車、排気ガスに加えてマイクロプラスチック排出も問題に

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  • author Yessenia Funes - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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車、排気ガスに加えてマイクロプラスチック排出も問題に
Image: Shutterstock

今日から車も自転車もドリフト禁止です。

車を運転すると粒子状物質や温室効果ガスを排出しますよね。でも、それだけじゃなかったんです。車のタイヤやブレーキがすり減るとき、マイクロプラスチックをまき散らしているんですって。そして、雨や雪や風に乗って世界中のあらゆる場所に飛んで行っちゃうのだとか。

車のタイヤとブレーキが大量のマイクロプラスチックを大気中に放出

Nature Communications誌に発表された、道路交通部門がどれだけマイクロプラスチック発生の原因になっているかを分析した研究によると、自動車などによって約68億ポンド(約308万トン)のマイクロプラスチックが大気中に放出されたとのこと。大部分はアジアと北米によるもので、多くが海や湾岸など世界中の水路に流れ込んじゃってるそうです。

この研究は、タイヤの摩耗粒子とブレーキの摩耗粒子2つに分けて分析しています。タイヤは道路との摩擦によって粗いプラスチック粒子を発生させます。一方、ブレーキは車のスピードや重さ、ブレーキの効き具合などが原因ですり減り具合が変わるみたいですが、結果としてどちらからもマイクロプラスチックが空気中にまき散らされて、世界でもっとも辺鄙な場所にまで飛んで行っちゃうのだとか。

過去の研究は、道路から河川へ流れ込んだ水がどのようにしてマイクロプラスチックを海まで運ぶかを調べてきましたが、今回の研究では、道路交通由来のマイクロプラスチックがどのくらい大気中を移動しているかについて、2つの方法を用いて具体的に調査しています。ひとつめは、世界の自動車による公害と温室効果ガス排出量を調べる方法で、もうひとつはノルウェー、スウェーデン、ドイツのデータを元に、タイヤがどれくらい摩耗しているかを分析する方法です。道路交通によるプラスチックの影響について、同様の研究を行なってきたオランダ放送大学の研究者であるピーター・ヤン・コール氏は、このアプローチは理にかなっていると、以下のように評価しています。

今回の研究では道路のタイプが摩耗に与える影響については分析されていませんが、今のところこれが最善の方法でしょうね。

マイクロプラが風に乗って北極や南極にまで到達

今回の研究結果は、小さなプラスチック粒子の方が、大きな粒子よりも大気中を遠くまで移動することを示しています。10マイクロメートル以下の微粒子は発生源の近くに落ちてしまう傾向がありますが、2.5マイクロメートル以下の微粒子の多くは発生源から遠くまで運ばれているのだそうです。

また、2.5マイクロメートル以下のマイクロプラスチックの半分以上が海に流れ込んでいて、ブレーキから発生したマイクロプラスチックの31%が山岳地帯や北極、さらには南極などの雪や氷の表面に付着していることもわかったとのこと。基本的に雪や氷よりも暗い色をしているこれらの粒子は、太陽エネルギーをより吸収して温暖化を加速させる原因になってしまうのでヤバいんです。すでに世界の他の地域よりも2倍以上のペースで気温が上昇している北極圏や、急速な気温上昇に見舞われている高山の温暖化がさらに進んでしまいます。また、粒子状物質は、脆弱な生態系とそこで暮らす動物たちにも悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。

研究の著者であるNorwegian Institute for Air ResearchのNikolaos Evangelious氏はメールでEartherにこう語っています。

私はマイクロプラスチックが生体に蓄積することを懸念しています。遅かれ早かれ、マイクロプラスチック汚染の緩和政策を検討すべきでしょう。

この調査で用いられたモデルやデータベースには、オフロードで走行するトラクターや建設機械のデータは含まれていないそうですが、そういう超重たい車両は、乗用車よりも摩耗が激しいため、マイクロプラスチックの総量は過小評価されている可能性があるとのこと。また、この研究では地上のプラスチック粒子を測定できないので、世界中でどのくらいの量のプラスチックが発見されているかについては、データが限られているそうです。そういうデータがあれば、モデルによる分析結果を検証するのに役立つと思われます。

急がれるプラ汚染の緩和政策

マイクロプラスチックの拡散を研究してきた、米ユタ州立大学流域科学の助教授であるジャニス・ブレニー氏は、「大気がマイクロプラスチックの拡散に果たしている役割の大きさに驚きました」とEartherにメールで述べています。これまでの研究結果でも同様の結論が出ており、プラスチック汚染から逃れられる場所なんて地球上のどこにもないことがますますハッキリしてきています。地球がプラスチックでできた巨大なボールになってしまうのを防ぐ唯一の方法は、プラスチックの消費量と廃棄量を減らす方法を見つけることです。つべこべ言わずに、やるしかありませんね。