VRの世界の物体に触れられるようになるかも? 東京大学の研究チームが論文を発表

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  • author Andrew Liszewski・Gizmodo US
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VRの世界の物体に触れられるようになるかも? 東京大学の研究チームが論文を発表
Gif: YouTube - ShinodaLab

実際に触れられたら、仮想空間は現実にかなり近くなる!

バーチャルリアリティを現実に近づけるための究極のゴールは、ユーザーがVRの世界の物体に触れられるようになることです。スタートレックのホロデッキ(現実と変わりない架空の空間を作り出す装置)を実現するにはもう少し時間がかかりそうですが、東京大学の研究チームは、VRユーザーが手を伸ばせば物体に触れることができそう! と思わせる、超音波で操作する風船の実験を行なっています。

魅力的なバーチャルリアリティに必要なのは、ユーザーをあらゆる体験に没入させることや、現実世界で同期化された物理的なインタラクションを実現させることで、それは非常に複雑です。物体をユーザーの手の動きに合わせることだけではなく、ユーザーの邪魔になったり怪我をさせたりしないように、素早く移動して位置を決めることも必要ですね。

スタートレックでは、一瞬にしてどこでも現れたり消えたりするホログラムの力でこの問題を解決しましたが、その技術は未だSFの世界のものであり、現実になるにはあと何世紀もかかりそうです。

Video: ShinodaLab/YouTube

2020年12月に開催されたSiggraphAsiaカンファレンスで発表された東京大学の篠田・牧野研究室チームによる「空中でのハプティクスインタラクションのためのバルーンインターフェース」の論文では、360度に配置した複数の超音波フェイズドアレイを使用して風船を浮遊させ、正確にその位置を制御するための音波を生成する研究が示されています。機材はバルーンの位置と、バルーンを操作する人の位置の両方を追跡するための高速ステレオイメージングカメラも含みます。

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Gif: ShinodaLab/YouTube

仮想空間にいるユーザーが、手を伸ばして仮想オブジェクトとして触れて感じる体験が実現できそうです。

バルーンは、仮想オブジェクトと位置を合わせて素早く再配置することができ、タッチインタラクションの感覚を提供します。バルーン自体の重さや硬さ、質感がバーチャルオブジェクトと相関していなくても(例えば、バーチャルのレンガの壁に触れてもバルーンはその触感と一致しない)、どんな触感でも体験できるという事実は、VRの信頼性を高めるのに役立つはずです。

ヘリウムバルーンを利用するもう一つの利点として、VRユーザーの予測できない行動によって、誤って風船にぶつかったりしてもダメージがないというところです。バルーンが叩き落されるだけで、すぐにバルーンを別の場所に再配置することができます。バルーンを物理的なタッチインタラクションを再現できるように設計されたロボットに置き換えた場合、ロボットとユーザーが偶発的に接触した場合、安全上のリスクがありそうです。

このアプローチによって、リアル「ホロデッキ」になる可能性は低そうですが、ワイヤーやその他の支持構造が必要なく、物体を動かすために音波を利用することは既存の技術を巧妙に応用していると思います。テクノロジーの進化によって空気よりも軽いオブジェクトを操作できるようになるかどうかはわかりませんが、研究開発がさらに進んで新しい可能性を開拓してくれることを期待したいですね。