トイレ故障アラームが鳴る220億円宇宙の旅

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トイレ故障アラームが鳴る220億円宇宙の旅
Image: Inspiration4|宇宙でパチっ

一番考えたくない宇宙旅行の現実

史上初、民間人オンリーの宇宙飛行として話題を振りまいたInspiration4ミッションでは、クルー4人が無事3日間の周回旅行を終えて米時間18日夕、フロリダ沖にパラシュートで帰還しましたが、実は地球の590km上空の軌道を50周しているさなかにトイレ故障アラームが発動してヒヤッとなる一幕があったようです。

地上でも宇宙でもトイレは待ったなしなので、SpaceX(スペースX)の有人宇宙船クルードラゴンには微重力状態に最適化したトイレが設けられているのですが、ここに「メカニカルな問題」が生じてアラームが鳴り、幅4mの船内にしばし緊張が走ったのだといいます。

アラーム音で何らかの「重大」な異変が起こっていることはすぐわかったものの、最初は鳴る理由もよくわかりませんでした。ふつうならパニックしてしまうところですけど、そこはそれ。何ヶ月も訓練を積んできた成果もあって、だれひとり平静を失うことなく地上管制ルームと相談しながら異常の原因を突き止めて対処できたと、司令官役を務めたジャレッド・アイザックマン(Jared Isaacman)さん(Shift4 Payments創業者兼CEO。全員の旅費を拠出)はCNNに話していますよ。

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Video: SpaceX/YouTube

何が壊れたの?

気になるのは具体的な故障の中身ですよね。

無重力空間では排泄物が全方位的に浮遊しますので、SpaceXのクルードラゴンの排泄物管理システムでも、プカプカ船内を彷徨うようなことのないよう、排泄時に壁のファンをしっかり回して吸引し、安全な場所に廃棄する構造になっています。トイレ中はカーテンで間仕切りするためプライバシーも大丈夫。完璧とは呼べないけど、アポロ時代のトイレ袋に比べたら大進化です。ただ今回はこのファンのところに問題が生じてしまったみたいなのです。

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はさみが浮く船内。右上に見えるのがクルードラゴンの排泄物管理システム。写真は今年4月のISS飛行飛行ミッションのときのもの
Image: ESA/NASA–T. Pesquet

アポロ10号みたいな最悪な事態にはいたっていない

イーロン・マスクCEOはTwitterでトイレの不具合発生の事実を認め、改善を約束。Scott “Kidd” Poteetミッション総括責任者も完了後の記者会見で言及したので別に隠しているわけではないのですが、詳細が明らかにされなかったことから、船内をうんこがただよう最悪の事態アポロ10号で発生)が起こったのではないかとの懸念も持たれていました。

が、「それはなかった」とアイザックマンさんはきっぱり否定。宇宙のトイレ事情は厳しいものがあるので、「あまり誰も多くを語りたくないのだ」というお話でした。まあ、アイザックマンさんには宇宙旅行を機に小児科病院に寄付を集めて、がん・白血病研究に貢献するというもうひとつのミッションもありましたからね。そちらは立派に目的を遂げられたもようです。

むしろ辛かったのは地上との連絡が頻繁に途切れたことです。CNNに語ったところでは「周回中、だいたい10%の時間は地上と連絡が途絶えていた」そうな。また、がんサバイバーのHayley ArceneauxさんはPhenergan注射液を打って宇宙酔いを抑えながらの参加となりました。宇宙酔いはプロも経験する宇宙適応症候群なので、それに罹ってしまったんでしょう。

宇宙の旅はロマンもあるけど、トイレが故障することもあります。これから宇宙へ行く人は知っておかないと。