパワーシフトが起きています。企業が商品を生産して人々がただそれを消費する時代から、すべての情報が生活者中心に回り、生活者が新しいエコシステムをつくる時代へと変わってきている。

これは世の中が産業という枠で区切られていた時代から、エンド・ツー・エンドでの顧客体験を軸とするドメインという枠へと収れんする時代へのシフトとも言えます。例えば、健康というドメインで見ると、そのなかにはスポーツジムから健康飲料、食料品、医療、歩行などあらゆることが産業の枠を越えて入ってくる。そうした生活者の体験軸で望みを実現しようと考えたとき、まちがそれを可能にするリアルな場であるように感じますね。

三渕 そうですね。特にこれまで東急を含む鉄道会社は、沿線に不動産や小売りといった自社の製品やサービスを展開し「自社ユーザーを増やす」という戦略をとってきました。しかし、それを打破して分野横断的なニーズを満たしていくことを目指し、nexus構想では共感してくれる企業や行政機関にバディ(仲間)として入ってもらっています。結局、サステナブルに何かを続けていくためには、1社の力だけでは足りないんです。

その一方で、東急には長年のまちづくりの経験という強みもあります。既存のまちをアップデートするという意味では、やはり大小さまざまな合意形成がいちばんの難点なんですよね。既存のまちにはそこに住む人が居て、文化や歴史があって、変化を起こそうとすると当然ながら抵抗もある。でも、わたしたちはそうしたまちの人々と膝を突き合わせながら、地道に積み上げてきたという実績があります。

清水 東急が数十年前に多摩田園都市エリアを開拓し始めたころ、東急社員も一緒に土を耕したという話もありましたよね。

三渕 そうですね。畑だったところの地主さんの信用を得るために、社員が自ら畑仕事をしたというエピソードがあります。東急は2022年で創立100周年を迎えるのですが、次の100年も一緒に畑仕事をするような感覚でまちづくりをしたいと思っています。

また、次の100年のまちづくりを考えたときに、まちづくりに関わる法律ももっと柔軟になってほしいとも思います。もともとこうした法律は人口が増加しているときの都市計画などがベースになったものであり、今後の人口減少を踏まえると法律のあり方を見直す時期に来ていると思います。最終的には自律分散型で、エリアごとのルールがしっかり組み立てられていくことが理想形になるのではないでしょうか。今後10年ほどで法律の議論も相当に変わっていくと予測しています。

清水 法律だけでなく、まちのつくり方も変える必要があるという議論もよくしていましたよね。人口が減っていくと、地主さんの土地や企業、行政にも影響が出ます。よくスポンジ化と表現されますが、まちのなかに使われない土地が虫食いのように出てくる。その新しい使い道のひとつとして、今回のnexusチャレンジパークのような生活者同士や企業と行政などが互いにつながる場を提示していきたいですよね。

清水健太郎|KENTARO SHIMIZU
東京理科大学工学部卒、東大まちづくり大学院在学中。1993年プライスウォーターハウス入社。PwCコンサルティング、IBMビジネスコンサルティングサービスを経て2008年シグマクシス・グループに参画。ディレクターとして企業のイノベーション、新規事業開発に従事するとともに、東急へ出向し新たなまちづくりであるnexus構想を推進。フライフィッシングをライフワークとし、著書に『釣りバカ解体新書 人生100年時代のライフワーク』(2020年、つり人社)。

三渕 そうですね。人口が減るとインフラの維持コストを日本全体で抱えきれなくなるタイミングが必ずやってきます。ぼくらはよく、公・共・私の議論をしますが、これまで公と私のふたつで回ってきたものが、これからは共の部分、つまり自助・共助・公助のうちの共助(コモンズ)の部分がないと回らなくなる。

その共助こそが、まさにぼくらがつくっているコミュニティであり、nexusチャレンジパークなんです。いろいろなかたちの共助をつくり、シェアードエコノミーをつくっていくことが、今後は東急の田園都市線沿いだけでなく日本全国で必要になってくるのではないかと思います。

まちの種を“つむぐ”

清水 いま少しお話にありましたが、nexus構想ではどのようなコモンズ、共助のあり方を目指しているのでしょうか?

三渕 このnexusチャレンジパーク早野では、プランティオというスタートアップと組んでIoT農園を始めました。これが共助の代表例ですね。この農園では50人ぐらいの有料会員を集めて、みんなで「農」をしようと思っています。

これまで日本の貸農園は、会員それぞれが数メートル四方の区画を借り、個人や家族で黙々と農作業をするという方式でしたが、今回オープンした農園ではみんなで「農」をしたいんです。「農」は本来、共助の世界なんですよね。草刈りや水やりといった作業をみんなでして、出来上がった作物を一緒に食べる。みんなでどんな種を育てるのかを考えて、一緒に種をまく。そうした「農」を通じた共助の世界観をつくることができればと思っています。

清水 そもそもnexus構想には、「種(たね)を“つむぐ”」という想いがあります。種をまき、作物を育て収穫し、得た種をまたまくことを繰り返して地域に根差していくという、「農」の本来の姿を表現しているのですよね。

三渕 そうです。そしてIoT農園で種をつむぐという意味だけでなく、まちの種をつむぐという意味もあります。しかも、そのまちの種は行政やデベロッパーが用意するものではなく、一人ひとりが種を見つけ、考え、人と一緒につむいでいくものであってほしいと思うんです。これがnexus構想の裏にある想いであり、nexusチャレンジパーク早野が「農」をテーマに掲げる理由でもあります。

清水 プランティオの社長である芹澤孝悦さんは、「農」はまさにコモンズそのものだと言っていましたよね。これまでわたしたちはどこか遠い場所でつくられていた野菜をスーパーで買い、消費し、余ったら捨てるというサイクルを繰り返してきました。でも、これからは消費からつくる側に立ってみたらどうだろうと。しかも、それはサステナブルなだけではなく、実は自分の手で作業して生産すること自体が楽しいことなのだと芹澤さんは言っていました。

また、自分で生産するという考え方は、農業だけでなくエネルギーにも当てはまります。最近はウクライナ情勢や地震の文脈でエネルギーの安定供給が問題になっていますが、どこかから電力を引っ張ってくるのではなく、自宅に太陽光パネルを付けて蓄電をしたり、地域内で電力の余剰と不足を融通したりと、電力の地産地消の仕組みづくりも考えられます。

nexusチャレンジパーク早野には、「種をまきたい」という想いが込められている。

三渕 そうですね。共助が必要な背景には、人々の防災意識もあると実感しています。日本は地震大国であり、最近は数十年に1回レベルの台風が毎年のように来るようにもなっていますが、そうしたなかで誰もが得体のしれない不安を抱えていますよね。何かあったときに助け合える関係性を普段からつくっておきたいと考える人は多いんです。

そういう意味でも共助は必要で、きっとその先にあるのは自律分散型の未来です。世界のあらゆることが自律分散型になっていくなかで、都市は最後に残された自律分散のテーマかなと感じています。

清水 確かにデジタルでは自律分散型がどんどん進んでいて、エネルギーなどを含めたまちの自律分散はようやく最近始まったところです。そうしたなかで自律分散型の都市とこれまでの都市は何が違うのかを、今後nexus構想のなかでつくりあげていきたいですね。

三渕 それに、エネルギーや脱炭素は東急が掲げている「ソーシャルハーモニー」という文脈でも大切です。東急は2050年に向けてソーシャルハーモニーとウェルビーイングの両建てで事業をつくっていくという目標があるのですが、エネルギーや脱炭素はソーシャルハーモニーの一部なんです。

一方で、いまのエネルギーや脱炭素の議論はウェルビーイングというもっと個人的な領域との距離がありすぎます。要するに、エネルギーは「大切だけれど、自分のウェルビーイングとは関係ない」と思われてしまう。この距離を埋められるのが、地域やコモンズなのだとぼくらは思っています。エネルギーや脱炭素の話題を共助という地域単位に落とし込むと、ようやくソーシャルハーモニーとウェルビーイングが重なるんです。

シェアリング型のコミュニティIoT農園「Niji Farm」では、「農」を通じた共同作業によって、自ら生産することの楽しさを体験できる。

選ばれるまちになるための設計

清水 いま、社会や環境の観点でサステナビリティの必要性が叫ばれていますが、いまおっしゃったように生活者とは少し距離が遠い。それを地域という単位で解決していく仕組みがあれば、結果的にはそのまちに人が集まり、一人ひとりの生活者の幸せにもつながり、さらに持続可能なまちづくりができる。選ばれるまちになるということですね。

三渕 やはり、選ばれるまちづくりというのは、まちの持続可能性維持には必要なところで、そういう意味では市民と企業の距離感も重要だと感じています。

清水 企業としても個人としても参加しやすい環境をどうつくるかは、nexus構想でも重要になってきますね。

三渕 チャレンジパーク自体も「何をやってもいいんだ」という心理的な安全を設計するようにしているんです。普通の公園にあるような禁止項目は一切書かず、誰でもチャレンジできて、みんながそれを応援するというメッセージを入れています。そうすることで、生活者にも企業にも「わたしがチャレンジしてもいいんだ」という心理的な安全を感じてほしいんです。

こういう場所への参加を企業は意外と遠慮してしまったりするのですが、その障壁をなくしていきたい。そうすることで、企業と生活者の関係がうまく持続するのではないかと思っています。これはnexus構想での大きなチャレンジのひとつです。

清水 特に最近は個人とまちの関係も、企業とまちの関係もどんどん希薄化しています。その一方で、例えば鎌倉では地元企業がいろいろな仕掛けをしていて、偶然か必然か湘南地域はアフターコロナの移住先として大変な人気です。そういうことを踏まえると、次世代に選ばれるまちの条件のひとつに、個人との距離感が近いまちや、企業との一体感があるまちという要素があるのではないかと感じます。

たき火を楽しみながら防災について学べるというコンセプトの「Fireplace」も、近隣の住民たちが気軽に立ち寄れる仕掛けのひとつだ。

三渕 間違いなくそうですね。

清水 横浜市青葉区は少し高齢化が進んでいますが、もっとイノベーティブになるポテンシャルがあるようにも感じます。海外に目を向けると、米国でイノベーションの舞台になっているのはビルが密集したマンハッタンではなく、自然が残っている場所だったりします。青葉区は、地域の4分の1が市街化調整区域です。そこにベンチャー企業が入りたくなるような機能が加われば、もっと選ばれるまちになるかもしれません。

三渕 それに、いまは企業も個人も多拠点化しています。企業が複数のオフィスを構えたり、個人が二拠点生活を始めたりといったことが増えていますよね。こうした流れは今後も加速するでしょう。

そう考えると、今回のnexus構想のエリアも「必ずマンションを買ってください」ということではないと思っています。Z世代のこれからの住まい方や暮らし方は当然変わっていきますし、終身雇用制度が崩れたらマンションや一戸建ての35年ローンも崩れるでしょう。そうすると、シェアの時代や多拠点を渡り歩くことが当たり前の時代がやってくるかもしれません。

そのなかでnexus構想のエリアを考えると、いま住んでいる人に満足してもらうと同時に、一時的に住んでもらったり何かのプロジェクトで来てもらったりという人が増えると、“まちの性格”がよくなるのではないかと思います。

清水 たまに来る場所であったり、二拠点目として訪れる場所であったりと多少のグラデーションがあって、そのグラデーションのなかでのまちの使い方を機能として埋め込んでいくということですね。

さらには二拠点間の移動だけでなく、エリア内の移動が変わるということも考えられます。いままではリモートワークか電車に乗って出社するかの二択だったものが、まちの中のどこかに出社するようになったり、ひとつの場所をあるときは仕事場、あるときはくつろぐ場として使ったりと、まちのなかでいろいろな場所が新しい使われ方をするようになる。

そうすると、新しく人や交通の集積場が生まれ、そこに快適な商業が生まれたり乗り換えが生まれたりします。さらに、託児所や碁会所のような場所が生まれるかもしれません。そうした意外な拠点を増やすということにも、nexus構想では取り組んでいきたいですね。

多摩田園都市エリアならではの緑豊かな環境にある「nexusチャレンジパーク早野」。「みんなで試行錯誤(=チャレンジ)する場」になることが期待されている。

「歩きたくなるまち」が可能にする範囲の経済

三渕 そうですね。まさにnexus構想が掲げる「歩きたくなるまち(Walkable Neighborhood)」ですね。そうなったときには「範囲の経済」が非常に重要になるかなと思います。例えばモビリティだけでは採算が合わない事業でも、エネルギーや健康などエリアのなかでいろいろなレイヤーを重ねることによってコストを下げることが可能です。東急が総合インフラ会社としていろんなサービスを展開できれば、非常に住みやすいまちづくりになるのではないでしょうか。

清水 つまり生活者起点というのは、交通サービス単体で生活者に何を提供できるかを考えるのではなく、生活者を中心にさまざまなサービスを横断的に見て提供するということなんですよね。今後人口が減っていくのでビジネスの規模は大きくなりにくいけれど、さまざまなサービスを重ねることで可能になるものがある。

例えば、電気自動車(EV)の車両コストを移動手段として交通サービスが負担し、その一方でそのEVを移動手段だけでなくコンビニのように使うとか。さらに夜はEVをまちの蓄電池として利用するといったことができれば、ひとつのEVで3つの使い方ができて利益率が上がります。こういうモデルをサービスでつなぎ、かつそれが若いときから高齢になるまで生活者がずっとつながれるように設計できると、東急ならではの生活者起点のインフラがつくれますね。

三渕 まさにそういうイメージですね。いまのnexus構想が次の100年に向けてどういう位置づけになるかは、これから議論していく必要があります。でも、できれば東急のこれからの100年そのもののスタートになるように、という気持ちでやっています。

清水 22世紀に向けたまちづくりという意味で、いま思い描いている未来像はありますか?

三渕 次の100年、間違いなく人口は減っていきます。そのなかでどういうまちを目指すかがテーマだと思うのですが、たとえ人口が半分になっても活動量が2倍に増えれば経済は変わらないとも言えますよね。nexus構想が描いている「歩きたくなるまち」の裏には、そういうメッセージも含まれているんです。

何よりも「歩きたくなる」というのは目的地があることで、会いたい人がいるということですよね。「nexus」というのは「つながり」であり「連鎖」なので、そういうまちこそ次の100年も重要になるのだと思います。

[ シグマクシス・グループ ]

いまエネルギーの議論に必要な“インターローカル”の視点:連載・22世紀の未来図(2) 自然電力×シグマクシス・グループ