錦鯉の発祥の地である新潟県の旧山古志村。2004年の新潟県中越地震によって当時2,200人いた地域住民はいまや約800人となり、消滅の危機に瀕している。そんな限界集落が21年暮に、デジタル住民票となるNFTアートを発行。『WIRED』日本版では雑誌版「Web3」特集(22年3月)でさっそく紹介している。

地域に根ざした山古志住民会議と共にこのプロジェクトを手がけたのが、Next Commons Labファウンダーの林篤志だ。東日本大震災後の東北地方をはじめ、日本全国の地方から新たな社会システムの構築を目指してきた林たちは今回のプロジェクトで、錦鯉をモチーフにしたNFTアートの購入者たちが「デジタル村民」の資格を与えられ、“限界集落”の自治に参加できるというDAO(分散型自立組織)の仕組みを採用した。

今回、SPBS TORANOMON、ARCH虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター共催のもと開催されたThursday Editor’s Loungeでは、神山まるごと高専でカリキュラムディレクターも務める『WIRED』日本版クリエイティブディレクターの伊藤直樹がモデレーターを務め、神山で地域の豊かなネットワークとプロボノやクラウドファンディングによって自生的に進む高専のプロジェクトを紹介。編集長の松島倫明も交え、山古志と神山の事例から、自律分散型の自治の可能性やそのために必要となるツールについて3人による活発な議論が交わされた。

かつては地域住民の手に当たり前にあった「自治」というツールをアウトソースすることが常態となり、「自分たちに相応しい自治体を、自分たちでつくる」という考え方そのものが抜け落ちてしまっているのではないかと林は指摘する。山古志のプロジェクトは「まだ試行錯誤の段階」だとしつつも、日本でほかに先駆けて「DAO × 地方」の可能性を追求してきたからこそ得られた気づきやビジョンが共有される貴重な時間となった。ぜひ音声もチェックしていただきたい。[最下段に音声データへのリンクがあります]

■聴きどころはこちら 

・社会彫刻家について(00:01:00)

・本当の資本とは、貨幣ではなく人間の創造力である(00:03:32)

・山古志NFTプロジェクトの現在地(00:16:08)

・コミュニティマネジャーの重要性(00:23:47)

・アートはアイデンティティをつくる(00:32:18)

・神山まるごと高専(00:37:08)

・ソーシャルプロトタイピング(00:48:43)

・山古志DAOの今後(00:53:44)

・自立分散型に向かうほど、リーダーシップを求める(01:07:24)

・なぜ山古志でDAOが採用されたか(01:17:30)

・自治体もツール(01:19:10)

・たかが道具、されど道具(01:26:11)

■登壇者プロフィール

林 篤志 | ATSUSHI HAYASHI

社会彫刻家。Next Commons Labファウンダー。2016年にNext Commons Labを創業し、ポスト資本主義社会を具現化するための「社会OS」をつくっている。自治体・企業・起業家など多様な領域と協業しながら、日本の地方から新たな社会システムの構築を目指す。日本財団特別ソーシャルイノベーターに選出(2016)。Forbes Japan ローカル・イノベーター・アワード 地方を変えるキーマン55人に選出(2017)。

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■音声視聴はこちらから

NFT村民がつくるDAO × ネイバーフッドの未来
ゲスト:林篤志(社会彫刻家)