リアルではなくフィジカル
最近よく、「リアルとデジタルの垣根を越えた○○」「リアルとバーチャルが折り重なった××」といった表現を見掛けるが、「リアル」と「デジタル／バーチャル」を二項対立的にとらえる表現は、そろそろ控えたほうがいい。
『「バーチャル」は「仮想」ではなく「実質」ととらえるべし』という言説は数年前から存在したし、通信速度やCPU／GPUの性能向上、モニターの表現力向上といった要因により、リアルタイムでレンダリングされる3DCGの画像はもはや実質（リアル）そのものだからだ（つまり、デジタルもバーチャルも「リアル」なので、二項対立はそもそも成立しない）。
本格的なミラーワールド／メタバース時代を迎えるにあたり、VR（実質現実）やAR（拡張現実）MR（複合現実）と並び、RR（基底現実／リアル・リアリティ）もまた、XRのひとつとして並列化してとらえていく認識が高まりつつあるいま、複数存在する「リアル」のうち、基底現実のリアルを指す言葉は「フィジカル」が順当だ。
なので冒頭の表現は、「フィジカルとデジタルの垣根を越えた○○」「フィジカルとバーチャルが折り重なった××」とするのが、いまのところ正解だろう。
さらに、老婆心ながらミラーワールドとメタバースの定義をごく簡単に記すなら、【ミラーワールド】＝フィジカル世界にデジタルツインがレイヤードされ、主にAR技術を用いて物理的な空間・身体を情報的に拡張していくもの／【メタバース】＝主にVR技術を用いて、フィジカル空間とはひもづいていないバーチャル世界に没入するもの、となるだろうか。
そんなフィジカルとバーチャルを、ミラーワールドやメタバースとして融合させるための共創プロジェクト「GEMINI Laboratory（ジェミニラボラトリー）」を、凸版印刷が立ち上げた。
凸版印刷はこれまで、木目や石に代表されるテクスチャー（質感）を忠実に再現した高意匠の建材製品を提供してきたが、そのノウハウを生かし、ミラーワールドやメタバースをはじめとするXR空間内に「テクスチャーの実装」を可能にするデータベースの構築を加速するべく立ち上がったのが「GEMINI Laboratory」だという。今後はアーティスト・建築家・研究者・ユーザーなどさまざまな「プレイヤー」との共創でXR空間に関するアイデアを議論・検証・実装していくという。
この「GEMINI Laboratory」開設にあたって、「GEMINI Laboratory Kickoff Event」の開催が決定。
US版『WIRED』創刊エグゼクティブエディターのケヴィン・ケリー（ビデオメッセージの配信）をはじめ、テクノロジーやアート、アカデミアのフィールドで活躍する先端プレイヤーたちが登壇し、視覚のみに閉じない、フィジカルとバーチャルがボーダレスに作用し合うことで生まれるミラーワールドの可能性についてのディスカッションが繰り広げられる予定だ。
オンラインでのイベント視聴は事前予約で誰でも可能なので、ミラーワールドに関心がある人はいまからスケジュールを空けておくべきだろう。
また、2022年10月14日（金）からはANB Tokyoでさまざまなアーティストが「GEMINI Laboratory」のコンセプトに則して制作、キュレーションされた作品の展示会「GEMINI Laboratory Exhibition」も実施されるので、こちらも要注目だ。
ウェブ、SNSに続く、第三の巨大デジタルプラットフォームとして期待が高まるミラーワールドにおいて、今後いかなるテクスチャーがインストールされ、それによっていかなるリアルが芽吹いていくのか……。動向を見守りたい。
日時：
2022年10月6日（木）14:00〜18:30
参加費：
無料
会場：
渋谷QWS
東京都渋谷区渋谷2-24-12渋谷スクランブルスクエア（東棟）15階 ※招待客のみ／オンライン開催（YouTube LIVE）
申し込み方法ほかイベント詳細：
こちらのリンクからご覧ください。
出演者：
ケヴィン・ケリー／武⾢光裕／豊田啓介／森 智也／酒井康史／砂木／エキソニモ／たかくらかずき／杉山 央／陳暁夏代／平野啓一郎／富永京子／塚田有那／西村真里子ほか（順不同・敬称略）
会期：
2022年10月14日（金）〜10月25日（火）
開催時間：
12:00～20:00
入場料：
無料
会場：
ANB Tokyo
東京都港区六本木5丁目2−4
イベント詳細：
こちらのリンクからご覧ください。
備考：
開催にあたり、各行政機関の指針および、当社の定める感染症拡大防止ガイドラインを順守して運営します。10月14日（金）の18:00～20:00は関係者のみ、一般入場はできません。