新ディスカバリー計画 : NASAが選んだ太陽系でもっとも過酷な危険ミッション 4 つ

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  • author George Dvorsky : Gizmodo US
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  • Kaori Myatt
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新ディスカバリー計画 : NASAが選んだ太陽系でもっとも過酷な危険ミッション 4 つ
Image: NASA/JPL/DLR via Gizmodo US

壮大な宇宙への飽くなき探究心。

NASAはこれまでディスカバリー計画と称して、1996年のマーズ・パスファインダーから2018年のインサイトまで、さまざまなミッションを宇宙に送り出してきました。わたしたちの無限の好奇心を満たしてくれるNASAの最新ミッションには、何が選ばれるのでしょうか。


太陽系でもっとも劣悪で謎に包まれた場所。それは新しいディスカバリー計画の一環として、NASAが選んだ4つの過酷なミッションの目的地です。

ディスカバリー計画はNASAの一大プロジェクト

1992年に始まったNASAのディスカバリー計画。それは科学者たちの想像力をフル回転させ、まだまだ謎に包まれている太陽系を少しでも理解することを目的としています。かつてディスカバリー計画で選ばれたものには、Kepler(ケプラー)宇宙望遠鏡に、月周回無人衛星ルナー・リコネサンス・オービター、そして現在も火星にいる探査機インサイトなどがあります。これからのミッションには木星のトロヤ群、210キロにわたる) 小惑星プシケ(16 Psyche)、火星の第1衛星フォボスも予定されています。

そう、これだけ見てもディスカバリー計画って結構壮大なプロジェクトなんです。そして、今回新たに告知されたミッション候補の数々は、この壮大なプロジェクトがさらに続行することを示唆するもので、わたしたちを空想の世界へと導いてくれるわくわくするものばかり。

最新ミッションの候補地

ディスカバリー計画は、現在進行中または承認済みのミッションと重なるものであってはならないという決まりがあります。これらの新たな4つのコンセプトはいずれもまだ承認を受けていないものであり、以前とりあげられなかったものの、貴重な目的を達成するものばかりです。その目的地は…金星(ミッション2つ)、木星の第1衛星イオ、海王星の衛星トリトンです。

これらの4つのミッションには、それぞれに300万ドルずつの予算が設けられています。これから9ヶ月かけてその内容とコンセプトを展開・精査し、ディスカバリー計画に調査レポートを提出しなくてはなりません。

それでは、その4つの新たなミッションを細かく見ていきましょう。

ミッション1 : 「DAVINCI+」のパラシュート下降による金星探査

DAVINCI+(ダヴィンチ・プラス)は正式名称を「Deep Atmosphere Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging Plus」といい、アメリカのメリーランド州グリーンベルトにあるNASA ゴダード・スペース・フライト・センターがこのプロジェクトを主に取り仕切ります。このプロジェクトの主な目的は、金星の大気を分析すること。

金星の大気は人間には過酷である非常に高温・高気圧なために、多くの謎に包まれています。金星がどのようにして作られたのか、そして進化したのか、表面にかつて水をたたえていたことはあったのか、などは今でも想像の域を出ません。

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Image: NASA/GSFC via Gizmodo US
DAVINCI+ が金星に降り立つイメージ図。

このミッションでは、球形のDAVINCI+探査機がパラシュートを使用して金星の表面にゆっくりと下降しながら、さまざまな分析を行なう計画のようです。 特にキセノンなどの第18族元素(希ガス)は、金星の噴火活動や水文学上の歴史をさぐる手がかりとなるかもしれないため、その存在を検知する機器を搭載しています。また、金星表面のマッピングを行なったり、岩石の種類の分析も行ないます。

DAVINCI+の"プラス"には最近画像分析を追加したという意味がこめられており、長時間の下降において画像を撮影することが期待されています。ただし分析に使うカメラなど、DAVINCI+ に搭載される機器については金星の超高温環境や高圧環境に耐えうる仕様である必要があり、現時点では探査機がどのくらい過酷な環境に耐えられるのかは、まだ誰にもわかりません。

ミッション2 : 木星の第1衛星"イオ"を探る「IVO」

イオ噴火観察機 (IVO : アイ・ヴィー・オー)では、これまた過酷な環境にある木星の第1衛星「イオ」を目指します。木星の強大な重力が原因で、火山活動が非常に激しい衛星となっているイオ。その表面は太陽系でもっとも活発なものであるため、科学調査の対象としては十二分の素材です。 このミッションについては、アメリカのアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学とメリーランド州ローレルのジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)が取り仕切ります。

IVOは5年間のミッションで10回におよぶイオのフライバイを行なう予定で、状況によってはさらに3年間調査は延長される計画を盛り込んでいます。探査機は、木星の巨大な重力によって発生するイオの潮汐加熱と、その熱が核にどのように蓄積され表面に広がるのかを調べる予定。この調査結果は、海底に熱を持つとされている土星の衛星エンケラドスの性質の予測に役立つともされています。

ミッション3 : 海王星の衛星トリトンの生命体の可能性に迫る「TRIDENT」

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Image: NASA/JPL/USGS via Gizmodo US
Voyager 2が1989年に撮影した海王星の衛星トリトン。

Trident(トライデント)ミッションでは、いまだに謎のベールに包まれたままの海王星の衛星「トリトン」に焦点をあてます。このミッションはヒューストンの月惑星研究所からの提案で、カリフォルニア州パサデナにあるNASAのジェット推進研究所の協力を得て行なわれます。太陽系の果てにおける生物の存在の可能性に迫るものです。

過去の調査から、トリトンは非常にアクティブな環境であることがわかっています。NASAのボイジャー2号による探査を通じて、衛星表面が氷に覆われていながらも活動的なことが判明。さらにイオに次いで太陽系でももっとも若い表面を持つともされており、大気があることでも知られます(現在ではトリトンと木星のタイタンは太陽系で大気を持つただ2つの衛星とされています)。また、氷火山による噴火活動もあるとされ、電離層からは雪のように降り積もる複雑な有機物が排出されていると考えられています。地下にいたっては海がある可能性も示唆されており、生命体の可能性を探る場所にはうってつけなのです。

Tridentミッションは、一回限りのフライバイ。一回こっきりです。 冥王星のニューホライズンのミッションに似ていますね。Tridentは500kmの距離までトリトンに近づく予定で、フライバイにより表面をマッピングし、電離層を測定、海の存在を探ります。ミッションのおまけとして、Tridentは海王星系に行く途中で木星にもスイングバイする予定です。

ミッション4 : 「VERITAS」で金星の地表に接近

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Image: NASA/JPL-Caltech via GIzmodo US
金星の起動を回るVERITASのイメージ画像。

最後にご紹介するのはVERITASミッション。正式名称は「Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography, and Spectroscopy」です。2年間スパンのこのミッションは比較的に低価格で実施でき、金星の周回軌道に人工衛星を飛ばして軌道上から金星の表面をつぶさに分析するもの。NASAのJPLが率いるこのミッションの主な目的は、地球との差や類似点について理解することです。地球と類似点が多いことから「地球の双子」と称される金星が、どうして悪魔の双子に成り下がってしまったのかを探ります。

さまざまなセンサーを搭載するVERITASは金星の立体地形図を作り、クレーターの存在や地殻活動の有無、火山作用、水の存在などを模索します。そして金星の温度と重力場を計り、細かな地質調査も行ないます。

VERITASミッションはDAVINCI+プロジェクトのいわばライバル的存在。提案者は超小型衛星探査機を大気に飛ばす計画を立てています。これにより、 質量分析と合わせて希ガスを探索します。

NASAが金星ミッションであるVERITASとDAVINCI+ミッションの両方を選ぶことは考えにくく、どちらかになると予想されますが、いずれにしても公式のNASAミッションが発表されるのは、2021年となっています。お楽しみに。

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