アインシュタインが、鳥とハチについて熟考した未発表の手紙

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  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
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アインシュタインが、鳥とハチについて熟考した未発表の手紙
Image: Shutterstock

アインシュタインはやっぱりすごかった。

1949年、当時70歳だったアルバート・アインシュタインがイギリスのレーダー研究者のGlyn Davysさんに手紙を送りました。でもその内容は物理でもレーダーでもなく、鳥とミツバチの磁場知覚能力についてでした。

この手紙は学術誌「Journal of Comparative Physiology A」に掲載されたもので、いまは亡きDavysさんの奥様がリサーチチームに手渡し、それが掲載されたという流れ。アインシュタインが宇宙だけでなく、自分の身の回りの小さな物理にも興味を持っていたことをよく表している手紙だと言えます。ノーベル賞を受賞しているミツバチ研究者Karl von Frisch氏と会話した後にアインシュタインは動物物理について考えたようです。というのも、von Frisch氏がプリンストン大学で動物についての講義をおこなったのと同じ年にこの手紙が書かれているからです。

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Image: Dyer et al. 2021, J Comp Physiol A / The Hebrew University of Jerusalem via Gizmodo US


von Frisch氏の称賛すべきすばらしい調査については存じ上げています。でもこの調査結果を基本的な物理学に応用する方法が見つからないのです。ミツバチの行動を通して、ミツバチの新しい感覚認知が発見されたりした場合のみ可能だと考えられます。渡鳥と伝書鳩の行動調査が未知の物理的プロセスへの理解へと導いてくれると考えてもいいでしょう。

敬具

アルバート・アインシュタイン

手紙の中でアインシュタインはvon Frisch氏のミツバチ研究について「称賛すべき」と評していて、動物の知覚を研究することは新しい物理のヒントにつながると感想を書いています。

「アインシュタインが動物の知覚から新しい物理が見つかる可能性があると提案してから70年の月日が経っていますが、動物の航海や飛行と物理学の基本原理の理解を後押しする発見がされてきています」と話すのはメルボルン大学の研究者Adrian Dyerさん。Dyerさんのチームはvon Frisch氏が1949年におこなった講演のあと、アインシュタインが実際にvon Frisch氏に会って話をしたことを突き止めました。

現在の研究で動物の行動や飛行については物理学が大いに関係していることがわかっています。例えばウミガメは磁場を読み取ることができ、鳥も同じように磁場を察知して飛行していることがわかっています。70年も前に動物の研究が新しい物理学に生かせると紐付けていたアインシュタイン、やっぱりアインシュタインですね。