写真の楽しみを、思いもよらぬ角度から拡張するカメラでした。
本日12時よりクラウドファンディングがスタートした、キヤノンの新しいコンセプトカメラ「PowerShot PICK」。記事執筆時点で3,900%という圧倒的な出資額を集めていて、このエッジーなカメラに期待を寄せているファンは多いと見受けられますねぇ。
早速ハンズオンと参りましょう。「PowerShot PICK」で知っておくべきことは、自動追従、自動撮影、キュートなルックスの3点。可愛いは正義ですから。
※今回はお借りしたのは試作機です。そのため、製品版とはちがいがある可能性があります。
静か〜に追いかけてくる、小さな撮影者
キヤノンいわく、本機は「思い出フォトグラファー」とのこと。カメラって撮影者がいて初めて機能するものですが、それだと撮影者が画角に入れない。スマホのカメラロールを遡っても、どうしても誰かが欠けている。そんな状況をどうにかできないかというのが、開発の背景にあります。
「PowerShot PICK」は、手のひらサイズの本体にキヤノンの映像処理技術を凝縮。自動で人を検知・追従・撮影までを行ない、光学3倍(+デジタル4倍)のズームも備えた、見た目によらずガジェッティーなカメラなのです。カメラ本体にシャッターボタンはありません。
実際に動く様子はこんな感じ。まず驚いたのはその静寂性です。赤ちゃんもぐっすり眠れるほど静かで、とても滑らに回転します。回転の速度もほどよく、広角な画角と相まって撮影範囲は広そう。
窓際に設置した「PowerShot PICK」から撮影した画です。センサーは1/2.3型CMOS、レンズは35mm換算で3.4mm-10.2mm、F2.8-F5.0。詳しいスペックシートはMakuakeページの下部に。
顔認識と追従の精度も確かめてみました。「PowerShot PICK」を前に編集部の神山さんが踊ってますが、「PowerShot PICK」で撮影したビデオを見るとこんな具合。
おお、かなりしっかり追いかけてくるじゃあないの! さすが、EOSシリーズで培った認識技術ですな。
自動撮影ってどんな感じになるの?
「PowerShot PICK」の具体的な使い方は、電源を入れてWi-Fi経由でアプリと接続するだけで準備完了。あとはアプリを落として、何もしないでOKです。本体はバッテリーでも駆動しますが、据え置きで使う場合はType-C端子にアダプターを繋いでおくかたちになるかと。
「PowerShot PICK」は自動で周囲をキョロキョロして、人を見つけると適当なタイミングで静止画やビデオ(最大30秒)を撮影します。試した感じだと、マスク無しの方が「勝手に撮影してくれる率」は高く感じました(口元がシャッターチャンスの評価に関わってるのかも?)。撮影時は音が鳴るので「あ、撮影してるな」というのはわかります。設定で音を消すことも可能。
また、アプリから遠隔カメラのように撮影することもできまして、アプリ側でカメラの向きをグリグリと変えられるのがまた面白い。というかアプリの出来が良く、自動撮影だけでなくアプリを使った撮影も快適で、かなり楽しめました。実用性あります。
キヤノンの人いわく、「PowerShot PICK」の撮影は数撃ちゃ当たる戦法だそうで、ベストショットじゃあない写真も含めて、とにかくたくさんの写真を自動で撮っているとのこと。その中からベストなものをオススメする機能もアプリにはあり、わりとアプリによる体験が大きい気がします。
ボイスコマンドも完備。「ハローピック、撮影して / ビデオを撮って / 他を見て」などの声で、ある程度操作ができます。こんな風に水平を保ったままパンできるのも面白い。ついふざけたくなっちゃうやね。
みんなのお顔、学習します
自動撮影によって同じ人を何度か撮影すると、「PowerShot PICK」はその人の顔を認識し、アプリ側で人物として登録できます。登録しておくと、その人を優先的に撮影するようになるわけです。
登録した人物への名前付けも可能。この人物登録ですが、どうも自動での撮影じゃないとだめなようで、アプリ側から手動で撮影するだけでは認識されないようでした(試作機なので製品版では変わってるかもですが)。「PowerShot PICK」自身が「この人はもう覚えた!」となる必要がある感じ。それはそれで我が家の専属カメラマン感がありました。
一度登録された人の認識と撮影率はかなり上がったように感じました。自動撮影の頻度もアプリから変更できますが、せっかく使うなら家族全員の顔は認識させておきたいですね。現状、犬や猫などは認識できないとのこと。できるようになったら愛猫撮影がもそっと捗りそうなので、ソフトウェアアップデートでの追加に期待したいかもしれません。
アクションカム的な応用もあり?
小型で広角、ボイスコマンドで手ぶら撮影できる。これってアクションカムに似てません? というわけで、応用撮影スタイルを考えてみました。
こう、セルフィー的に構えてからの「ハローピック、撮影して」。
なかなか良い感じなのでは? 三脚穴もあるので、ハンドルやミニ三脚を取り付けていればもっと安定しそう。
DJブースの前に置けば、両手で忙しく操作しているDJの表情もバッチリ。ぐるっとレンズが回ればお客さんの撮影もできますね。要は回転する定点カメラなわけで、キッチンでのお料理動画や楽器の演奏動画の撮影にも良さそうです。惜しむらくは、ライブ配信に対応していない点ですかねぇ。
「自分で撮らない」が、知り得なかった瞬間を残してくれる
「iNSPiC REC」や「Powershot ZOOM」など、今までのキヤノンのコンセプトカメラは、尖ってこそいたものの撮影行為を残したカメラでした。が、今回の「Powershot PICK」は、撮影者が介在しないカメラです。この振り切ったエッジーさ、すごく新しい。シンプルに楽しく、今までにない撮影体験でした。
「思い出フォトグラファー」ということで、自然体な表情や日常の生活のなかでふと湧き上がるセレンディピティの記録をキヤノンは提示してますが、例えばキャンプに持っていって定点撮影カメラにしても良いし、何かと応用力が高いと思うんです。自動で追従し撮影してくれて、なおかつ生活になじみやすいカメラなんてポジション、今まで無かった気がしますしね。
ちなみにキヤノンの人いわく、「Powershot PICK」のデザインは、猫が後ろ向きに座っている姿をイメージしたそうな。ちょこんと座ったラウンドシルエットは、確かにちょっと猫っぽい…! ガジェガジェしすぎないデザインだからこそ、普段の生活に添えることができるんでしょう。デザインの勝利!
「え、これカメラなんですか? 可愛いですね! ハローピック、撮影して」
と、おしゃべりの種にもなる可愛らしい「Powershot PICK」は、Makuakeにて4万900円の出資で製品を受け取ることが出来ます。おうちでの思い出を残す方法として、この切り口って実は盲点だったかも。
Source: キヤノン/Makuake