2021年いちばん記憶に残った取材:ランニングシューズの未来

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  • author 山田ちとら
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2021年いちばん記憶に残った取材:ランニングシューズの未来
Photo: 山田ちとら

カーボンフットプリントという新たな価値観。

今年の6月にAllbirds丸の内店がオープンしました。 同時に、Adidasと共同開発したパフォーマンスシューズ「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」を発表。競合とも言えるメーカー同士がお互いのノウハウを分かち合った結果、一般的なシューズに比べてカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を76%以上も削減できたそうです。

「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」は、ただ環境負荷が軽いだけじゃなくてフットウェアとしても軽く、そして美しい。ランニングシューズの未来を見たような気がして、とても印象的でした。

シューズの開発、Allbirdsのビジョン、今後の展望などについてAllbirds Japanマネージング・ディレクターの竹鼻圭一さん並びにマーケティング・ディレクターの蓑輪光浩さんにじっくりと伺う機会に恵まれたのが、わたしにとって今年もっとも記憶に残った取材でした。

なかでも「カロリー表示のように、いずれカーボンフットプリント表示もあたりまえになる」と聞いて深〜く納得。アメリカで食品のカロリー数が表示され始めたのは30年前だそうですが、いわば「当社のポテチ、こんなにカロリーヤバいです」と宣言しているようなもので、当初は誰もそんな不都合な事実を公表したがらないだろうと言われていたそうです。

カロリー表示は、今ではあたりまえになりましたよね。類似製品を比較する基準になってますし、結果的に消費の選択肢を広げています。同じように、カーボンフットプリントも30年後には消費者の判断材料のひとつとして定着しているかもしれません。ローカーボンフットプリントブームが来たりするのかも。

Screenshot: 山田ちとら

イノベーションがあってこそ環境問題と向き合えるんだなとも思いました。

エコな製品ってどちらかというとガサッとゴワッとしているイメージが強かったんですが、Allbirdsのシューズやアパレルは「わ、これ欲しい!」と素直に思えるステキなモノばかり。

Allbirdsは自称「マテリアルイノベーションカンパニー」。まず素材のイノベーションがあり、その上にプロダクトが立脚するという考え方で商品を作っているそうです。原材料はサトウキビユーカリの木や、今までゴミとして捨てられていたズワイガニの殻!と伺って目からウロコが落ちっぱなしでした。

よくよく考えてみれば、人類がプラスチックなどの石油由来の素材でできた製品を使い始めたのはつい最近のこと。それまでは自然由来の素材でできた服をまとい、靴を履いていたわけですよね。 自然にこそ最適解がある。そしてその答えを見つけ出すためには技術的なイノベーションも必要ですし、地球環境、ひいては生物多様性を守る必要もあると気づかされました。

Allbirdsは「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」という大胆な目標を掲げています。このままCO2排出量を削減できないままだと、気候変動に歯止めをかけられないどころか後戻りできなくなってしまう。そうはわかっていても、問題があまりにも複雑すぎてどこからアクションを起こしていいのかわからなかったのですが、竹鼻さんと蓑輪さんの「簡単なところから始めればいい」というメッセージに励まされました

選択して買い物するだけでもちょっと貢献できるんだって思えば、ライトにアクションを起こせます。

「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」は現在人気すぎて抽選販売のみなんですが、2022年春から本格的に販売開始される見通しで、なんと新色が出るらしい!!ああ、春が待ち遠しい〜〜。

変化はいつだってスモール・ステップ。冬至を過ぎて日が少しずつ長くなっていくように、Allbirdsのサステナブルなものづくりも着々と幅を広げ、より社会に浸透していったらいいなと思っています。

Photo: 山田ちとら
Reference: Allbirds 2020年サステナビリティレポート(PDF)