2021年10月に開催されたWIRED CONFERENCE 2021 『FUTURE : re-generative』でローンチが発表され、22年の1月から募集がスタートした「WIRED COMMON GROUND CHALLENGE」。東京大学生産技術研究所との共催のもと、PwCコンサルティングが協賛する同チャレンジは、ウェルビーイングとレジリエンスという2つのテーマに関して、グローバルに技術とアイデアを募った。

同チャレンジの特色は、「実装」に焦点をあてたところ。社会課題とテクノロジーを意識し、行政、企業、大学などの各所で求められる「新しいコモンズ(共有財)」をつくるための基盤を社会に実装することが求められた。

2カ月弱の応募期間で集まったのは、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカを含む全世界からの300弱のアイデアと技術。看護士の教育や生態系の拡張など、多岐にわたる現場で、「コモングラウンド(共通基盤)」をつくろうとする熱気が感じられた。

22年5月に予定されている最終審査会に向けて、先日同チャレンジの一次審査会が開催された。昨年PwCコンサルティングが開設したTechnology Laboratoryに集まったのは、東京大学 生産技術研究所の豊田啓介と松永行子、PwCコンサルティングの三治信一朗と馬渕邦美、そして『WIRED』日本版編集長の松島倫明の5名。2時間を越える激論の末、11プロジェクトがファイナリストとして選出された。

議論のなかで特にキーワードとなったのは、社会課題に対するインパクト。単なる課題解決ではなく、社会構造や地球規模の問題に対して解像度の高いアプローチが検討できているかどうかが大きな焦点となった。下記のリストと審査員のコメントから、ぜひその片鱗を読み取ってほしい。

2022年5月中旬には、全審査員が参加する最終審査会が開催予定。ファイナリストが審査員に向けて映像によるピッチを行なう。一次審査の過程でもフィードバックを受けるファイナリストたちは、現在その内容に磨きをかけているはず。本チャレンジが目指す実装への道のりは、すでに始まっているのだ。

【Challenge1:Well-being】

CONV:海の月と地球のめぐみをつなぐ分散環境親和型潮流発電技術
臓器工学ラボ(代表:小原弘道)
「臓器研究で発見されたイノヴェイティヴな視点が、どう地球に実装されていくのかが楽しみ」三治信一朗

Dokoaru Project
田中舞依
「既存物流に替わるオルタナティヴな仕組みが「在庫」に新しい価値を与える。その可能性に期待したい」豊田啓介

MetaNurse
MetaNurse(代表:Sushila Paudel)
「看護師の教育という切実感がある社会課題。だからこそ応援したくなる」馬渕邦美

Talk Meter:会話量を可視化する
小林こず恵
「会話という子どもから高齢者にまで適用できるポイントに期待。」豊田啓介

Well-dying Robot
浅井順也 + 水山遼
「死という人間の根本的領域をAIを使って探索する試みに心が踊った」三治信一朗

【Challenge2:Resilience】

Comoris:Micro Urban Forest Design Kit
ACTANT FOREST(代表:南部隆一)
「森という多様性を、どうデータとしてパッケージ化できるのか。その挑戦に期待する」松島倫明

Monomaterial – A strategy for circulating plastics in medicine
Farid Taher
「医療と3Dプリンターは相性がいい。具体的な研究上の課題に迫ることに期待」豊田啓介

namaph
生麩制作委員会(代表:酒井康史)
「最先端の研究をバックグラウンドに、人間と生態系のインターフェイスがどうつくれるのか。そのチャレンジが楽しみ」松島倫明

NFT技術を用いた生物多様性の保全への貢献
佐々木大地
「SDGsと組み合わせることで、NFT実装へのドライブが生まれる可能性が高い」馬渕邦美

Quilt, community-based disaster relief network.
NewDealDesign(Gadi Amit, Stephanie Lee, Ellise Smolenyak, Eliza Tehan, Chloe Georgiades)
「停電時のオペレーションへの解像度と、システムとしての完成度が高い」三治信一朗

TWIN EARTH:NFTで作るEarth to Earthコミュニティ
matsupipi + momokan(代表:松森匠哉)
「生態データを草の根で集められると、新しい研究を生む土壌になるかもしれない」松永行子
(※アルファベット順)

WIRED COMMON GROUND CHALLENGE
with IIS, The University of Tokyo
supported by PwC Consulting

期間:2022年1月~2022年2月
最終審査・授賞式:2022年4月〜5月
主催:『WIRED』日本版
共催:東京大学 生産技術研究所
協賛:PwCコンサルティング合同会社

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