iPhone 12レビュー:10万円切るのにProっぽい満足感

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  • author Caitlin McGarry - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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iPhone 12レビュー:10万円切るのにProっぽい満足感
Image: Caitlin McGarry/Gizmodo US

もうProじゃなくていいか、ってなる充実具合。

iPhone 12、例年よりちょっと遅れましたが、無事発売されました。米GizmodoではCaitlin McGarry 記者がさっそく数日使ってのレビューをしてます。


今年のiPhoneには4つの選択肢があり、それぞれベースモデルのお値段だけでも700ドル(日本価格7万4800円)から1100ドル(日本価格11万7800円)までと幅があって、迷ってくれと言われてる感じです。が、それはある意味うれしい悩みかもしれません。というのは、iPhone 12シリーズではフラッグシップ機能がラインアップ全体に展開されていて、安かろう悪かろうじゃないんです。とはいえもちろん、いくつかトレードオフはあります。

とくにカメラに関しては、iPhone 12 Proが背面トリプルなのに対し、iPhone 12はデュアルどまり。ボディの素材も、ステンレスじゃなくてアルミです。ただ、レッドやミントグリーン、ディープブルーといったカラバリには、iPhone 12 Proより惹かれる人もいると思います。

今はコロナで先行き暗くて、最新スマホに10万円とか出してる場合じゃないかもしれませんが、スマホはどんなときでも必需品です。そしてもし今スマホを買い換える必要があって、1年経っても古めかしくならないものがほしければ、選ぶべきは800ドル(日本価格8万5800円)のiPhone 12です。iPhone 12とiPhone 12 Proの違いはごくわずかで、iPhone 12にもプレミアム感はすごくあります。なので2、3万円節約してProじゃないほうを選んでも、妥協したって感じにはなりません

ちなみにこの記事では6.1インチのiPhone 12だけをレビューしていて、iPhone 12 Proに関しては別記事でレビュー予定です。5.4インチのiPhone 12 mini、6.7インチのiPhone 12 Pro Maxは11月に発売されるので、そちらも別途レビューしていきます。

iPhone 12


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Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US


これは何?:AppleのベースモデルのiPhone

価格:アンロック版が830ドル(日本価格8万5800円)

好きなところ:美しいデザインと有機ELディスプレイ。ふたつのレンズで素晴らしい写真が撮れること。高いパフォーマンスとしっかりしたバッテリーライフ。Proじゃないのに妥協した感がないこと。

好きじゃないところ:デジタルズームがイマイチで、超広角より望遠レンズがほしくなること。ディスプレイのリフレッシュレートが60Hz、ベースのストレージは64GBで、競合フラッグシップスマホに見劣りすること。

まずはデザインとディスプレイに見とれる

先日のiPhone発表イベントでは、iPhone 12は5G対応とA14 Bionicチップ搭載でスピードがすごいことになった、と言われてました。でも私がiPhone 12を見て最初に惹かれたのは、そのデザインとディスプレイです。iPhone 12 Proと比べると、まず軽さにはっとしました。軽いのはiPhone 12の素材がアルミだからですが、チープな感じじゃありません。またフラットになった側面は、iPhoneのデザインの頂点だったiPhone 4や5を思い出させるだけじゃなく、ここ数世代の丸みを帯びたiPhoneより持ちやすくもあります。特に手に持ってランニングするときは、角張ったエッジがあるので安定感があります。

また有機ELディスプレイの美しさは、とくに去年の6.1インチiPhone 11と比べるとはっきりわかります。iPhone 11は700ドル(日本価格7万4800円)でしたが、ディスプレイは液晶でした。iPhone 12での動画視聴やゲームプレイは、黒が深くダークで、色はより鮮やかにダイナミックです。また前面には、AppleいわくiPhone 11より4倍割れにくいセラミックシールドが搭載されてます。私自身は(まだ)iPhone 12を落としてないのでどれくらいの衝撃まで耐えるのか検証できてないんですが、Appleの言うことを信じたいです。

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ゲームや動画がうれしくなります。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)

ディスプレイに関連して、iPhone 12のリフレッシュレートが60Hzに据え置きなのはどうなんだ、どうして他社みたいに120Hzまで上げないんだって声はたしかにあります。そして他社の高リフレッシュレートのデバイスを使っていると、iPhone 12を使ったときにはその違いがわかります。でも他の高リフレッシュレートなデバイスを使ってなければ、とくに何も感じないはずです。5G対応と似てますが、iPhone 12を3年とか4年使い続ける人のことを考えれば、Appleはリフレッシュレートを高くしておくべきだったと思います。ただ残念ながらAppleは、5Gには完全対応したんですが、高リフレッシュレートは導入しませんでした。それでもほとんどの人にとっては大して問題にならないはずですが、この新しいデザインの端末上でより滑らかな動画やゲームを見られたらますます美しかっただろうとは思います。

iPhone 12の美しさに見慣れて次に気づくのは多分、パフォーマンスの高さです。iPhone 12に搭載されたA14 Bionicのベンチマークテストでは、最新Snapdragon搭載の今年のAndroidフラッグシップスマホすべてに圧勝しています。去年のA13 Bionicもすごくパワフルでした。iPhone 8とかiPhone Xからアップグレードするとしたら、パフォーマンスの大きな飛躍に気づくことでしょう。でもiPhone 11を使っていた人は、それほどでもないでしょうね。

iPhone 12の5Gを検証してみた

今年Appleが強調してたのは5Gでした。5Gのポテンシャルと問題点については先日詳しく解説しましたが、5Gって騒がれすぎて自分の首を締めちゃってる感じです。Appleのティム・クックCEOは5Gは「理想的」には下り通信速度4Gbps出せると豪語してましたが、私が米国中いろいろなキャリアを使ってテストした中では、そんな速度は1回も出たことがありません

私の家はロサンゼルスのハリウッドにあるんですが、ダウンロード速度はAT&Tの4G LTE(彼らはそれを「5G E」と呼んでて紛らわしいんですが)よりは速く、でも「5Gでこんなに速くなる!」と言われてるほどの速度は出てないです。AT&Tのカバレッジマップによれば、ロサンゼルスは5Gにカバーされてるんですが、そのマップではより低速な「5G」と本当に速いミリ波帯の5Gをちゃんと分けてません。なので一見しただけではどっちの5Gかわからなかったので、AT&Tに電話してギガビット通信できる場所はどこか聞いてみたところ、自宅から歩いていける2カ所の住所を教えてくれました。

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自宅ではAT&Tの遅い方の5Gネットワークにつながってます。ミリ波信号を捉えると、アイコンが5G+に変わりました。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)

教えられた住所の場所に行くと、ハリウッドの中心にある中華ファストフード・Panda Expressの駐車場にたどりつきました。そこで私はiPhone 12を持った手を5Gのノードがあると思われる方向に伸ばし、ついにギガビットネットワークにつながりました。AT&Tで真の5Gにつながったことを示す、「5G+」のアイコンもオンになりました。それでも、クック氏が言ったような4Gbpsにはほど遠く、OoklaのSpeedTestアプリを何回かやった結果ではつねに1.2〜1.4Gbpsでした。そしてPanda Expressの駐車場からほんの少し離れた歩道に入ると、速度はすぐさま600Mbpsに落ちました。さらに数ブロック離れた自宅では、130Mbps前後に落ち着きました。

駐車場で高速5Gにつながったとき、私はNetflixの『シッツ・クリーク』のシーズン6をダウンロードしました。全14話のダウンロードにかかった時間はほんの1分と、なかなかの速さです。私は次に何ができるか、挙動不審気味に6台のスマホをとっかえひっかえしながら考えましたが、何も浮かびませんでした。私はPanda Expressでマイ定番の鶏のピーナッツ炒めを買うこともないままその場を離れつつ、5G+のアイコンが5Gに戻るのを見ていました。

ただ、ミリ波5Gが自宅の壁を通過できてギガビット通信が可能になっても、今の私にとってはあまり意味がありません。もうだいぶ前から自宅では光ファイバーを使ってるし、外出先で超速通信が必要なのは出張のときだけで、これはコロナ下では当面なさそうです。でも飛行機搭乗直前に映画や音楽や本をパパッとダウンロードして飛行機内で楽しめることを想像すると(私はこういうことを出張前日にしっかり準備したりできない方なので)、すごくワクワクします。

ひとつイラっとしたことは、iPhoneが5G対応しても、携帯キャリアとの契約が5G対応してないかもしれないことです。私はここ2年ほどAT&Tの無制限データプランをずっと使っていて、それがAT&Tでは一番高いプランなので、5Gも当然自動的に入ると思ってました。が、残念ながら5Gを使うには、料金はまったく同じだけど5G対応のプランに切り替えが必要でした。iPhone 12を買ったのに5Gが入ってないっぽいと思った人は、利用してるプランに5G対応が含まれてるかどうか要確認です。

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Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US



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Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US



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Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US


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Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US


もうひとつ要注意なのは、ミリ波5Gにつながってつねにギガビット通信してると、iPhoneのバッテリーは数時間でなくなってしまうことです。でも良くも悪くも、今はそんなことは起こりえません。上にも書いたように、私は5Gの電波をフルスピードで受信するために、数ブロック先のPanda Expressの駐車場まで行く必要がありました。そのとき以外は、私はiPhone 12でいろんなスピードテストやカメラ比較や音楽ストリーミング、その他ちょいちょいInstagramやTwitterをだら見したりしてましたが、5Gにはあまりつながってなく、その結果バッテリーが足りなくなったりはしませんでした。

Appleは5Gのために「スマートデータモード」という設定を作っていて、ユーザーが5Gが必要ないような使い方をしてるときは自動でLTEに切り替わってバッテリーを節約できるようになってます。この設定はデフォルトでオンなので、とくに意識しなくても大丈夫です。が、この設定を変えてつねに4G(または5G)にするには、「設定>モバイル通信>通信のオプション>音声通話とデータ」と進み、4Gか5Gを選べばOKです。

バッテリーライフを測る動画再生テストでは、iPhone 12は13時間以上持ちました。これはSamsungやGoogleのフラッグシップより数時間短いんですが、十分良い結果です。

新しいMagSafeはどう?

今年の他のiPhoneと同様、iPhone 12の背面にはMagSafeの充電コイルが埋まっていて、MagSafe対応充電パックにくっつくようになってます。最初私は、これってすごくクールだと思いました。パチっとはまるので、ちゃんと充電できてるのかどうか不安になる必要がないし、充電中にiPhoneを使っても大丈夫です。でも使っているうちに、MagSafeは手段ありきで解決すべき問題を探しているようにも思えてきました。

そもそもiPhoneで使えるワイヤレス充電パックを持ってる人がどれだけいるのか謎です。私の知ってる人はまだみんな、Lightningケーブルと、iPhoneに同梱されてきた電源アダプタを使ってます。ただその同梱アダプタが今回廃止されたので、これからはだんだんみんなワイヤレスに移行するかもしれません。Lightningケーブルで充電してるときはヘッドホンとかのアクセサリをiPhoneに差し込めなくなるので、ワイヤレス充電にはそのデメリットを解消する意味もあるのかもしれません。でも現状では、ワイヤレス充電を使う人より、Bluetoothイヤホン/ヘッドホンを使うから別に充電は有線でいいよって人の方が多いんじゃないかと思います。

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MagSafe充電器はちゃんと使えますが、ちょっと温かくなります。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)

MagSafe充電器はやや高めの40ドル(日本価格4,500円)で、USB-Cケーブルは付属してくるんですが、電源につなげるためのUSB-Cアダプタは付いてきません。でも私がいくつUSB-Cアダプタを持ってるかっていうと、MacBookに付いてきたものひとつだけです。USB-Aのプラグなら家中無限に転がっていて、掃除するといつもどこかから出てくるんですけどね…。なのでMagSafeでの高速充電(最大15W)の恩恵を受けようとすると、20ドル(日本価格2,000円)追加して20WのUSB-C電源アダプタを買う必要があります。MagSafe充電器と合計で60ドル(日本だと6,500円)です。しかも充電器もiPhoneも充電中かなり熱くなり、熱くなりすぎると充電が80%で止まります。

私は便利な充電手段ってあれば良いと思うし、今はMophieの3 in 1チャージングドック(iPhoneとAirPods Pro、Apple Watchを充電できるもの)をテストしてます。150ドル(約1万6000円)もしますが、幻のAirPowerには一番近いです。本当はAirPowerがあればベストなんですが、ないんだからしょうがないです。MagSafe Duoチャージャーが発売されたら、それがもっと便利かもしれません。もしかしたらそう遠くないうちに、MagSafe Trioが出てくるかもしれないですし。

まとめると、MagSafe充電器は良いと思うんですが、今は別になくてもいい感じです。

Proじゃなくても満足できるカメラ

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iPhone 12の超広角レンズで、サンタモニカからの太平洋の夕日を撮ったもの。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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超広角+ナイトモードで、霧のロサンゼルスを。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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これも超広角、ゴルフコースから遠くのグリフィス天文台を撮ったもの。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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美しい日没をデジタルズームで撮ってみたんですが、地平線がちょっとモヤっとしちゃってます。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


ここまで見てきた新しい要素すべて、つまりデザイン変更やSuper Retina XDRディスプレイ、5G対応、A14 Bionic、MagSafeは、iPhone 12シリーズ全部に共通してます。iPhone 12とiPhone 12 Proの最大の違いは予想通り、カメラアレイでした。iPhone 12は背面が2眼、つまり1200万画素のメインカメラ+超広角カメラで、iPhone 12 Proにはあるズームレンズがありません。上と下の画像で見られるように、iPhone 12はだいたいきれいに撮れてます。ただデジタルズームを使ったものは、とくに暗めの環境では残念な写真になってます。

でもiPhone 12では、両方のレンズでナイトモードが使えます。iPhone 11だと広角でしか使えなかったので、その違いは大きいです。もやっとした写真にしないためには背景のライティングで試行錯誤が必要ですが、iPhone 12はポートレートモードでもiPhone 12 Proと比べて遜色なく撮れることもあります。下の比較画像を見てみてください。


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iPhone 12の超広角でのナイトモードをロサンゼルスの霧の夕景で試してみました。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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同じショットをiPhone 11で。こちらはナイトモードも超広角もありません。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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こちらは予想以上にうまく撮れた、暗い中でのポートレートモード写真。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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iPhone 11 Pro Maxでの、暗めのポートレートモード。ご覧の通り全然だめです。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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こちらのiPhone 12 Proでのナイトモードポートレートは当然もっとうまく撮れてたんですが、iPhone 12も予想以上に健闘してました。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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iPhoneは日中の自然な色の再現がすごく得意で、このiPhone 12で撮ったハイビスカスもその好例です。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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同じ花をSamsung Galaxy S20 5Gで撮ったんですが、こちらはやけにキツい仕上がりに。Samsungのカメラは色をドラマチックにしすぎる傾向があります。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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iPhone 12の超広角レンズは自然の風景をリアルな色で捉えるのに向いてます。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


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同じ風景をGalaxy S20 5Gで撮ると、もっとコントラストが強調されます。(Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US)


iPhone 12 Proのレビューもこれから出てくるんで、iPhone 12とのカメラ比較をより突っ込んで見てみてください。でも個人的には超広角より望遠のほうがずっと頻繁に使うので、2眼にするなら超広角じゃなくて望遠レンズを付けてくれてたらよかったとは思います。超広角はドラマチックな写真を撮るのには良いんですが、普段使いには望遠のほうが便利です。

ほとんどの人にはiPhone 12がおすすめ

正直、iPhone 12とiPhone 12 Proを比較するなら、個人的には後者が好きです。やっぱりカメラが3眼なのは大きな違いです。でも「別にProにしなくてもなー…」って人は、数万円セーブしてiPhone 12を選んでも十分価値はあります。古めのiPhoneからアップグレードする場合は、カメラのクオリティと全体的な性能でびっくりすること必至です。iPhone 12は、今年だけじゃなく数年経っても十分良いスマホでいられるだけの実力を持っています。

まとめ

・iPhone 12は、ほとんどの人にとってのベストiPhoneです。

・AppleはiPhone 12 Proの機能ほとんどをiPhone 12にも入れてます。5G対応、A14 Bionic、有機ELディスプレイ、リデザインされたボディ、みんな共通です。

・個人的には、2眼の背面カメラのひとつは超広角じゃなく望遠ならよかったと思いますが、どちらのレンズでもナイトモードが使えるようになったのはプラスです。

・5Gはたしかに高速ですが、特定の都市のごく限られた場所でしか使えません。もし使えればLTEより全然速いんですが、言われてるほど高速じゃないです。

・MagSafeは問題なしですが、まだAirPowerを期待しちゃってます。

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