Amazonが自社ブランドの商品開発で出店ブランドのデータを大いに見ていることが判明

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  • author satomi
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Amazonが自社ブランドの商品開発で出店ブランドのデータを大いに見ていることが判明
Amazonトップセラー商品(上)の内部データを大いに参考にさせてもらったAmazonブランド商品(下)

「見てません !キリッ」と米国会で完全否定したのは何だったのか…

Amazonが出店ブランドの禁断の取引データをこっそり社内で見ながら競合商品を開発し、Amazonプライベートブランドの商品として売っていることがWSJの調べでわかりました。

Amazonベーシックなどの自社ブランド事業を担当した元社員20人余りの証言と内部資料で明らかになったもの。参照しているデータは総売上高、Amazonの利益マージン、出店ブランドからの広告収入などです。WSJが元社員に頼んで車用の収納ボックスで一番よく売れているFORTEMの商品に関するレポートを見せてもらったら、なんと25項目もの販売営業データが記載されていたんだそうですよ? めちゃ見てる!

上のスクリーンショットは、昨年10月発売のAmazonベーシックの商品と並べてみたところです。Google検索からジャンプして最初に表示されるのはグレイの大きめのボックス@29.90ドルなので、色も値段も取っ手も別物に見えるんですけど、同等サイズにそろえるとアラ不思議。色も値段も取っ手もそっくりになりますよ。

下に表示される類似品比較チャートにはFortem(レビュー5337件)、DRIVE(7544件)、Trunkcratepro(5081件)の人気商品よりも前にAmazonベーシック(同238件)が表示されます。こういうのも「自社ブランドに有利になるようにアルゴリズムを操作している」という批判につながるので、本当はやっちゃいけないんだけど…。

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Amazon

ところでなぜデータを見ちゃダメなの?

「そちゃ見るでしょ。プラットフォーム事業者は見ようと思えば見れるんだから」と思う人もいるかもしれませんが、契約では絶対見ないから出店してね♥という約束になっているので、出店者に断りなく内部データを見る行為は契約違反に相当します。また、独禁法上も…

「オンラインモール運営事業者が自らの立場を利用して利用事業者の取引データを得た上で同種の商品を後追い的に販売する行為」(日本公正取引委員会資料より)

…は独占・寡占的地位の濫用として固く禁じられているんですね。情報抜かれて似たり寄ったりな商品をどんぴしゃのプライスと広告上位表示で売り出されたら、だれも勝ち目ないですから。

Amazonプライベートブランドは合計400種超。呼び名が百変化

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Amazon

日本はもちろん欧米でも反トラスト法でにらまれているAmazon。自社プライベートブランドは増えに増え、売上No.1の「Amazonベーシック」をはじめ「Amazonコレクション」、「Amazonエッセンシャル」、「Amazonエレメンツ」といったわかりやすいものから、「Pinzon」、「Solimo」といったわかりづらいものまで全部合わせると世界全体で合計450種以上あります(TJIリサーチ調べ)。

出店ブランドのデータを見て売れそうな商品を選んでプライベートブランドの帝国を築いている、という話は昨年9月、Yahoo!が元社員2人の証言として伝えたのが先です。出店ブランドの検索動向も、出店ブランド以上に詳しく見れるということでTVでもだいぶ騒がれました。

「コストコのカークランドブランドと同じ。大手はみなやっている」と言ってる人もいますが、Amazonはスケールが違うので、これやられたら出店者はたまったもんじゃないですよ…。

Sources: WSJ, 日本公正取引委員会, Yahoo! Finance, Digital Commerce, Amazon

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