ロサンゼルス市内に棲みつく、野生のコヨーテ。多くの猫が餌食に…

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
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ロサンゼルス市内に棲みつく、野生のコヨーテ。多くの猫が餌食に…
Image: CSUN via Gizmodo US|ロサンゼルス近郊をうろつくコヨーテ

愛猫は外に出さないほうがいいかも。

アメリカのロサンゼルス市内には、野良犬ならぬ野生のコヨーテが棲みついているそうです。そのコヨーテたちがどうやって食いつないでいるのかを調査したところ、都市部に棲むコヨーテが食べたもののうち3分の2は人間の生活に関わるもので、びっくりするほど多くの猫が餌食になっていたとか…。

自然を内包した都市

日本の都市と比べると、ロサンゼルスは街並みの間隔がゆったり。建物と建物、建物と道路との間には広い空間があり、そこに植物が根を下ろして生態系を育んでいます。筆者が住んでいたロサンゼルス郊外では、庭にアライグマ・オポッサム・スカンクなんかが現れ、時おりエサをあげたりしていました。

でも、このエサやりがいけないんですね。おいしい食べ物が豊富に手に入るので、これらの動物以外にもネズミ類やコヨーテが人間の生活圏内に棲みついてしまいます。日本では耳慣れないコヨーテですが、北米のいたる都市や南米にも棲息し、幅広い雑食性を持つがゆえにあらゆる環境に適応しているようです。

コヨーテが棲んでいるのが都市部の中心に近ければ近いほど、人間由来の食べ物に依存していることも研究で明らかになってきました。カリフォルニア大学ノースリッジ校の研究者らがロサンゼルス中心街からサンタモニカ山地国立保養地までを対象に、都市中心部・近郊・郊外の3つの研究エリアに分けてコヨーテの食生活について調べたところ、都市部のコヨーテの食べ物の約65%はゴミ・植栽の果実・ペット(主に猫)など人間由来のものだとわかったそうです。

コヨーテの食生活を知ることにより、コヨーテと人間との対立を回避するための有効な政策づくりに繋がっていくと期待されています。

ひげから炭素13を検出

住宅街の道端に現われたコヨーテ
Image: Tim Karels via Gizmodo US

でも、どうやってコヨーテが食べているものを調べたのでしょうか? 動物愛護の観点から、まさかコヨーテの腹の中を直接見るわけにもいきませんし。

カリフォルニア大学ノースリッジ校で2年間に渡って行なわれた研究では、車に轢かれてしまったコヨーテの死骸などからひげを集め、 ひげについている炭素の同位体を調べることで、フンの中には原型を留めないハンバーガーやパン類などやわらかい食材の痕跡を確かめたそうです。

「探していたのはトウモロコシ」と研究者のひとり、カリフォルニア大学ノースリッジ校のRachel Larsonさんはプレスリリースで述べています。

「トウモロコシはアメリカ人の食生活のベースです。トウモロコシそのものを食べますし、トウモロコシから作られるコーンシロップはパンを含む精製食品の多くに含まれています。家畜のエサにもトウモロコシが使われ、その家畜の肉を人間が食べています」

具体的には、異常に高い炭素13の数値が検出された場合はトウモロコシを食べたと推測したそう。さらに、トウモロコシはすべて人間由来の食べ物と見なしました。結果、都市部に棲むコヨーテが食べた物のうち38%は人間が捨てたゴミだと推測できたそうです。もちろん、すべてのコヨーテのひげを調べたわけではないので、この数値は概算でしかないのですが。

コヨーテが都会で生きていけるワケ

さらに、別の方法からも食生活をうかがうことができました。

150人の市民ボランティアがコヨーテのフンを収集し、最終的にはフンを3,147個(うち1,541個は都市部、1,606個は郊外)収集。集めたフンはボランティアが持ち寄って合同で選別作業を行ない、食べカスの中から骨・毛・羽・食品包装材などを取り出していったそうです。

都市部で見つかったコヨーテのフンを分析した結果、65.2%は「人為的な食べ物」で、残りの34.8%は本来自然界で食べてきた野生の哺乳類・無脊椎動物・鳥類・は虫類や自生している果物や種子などだったそうです。

「人為的な食べ物」のうち、一番多かったのがイチジク・ヤシ・ブドウなどの園芸種の果実で26.1%。22%は人間のゴミをあさった形跡が見られました。そして、19.8%という高い数値をたたき出したのがネコです。ペットフードなど餌付けとみられる食料は少なく、3%でした。そしてさらに低い1.5%以下はイヌ・リス・ハムスター・ウサギ・ニワトリなどの飼育されていた動物だったそうです。

都市に棲むコヨーテはネコを好む

コヨーテを都市型と郊外型、そしてシーズンを雨期と乾期とに分けた場合に、コヨーテが何をどのぐらい食べたかを表したグラフ。左下の項目から順に、野生のウサギ・野生のリス・野生のホリネズミ・野生の無脊椎動物・野生のは虫類・野生の鳥類・園芸種の果実や種子・ネコ(黄色でハイライト)・ゴミ。
Image: Larson et al., PLOS ONE

都市部のコヨーテがネコを食していた、ということ自体は想定内だとしても、20%はかなり高い数値です。食されたネコのほとんどは野良猫だろうと考えられているものの、もし飼い猫がいるなら外には出さないほうが賢明ですね。

一方で、郊外に棲むコヨーテはネコではなくホリネズミ・ジリス・ネズミ・ウサギなどの野生動物を好んで食していたこともわかりました。さらに、郊外のコヨーテのフンからは人為的な食べ物が37%、そしてネコが4%しか検出されませんでした。当たり前ではありますが、都市部に棲んでいるコヨーテに比べたら、郊外に棲むコヨーテは人間由来の食べ物をあまり食べないんですね。

野生動物の賢さ・たくましさ

これらの結果を踏まえて、共著者でサンタモニカ山地国立保養地で働くJustin Brownさんは「コヨーテはロサンゼルス市内で人間が適切に管理していない食糧源を有効に使っている」と分析しています。

「野良猫であろうと、果物やゴミであろうと、そこに食べられるものが放置されているからこそコヨーテが集まってくる。逆に言えば、コヨーテが来ないようにする主導権は私たちにあり、すべては私たちの行動につながってくる。食料となるものさえ提供しなければ、コヨーテも都市部には寄ってこないのです」

なお、この研究結果はロサンゼルス都市部の環境に限定されたもの。廃棄物管理システム・気候・自然環境などによって結果は左右されてくるでしょうが、他の都市でも参考にできそうです。

もし自宅周辺にコヨーテが出没して不安を感じている人がいたら、まず対策としてゴミを密封して管理し、飼い猫を外に出さないようにしましょう、と米Gizmodoは注意喚起しています。コヨーテが食べるものがなくなってしまったら? という同情は無用。賢い彼らは食べ物を求めて新天地を探すまでです。人間の支援なくとも、コヨーテはちゃんと生きていけるのですから。

Reference: PLOS ONE, Santa Monica Mountains National Recreational Area