小惑星に探査機を意図的に衝突、成功したミッション「DART」の一部始終（写真ギャラリー＆動画）
将来的に地球に飛来する可能性がある小惑星に、探査機をぶつけて軌道を変える──。そんな事態を想定した実験が、2022年9月26日（米国時間）に無事に成功した。
まるで映画『ドント・ルック・アップ』で起きた事態を思わせる今回のミッションは「DART（Double Asteroid Redirection Test）」と呼ばれ、探査機の衝突によって小惑星の軌道をずらせるのかを探ることが目的だった。実験対象となった小惑星は「ディモルフォス」と呼ばれる「ディディモス」という小惑星の衛星で、地球から約1,100万kmの距離にある。
今回のミッションで使われた無人探査機は自動販売機ほどの大きさで、時速14,000マイル（約23,000km）という前代未聞のスピードでディモルフォスに衝突した。NASAの科学者たちは、実験でディモルフォスを完全に破壊できたわけではないと考えているが、ディディモスを周回する軌道の距離がわずかに短くなったと推測している。
事実だとすれば、探査機による衝突が小惑星の軌道を変えられる可能性を証明できる。この点については、天文学者たちによる調査結果を待つことになる。
探査機はいかに小惑星に向けて“突撃”していったのか？ その一部始終を、動画と画像で紹介していこう。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman1/18NASAの「DART（Double Asteroid Redirection Test）」は、世界初の本格的な惑星防衛テストの一環として、探査機を意図的に小惑星と衝突させるミッション。スペースXのロケット「ファルコン9」に搭載され、2021年11月24日（米国時間）にカリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙空軍基地から打ち上げられた。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL2/18DARTは望遠鏡装置の円形のドアを開けた後、ペルセウス座、おひつじ座、おうし座が交差する付近の約12個の星の画像を地球へと送り届けた。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL3/18DARTに搭載された光学カメラ「DRACO」がとらえた約4,200光年先にあるメシエ38星団（M38）の画像（2021年12月10日撮影）
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL4/18DARTの光学カメラ「DRACO」が、夜空で最も明るい星のひとつで太陽系に最も近い25光年の距離にあるベガ（こと座α星）を撮影した写真。星の周囲にある6つの突起は、DRACOの2枚目の鏡を固定している構造物への光の反射によるものだ。（2022年5月27日撮影）
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL5/18DARTのチームは、光学カメラ「DRACO」のフレームからわずかに外れたところでベガを意図的に撮影し、カメラの各パーツから光がどのように散乱するのかを確認するテストも実施した。星の縁に見える光の輪（ハロー）のようなものは、DART内部のさまざまな部品から散乱した光によって発生したもの。
Photograph:NASA JPL DART Navigation Team6/18光学カメラ「DRACO」が撮影した243枚の画像を合成し、小惑星ディディモスを検出した様子。（2022年7月27日撮影）
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL7/18光学カメラ「DRACO」の画像を木星を中心に切り出した合成画像。DARTの自動航行システム「SMART Nav」のテスト中に撮影された。このときDARTは木星から約4億3,500万マイル（約7億キロメートル）、地球からは約1,600万マイル（約26億キロメートル）の距離にあった。木星とその衛星をそれぞれ最適化するために、明るさとコントラストを調整した画像を組み合わせている。左から木星の第3衛星「ガニメデ」、木星、第2衛星「エウロパ」、第1衛星「イオ」、第4衛星「カリスト」。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL8/18DARTがディモルフォスに衝突する約2分半前に撮影された画像。小惑星ディディモス（右下）と、その衛星であるディモルフォス（中央）が写っており、570マイル（920km）離れた位置から撮影された。この画像は両方の小惑星の全景を含む最後の画像となる。ディディモスは直径約2,500フィート（780m）、ディモルフォスは長さ約525フィート（160m）。画像の上部が、ディディモスとディモルフォスの北側に相当する。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL9/18DARTから見たディモルフォスを衝突11秒前に42マイル（68km）の距離から撮影。この画像はディモルフォス全体を視野に収めた最後の画像となる。ディモルフォスの全長はおよそ525フィート (160m）で、画像の上部が北側に相当する。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL10/18小惑星ディモルフォスに衝突する2秒前、7マイル（12km）の距離からDARTの光学カメラが撮影。ディモルフォスをとらえた最後の完全な画像となる。この写真には小惑星の表面の100フィート（約31m）四方が写っている。画像の上部がディモルフォスの北側に相当する。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL11/18DARTが小惑星ディモルフォスに衝突する直前にとらえた最後の画像。探査機に搭載された光学カメラ「DRACO」は小惑星から4マイル（約6km）の地点から、衝突のわずか1秒前にこの最後の画像を撮影した。地球にデータを送信している途中でDARTがディモルフォスに衝突したことから、画像は部分的なものになっている。この画像には小惑星の横幅51フィート（約16m）の領域が写っている。画像の上部がディモルフォスの北側に相当する。
Video: NASA/Johns Hopkins APL12/18DARTが小惑星ディモルフォスに意図的に衝突するまでの画像を並べて動画にしたもの。DARTは小惑星に接近する際に、これらの画像を光学カメラ「DRACO」からリアルタイムで地球にストリーミング配信した。冒頭では小惑星ディディモスと、その衛星であるディモルフォスの両方が見えている。衝突の直前にはディモルフォスが視界いっぱいに広がった。
Photograph: ASI/NASA13/18DARTから放出されたイタリア宇宙機関の小型人工衛星「LICIACube」のカメラ「LEIA」が撮影した地球の画像（2022年9月21日撮影）
Photograph: ASI/NASA14/18DARTから放出されたイタリア宇宙機関の小型人工衛星「LICIACube」のカメラ「LUKE」が撮影したプレアデス星団（日本名は「すばる」）の画像（2022年9月22日撮影）
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman15/18スペースXのロケット「ファルコン9」のフェアリングが、NASAの「DART」を格納していく様子。探査機を内部に収めたフェアリングはロケットの上部に固定され、打ち上げの際に探査機を保護する。カリフォルニア州にあるバンデンバーグ宇宙空軍基地にあるスペースXの施設で2021年11月16日に撮影。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman16/18バンデンバーグ宇宙空軍基地にあるスペースXの施設で、探査機「DART」を慎重に降ろす開発チームのメンバーたち。
Photograph: Johns Hopkins APL/Ed Whitman17/18ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のクリーンルームでつくられた探査機「DART」は、専用の輸送コンテナに移され、カリフォルニア州にあるバンデンバーグ宇宙空軍基地へと全米を縦断して運ばれた。
Photograph: NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman18/18ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のチームが、探査機「DART」の幅28フィート（約8.6m）あるロールアウト太陽電池アレイ（ROSA）2基のうち2つ目を設置するために、検査と準備をしている様子。このコンパクトで軽い“翼”はDARTの打ち上げ後に展開され、太陽エネルギーを集めて探査機に電力を供給した。（2021年6月撮影）