どんどん泥沼化。
Apple(アップル)vs Epic Games(エピックゲームズ)の戦いは長期戦にもつれ込みそうです。
Appleは『Fortnite(フォートナイト)』をアプリストアから追い出したまま、今度はUnreal Engineも除外するつもりです。一方、Epic Gamesは逆にフォートナイトをストアに戻し、Unreal Engineもそのままキープを望んでいます。Appleは依然、Epicの行為がiOSのエコシステムにダメージを与えると考えており、EpicはUnreal Engineの排除は同社だけでなく、エンジンを使っているゲーム開発者達にとって取り返しのつかないダメージになると考えています。カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所でこの件の判事を務めているYvonne Gonzalez Rogers判事は、先日の審問会後の正式な判断の文書化を行なっており、どうやら2021年7月の裁判までは現状維持になりそうです。ただ同時に、判事は陪審員裁判を推奨しました。
「個人的に、本件は陪審員に判断を仰ぐのが適切と考えます。この問題は反トラスト法の最前線であり、国民がどう考えるのかを聞くのがいいでしょう」と判事は発言しました。つまり、判事一人の判断ではなく、国民の意思に委ねるべきとの考えです。
両者の言い分
先日の審問会において、両社は殆どの時間を「消費者にとって何が最も重要か」を論じるのに費やしました。Appleは、消費者がAppleを選ぶのはプライバシーとセキュリティが大きな理由だと再度論じ、だからこそEpic独自のストアをiOSデバイスにサイドロード(正規のアプリストアを通さずアプリをダウンロードする行為)させるわけにはいかないと説明しました。ちなみに、Androidデバイスでは可能です。
対するEpicの弁護士は、フォートナイトのプレイヤーの63%がiOSでプレイしており、これは7100万人に相当すると発言しました。決して小さな数字ではないこの大勢の全てが、フォートナイトを遊ぶためだけにコストを無視して気軽にデバイスやOSをスイッチできるわけではないと指摘しました。
またEpicは、フォートナイトのiOSアプリで直接支払う方法を提供した後、Apple Pay以外の支払い方法を求める声が増えたと主張しました。同社によると、直接支払いオプションがアクティブになって6時間以内にはユーザーの約50%がApple Payではなくそちらを利用していたとしています。これに対しAppleは、直接支払いオプションを利用したユーザーには2ドルの割引が適用されており、Apple Payを使いたくないからそちらを使ったのか、割引が欲しかったからかは分からないと反論しました。
アップル税も議論の的に
論戦の最中、有料アプリやアプリ内課金に対してAppleが取る30%の手数料、別名「アップル税」ももちろん話題に上がりました。Epicはすかさず「AppleはUberにAppleのサービスを使うことを強要していない」と指摘し、それに対してAppleは反論がありませんでした。しかし、これに関してEpicはやや窮地に立たされています。というのも、同社が公に認めているように、Epicは意図的にAppleとの契約を破ったからです。
審問会の最中、この部分で最も興味深かったのは、Epicが30%の手数料ではなく、iOSにアプリをサイドロードできないことによりフォーカスしたことです。とはいえ、Appleも判事もEpicの契約違反をキツく追求しました。判事は、Microsoft(マイクロソフト)、Sony(ソニー)、Steam、GOGなど他社もみんな30%の手数料をとっているのに、なぜAppleだけを問題にするのかと問いました。「私達には30%だけが問題なのではなく、アプリストアを介さずiPhoneに私達のアプリを提供したいのです」とEpicは答えました。
Appleの陪審員裁判は過去にもあった
今回のEpic vs Appleが陪審員裁判となっても、Appleにとってはこれが初ではありません。2014年、「iPodに音楽を入れる方法を、iTunes Storeで購入するかCDから取り込むことに限定することでiPodの独占状態を維持している」と原告が主張した裁判も、Rogers判事が主任判事を務めました。もし今回の争いが裁判に持ち込まれた場合、このときの判決が前例となる可能性があります。当時は陪審員は全員一致でAppleに有利な判決を下しました。つまり、同じことが起きた場合、EpicはApple対し、Epicへの直接支払いでVバックス(フォートナイトで使われている仮想通貨)を購入したことで起きた損失を賠償しなければならなくなるかもしれないのです。
アプリストアにおけるUnreal Engineの今後
また、アプリストアにおけるUnreal Engineの今後も不明瞭です。もしAppleがUnreal Engineの配布を停止させる許可を裁判所から得たら、Appleは間違いなくそれを実行するでしょう。2020年8月の終わりの保全命令に関する審問会の最中、Appleを代表する弁護士達は、EpicがUnreal Engineでも同じように契約違反をすることに懸念を表し、そうなる前に事前に手を打とうとしていたのです。
今回の審問会では、Epicは「Unreal Engineは一般消費者向けではない」とし、「Unrealは世界中で様々なアプリケーションに利用されている」と主張しました。
現時点で、EpicはまだUnreal Engineのために別にAppleと結んだ契約に違反はしていません。