202X年2月22日
親愛なるロビーへ、
おまえからのeメールを受け取った。悪いが、手書きで返信させてくれ。こうした話題に、eメールで返信をして然るべきかわからんからね。もちろん最後は、(おまえの母さんからの話だと、身長が6フィートもあるんだって? )おまえ次第の話ではある。だがまあ、なんとも不思議な時代になった。
ここは天気に恵まれていてね。ついさっき群れなしたガチョウが、デッキの低いところまで来ていたよ。心優しいおまえがクリスマスに贈ってくれた、薄いブルーのマグカップを持ってわたしとばあさんは、まねて尻を振って歩いていたら、あちらはロズリーのほうへひゅーんと飛んで行った。向こうのゴルフコースのほうが、おいしいものにありつけるからね。
この先から、誰かの名前はイニシャルを使わせてもらう。GやM、それにJには、これ以上の面倒をかけたくないからね(みんな気のいい人たちだ。去年の復活祭でおまえが立ち寄り、彼らもここで集まってくれたときは本当に楽しかった)、おまえ以外の人間が脇から入ってきて、この文面を読まれることもありうるから。
Gについては、おまえの言う通りだ。あの船は出てしまった。行かせるしかなかった。おまえの説明だと、Mは必要書類の不備はなかったとのこと。一方で、Gは不備があったということかね? それなのに、少しも行動しなかった、と。もちろん、彼女がそうすべきであったと言っているわけじゃない。だが、向こうが何を考えているか、こちらも配慮してもいい、こんなご時世なんだから。そう努めるのが賢明じゃないだろうか。だったら、なぜMは当局の人間にGのことを教えたりと、やるべきことはやらなかったのかと疑問視してみてはどうだろう(繰り返しになるが、向こうの側の立場で考えるということ)。こうしていられるのは、“特権だが、権利とは違う”からね。果たして、われわれは“法治国家”の名の下にいるのか、それともいないのか(もはや聞き飽きた話だが)。
何せ自分たちの信条を通したいがため、こんなに始終法律を変えてくる連中だから。
おまえと同様、何もかもにわたしもうんざりさせられているのはわかってほしい。
わたしの(古臭い)経験から言えば、世のなかは脱線する方向へ転換することがままある。とてつもなく訳のわからぬものに成り果てたせいで、いまよりましな状態を振り返ることもできない。だからこの状態にあってこう言いたくなる、向こうが考えるように考えろとね。それに努めれば、不快なこと、将来苦しめられることも避けられるんじゃないのか。
もっとも、おまえが心底尋ねたいのは言うまでもなくJのことだ。確かにわたしは、おまえが書いている弁護士とはまだ付き合いがある。しかし、彼が手を差し伸べてくれるとは思わんほうがいい。いまとなってしまってはね。闊歩しながら裁判所へ入って行く王子さながらのあのころが、彼が輝いていた時代だった。もはやそんな面影はない。現職の判事の見直しや解職を働きかける法務省に、おそらくやり過ぎなくらい彼は反対し、マスコミからの袋叩きにも耐えたが、自宅に落書きはされるし、彼自身も短期間拘留された。最近は家の庭先あたりをぶらぶら歩き回り、自分のこと以外は眼中にないと聞いている。
Jはいま、どこにいるのかね? おまえは知っているのか? 州関連の施設、あるいは連邦かね。それ次第で変わってくるだろう。連中(支持者たち)は(裁判所の圧力を後ろ盾に)、いくらJが市民であろうが、求められたGとMに関する情報提供を辞退したかどで、いくつかの権利や特別扱いは失効したと言い出すだろうよ。ほら、われわれの友人でRとKがいただろう、おまえの5歳(6歳? )の誕生日に真鍮のリンカーンの貯金箱をくれた人たちだ。まだ付き合いはあるが、彼らは支持者の側でね。そんな論理に従う人たちだ。ブレマートンでは、ある男がジムで別の男と親しくなり、その辺を一緒に走るといった仲になったらしい。それで最初の男が、相棒の投票歴についてコメントは控えると言ったら、仕事用のクルマの車検ができなくなった(花屋の商売をやっているから、彼は困ったはずだ)。すると、RとKの言い分はこうだ。もし“自国の政府”からの“簡単な要請”に応えられないのなら、その人間は愛国者でない、とね。