流行の動画ジャンルに政府が介入…。
中国で審議されている法案について、米GizmodoのMatt Novak記者がお気に入りのユーチューバーを例に挙げながらまとめています。
中国で大食いなどの動画の制作者に対して罰金を科す新法の制定が審議されていると、中新社が報じています。提案された法案は、食品ロスを抑えるための広範な法の一環で、中国国内の飲食店に対して食べ残しを出した客には追加料金を請求できるという内容も盛り込まれています。
習近平国家主席率いる中国政府は、国内の食品ロスを減らすため今年の頭に「光盤行動」という名の完食キャンペーンを始めました。同キャンペーンのゴールは「食べ残しはあさましく、倹約は称賛に値する」という社会秩序を作ることだと習主席は夏に語っていました。この新しい法案を破った場合の罰金は1万~10万元(約15.9万~159万円)になるとのこと。
近年、中国ではモッパン(またはモクバン)と呼ばれる大量に飲み食いする様子を配信する動画が大人気。モッパンは韓国語の「食べる」と「放送する」を組み合わせた造語で、英語圏の視聴者の間ではPangzaiさんなどが有名です。彼はTwitterやYouTubeにモッパンを投稿しています。
Pangzaiさんのモッパンは食事を作って食べたり、タバコを吸ったり、アルコールを豪快に流し込みながら、時には彼の人生や家、家族のことを話すといった内容。なかなかワイルドで思わず見入ってしまうんですが、彼は8月に、政府の取り締まりがあるから動画はもう作らないと語っていました。それ以降も投稿していますが、頻度はだいぶ減っています。
この草案について最初に英語で報道したSixth Toneいわく、草案は先週火曜に中国の全国人民代表大会常務委員会に提出されたとのこと。「ラジオ局、テレビ局、そしてオンラインの音声と動画サービスのプロバイダー」が対象になります。
中国では伝統的に多くのごちそうで客人をもてなすのは礼儀正しいこととされており、そこで示される気前の良さは多くのアメリカ人にも通じるものです。しかし、その気前良さが食べ残しの文化を作っており、結果として推定1700万トンほどの食料が毎年廃棄されています。中国科学院と世界自然保護基金(WWF)からの研究によれば、その量は少なくとも3000万人(およそテキサス州の人口と同程度)の1年分の食糧に相当するとか。
食品ロスを減らすというアイデアには賛成ですが、これは中国政府による行き過ぎた行為のようにも思えます。前述のPangzaiさんの動画をご覧いただければわかりますが、食べ物も飲み物も粗末にしていませんからね。
彼はエクストリームなビールの飲み方を披露しながら、自分の人生をネットにシェアしているだけ。
アメリカの主流報道機関が中国について否定的な報道ばかりをするなかで、中流階級であるPangzaiさんの動画は中国文化と国外のネット民たちとの架け橋になっています。悲しいかな、何もビールのトルネード飲みで諸外国と外交をしていたわけではありません。 もしこの新案が通過されたら、彼の活動は違法になってしまいます。
I'm sorry, my friends. I've been very busy lately. I haven't updated the video. I miss you. Cheers. pic.twitter.com/gOzqGLt4fs
— Pangzai (@hebeipangzai) December 1, 2020
中国のサイバー警察は最近、食品ロスを根絶しようとして1万3000ものモッパン動画アカウントを閉鎖したばかり。Pangzaiさんは今月頭に復活した後もTwitterアカウントにモッパンの投稿を続けていますが、この法案が通ったらどうなってしまうのでしょうか…。
Source: China news, YouTube(1, 2), uproxx, Sixth tone, NY Times, Pew Research Center, Twitter, South China Morning Post,