シート下を通り抜ける穴が空力のカギ。時速400km/hで走れる2輪駆動EVバイク「WMC250EV」

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  • author 岡本玄介
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シート下を通り抜ける穴が空力のカギ。時速400km/hで走れる2輪駆動EVバイク「WMC250EV」
Image: WHITE MOTORCYCLE CONCEPTS

ボディーを貫くトンネルのような穴。

既存の常識をブチ壊し、革新性と空気力学を効率的に突き詰める、イギリスのスタートアップ企業White Motorcycle Concepts社が、政府からの資金援助を受け、前後2輪駆動時速400km/hを叩き出すという爆速EVバイク「WMC250EV」を作りました。

デッカい穴の「V-Air」システム

その特徴は、とにかく前輪上部からライダーのいるシート下を後輪に向かって風が抜ける空洞。このデザインは「V-Air」と呼ばれ、空気抵抗を69%も抑えるだけでなく、ダウンフォースを生み安定性を高めることに成功しています。

Video: White Motorcycle Concepts Ltd/YouTube

カーレースのノウハウをEVバイクに投入

このデザインを考案したのは、ロバート・ホワイト氏。彼は過去25年間、イギリスのレーシングチームであるプロドライブや、ル・マン・プロトタイプ、オーストラリアのスーパーカーズ選手権、FIA 世界耐久選手権、メルセデスのF1カーなどに関わってきた人物で、4輪車のノウハウを2輪車に使ってみようというと挑戦が始まったのでした。

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Image: WHITE MOTORCYCLE CONCEPTS

前後輪にふたつずつのモーターを搭載

一般的なバイクはたとえ電動であっても後輪が駆動するようになっています。ですが「WMC250EV」は後ろだけでなく、前にもふたつの20kWモーターを搭載しており、このシステムは「D-Drive」と名付けられています。更には前輪に回生ブレーキもあるので、減速時のエネルギーを電力に変換することも可能になっています。

Video: White Motorcycle Concepts Ltd/YouTube

後輪は30kWのACモーター2基ということで合計60kW。そこに前輪の合計40kWを合わせると、全部で100kWという計算になります。バッテリーは15kWhと控えめで、その重量は300kgにもなりますが、馬力は134bhp。ホワイト氏は最高時速402km/h以上で世界最速が狙えると考えており、今年後半の記録を踏まえて来年にはウユニ塩原でのテストを行う予定とのことです。

Video: White Motorcycle Concepts Ltd/YouTube

電動バイクだからこそ成し得たデザイン

こうしたデザインは、モーターが車輪と一体化しており、バッテリーが車体の一番下に置かれているEVバイクだからこそ可能になりました。しかし、前輪をスイングアームにするのは良しとしても、ハンドルの切り替えを油圧ホース1本に集約し、カウルの内側をグルっと通したのは英断だったろうなと思います。

EVバイクはこうした構造を活かして、どんどん革新的でエアロダイナミックなものが出てくると面白いですね。また同社は前2輪で後ろ1輪の「WMC300FR」という新型車についても計画を進めています。こちらも期待したいところです。

Source: YouTube (1, 2, 3), WHITE MOTORCYCLE CONCEPTS via TopGear, NEW ATLAS