ニューヨークの道路閉鎖計画は穴だらけ

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  • author Yessenia Funes - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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ニューヨークの道路閉鎖計画は穴だらけ
Image: Getty

新鮮な空気まで人種差別をするのかって揶揄したくもなる…。

ニューヨーク市は新型コロナウイルスの大流行のさなか、屋外での活動を促進し、人々の健康を保つために、最終的には車道を100マイル(約160km)閉鎖する取り組みを今月から始めています。そして、閉鎖された車道には公園の中や公園周辺のものまで含まれているというヘンテコなことが起こっているのだとか。

えっと、素朴な疑問なのですが、公園の近くに住んでいない人たちはどうやって公園に行けばいいんでしょうか?

公園は裕福な白人のためにある?

ニューヨーク市は新型コロナの感染爆発が起こっている大都市のひとつで、アメリカの主要都市の中で一人当たりの緑地面積がもっとも少ない都市でもあります。そして、緑地にアクセスできる機会は公平ではありません。アメリカ全土を対象にした調査によると、より裕福で、より白人が多いコミュニティの方が、より多くの緑地が近所にあるらしく、ニューヨークにもそれが当てはまります。環境正義を学んだ訳者にとって、これはアメリカの通常運転なので驚きはまったくありません。

有色人種のコミュニティは、裕福な白人コミュニティよりも、歴史的深刻大気汚染にさらされてきました。同時に、大気汚染物質にさらされると、新型コロナで死亡する可能性高まるというデータも見つかっています。

道路封鎖は人口過密地域と大気汚染がひどい地域を優先すべき

人権擁護団体は、スーパーに行ったり、単に新鮮な空気を吸いに外出したりするためにも、人々の安全が確保されるように、オープンストリート構想をニューヨーク市に提案してきました。でも、道路を封鎖することでもっとも大きな恩恵を受けるのは、人口密度が高い地域や、大気汚染がひどい地域の人々だと考えられています。

ニューヨークに拠点を置くTransportation AlternativesのコミュニケーションディレクターであるJoe Cutrufo氏はメールでEartherにこう語っています。

事態をしっかり把握できれば、最初に何をすべきかは明らかです。新型コロナの被害がもっとも大きかった地域と、大気汚染の影響が大きかった地域の通りを閉鎖すべきです。でも、市はある程度成果を出してから勢いをつけるために、とりあえず簡単に閉められる場所からはじめようとしているみたいです。

市長の計画に含まれている公園や通りの多くは、Transportation Alternativesが重要視している道路もカバーしているそうです。でも、彼らは病院周辺や、公園の徒歩圏内ではない道路、さらにはニューヨークシティ・マラソンのコースなど、他にも閉鎖すべき道路をいくつか提案したのだとか。団体によると、公園はもっとも簡単なターゲットでしかなく、必ずしも緊急を要する地域にはあたらないとのこと。

つまり、もっとも必要としている人々のために道路の閉鎖が行なわれていないということみたいですね。大都市が歩行者に道路を開放する方向に進むのは素晴らしいことですが(私に言わせれば、これは一時的なものではなく長期的な変化であるべきです)、オープンな緑地への公平なアクセスは、新型コロナのずっと前から問題になっていました。私たちは今、この間違いを正す必要があります。

ニューヨークでより安全な街づくりを提唱している作家のダグ・ゴードン氏はEartherにメールでこう伝えています。

多くの都市が新型コロナでもっとも大きな被害を受けた地域社会に焦点を当てて、単なるレクリエーションのための空間以上のものも考慮に入れたうえで、ニーズに合った計画の策定に取り組むべきです。既存の公園やその周辺のスペースを拡張するのは都市にとって簡単なことかもしれませんが、新型コロナ後の社会では受け入れられない古い言い訳のように感じますね。

ニューヨーク市は、このプロジェクトは新型コロナの被害がとくに深刻な地域に集中すべきだと述べています。当局は、自治会やブロック協会、地域社会のグループと協議したうえで、約30マイル(約48km)の道路の開放を計画しており、話し合いはすでに始まっているそうですが、いつまでに環境弱者のコミュニティの通りから車がいなくなるのか、具体的なスケジュールは決まっていません

もちろん、ニューヨーク市がすぐにでも大打撃を受けた地域を含む計画を発表する望みはまだ残っています。地元の環境保護団体『WE-ACT for Environmental Justice』のSonal Jessel氏は、公園に集まる人が増えている現状をみると、これが最初の一歩になると考える理由は理解できると話しています。しかし、WE-ACTがサービスを提供しているマンハッタン北部の家庭にとっては、同プログラムはもっと先進的じゃないといけないそうです。

Jessel氏は、マンハッタン北部での主な懸念として交通渋滞と過密な人口を挙げたうえでこう語ります。

私は彼らがなぜ公園やその周辺道路を閉鎖しているのかを完全に理解していますし、とても重要なことだと思います。でも、私たちが新型コロナが引き起こす問題に対して公平な対応をしようとしているとき、つまり、最初に誰を対象にし、何を最初に行なうべきかを考えるときは、リスクがより高い人々に焦点を当てるべきだと思います。

残念なことに、私たちは環境弱者たちがいつ開放された通りにアクセスできるのかを見守る必要があるようです。まだ市の計画は始まったばかりですが、順調な船出とは言えないみたいですね。