アメリカで悪さしている外来種ワースト9

  • 146,670

  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
アメリカで悪さしている外来種ワースト9
ペンシルベニア州で目撃されたシタベニハゴロモ(幼虫)
Photo: Philippe Gerber / Getty Images

アメリカに存在する多種多様な生態系はそれぞれ繊細なバランスを保っていますが、侵略的な外来種がそのバランスを崩壊させているようです。

人間は周辺の環境を変えることと無縁ではなく、周りの動植物に害をもたらすことも多いです。こうなるのは、ビルや駐車場のために場所を空けようと森林を伐採して物理的に景観を変えたとき(ビスコース・レーヨンの生産時もそうです)。しかし、植物や動物の品種を意図的もしくは無自覚に世界の新たな地域に持ち込んでしまったときもそうなります。侵入した先の生態系の繊細なバランスを覆しかねません。

侵入生物は在来種を一掃し、作物を破壊し、そしてほとんどの場合、めちゃくちゃにしていきます。アメリカだけでも侵略的外来種による被害は毎年、1200億ドル以上にのぼります。遥か遠い地からアメリカへとたどり着いた、厄介な侵入種をまとめました。

プリペット

Privets
Photo: Roel_Meijer / Getty Images

葛は、特に米国南部において悪評の高い侵入種の1つかもしれませんが、言われるほど害悪ではないかもしれません。それほど有名ではないプリペットの方が、南部で害をもたらしているようです。

この低木はイボタノキ属に属します。害がなさそうに見える被子植物で、元々は観賞植物としてアジアから持ち込まれました。しかし米国には低木の在来種が少なかったため、プリペットはすぐさま野外に定着するようになったのです。その爆発的な成長は他の植物の個体数を縮め、蝶や他の昆虫など在来送粉者にも影響をもたらします。

チャイニーズ・プリベット(あるいはコミノネズミモチ、学名Ligustrum sinens)というおそらく最も有名な品種は、農務省に「南部において最悪な侵入植物の1つ」と評されています。それだけでなく、この植物は二酸化炭素が多いとよく育つとのこと。米国の現状からすると、将来的にプリベットはますます厄介者になりそうです。

カワホトトギスガイ(ゼブラ貝)

ZebraMussels
密集してるカワホトトギスガイ
Photo: Getty Images

カワホトトギスガイ(学名Dreissena polymorph)は殻の黒い縞模様からゼブラ貝とも呼ばれており、1980年代後半に五大湖で初めて発見されました。大型船舶が排出するバラスト水を経由して、アジアのカスピ海から来たようです。それからというもの、科学者たちは食い止めようと必死になってきました。この二枚貝はいったん新たな淡水の水源地に達したら、在来の二枚貝を追いやって壊滅させます。それに彼らは水処理設備や発電所の取水管をふさぐほど大量に繁殖するのです。

これまでのところ、彼らの生息は米国の東半分のみに限られていました。しかし昨年当局は、カワホトトギスガイが21の州で家庭用アクアリウム用として販売されているマリモに付着していたという憂慮すべき発見しています。この発見によって複数の関係機関とペットサプライ業界は、マリモの中にカワホトトギスガイを見つけたに対して目撃例の報告と貝の安全な廃棄を呼びかけることになりました。


フタトゲチマダニ

220122species4
Haemaphysalis longicornisマダニの雌の成虫の裏側
Photo: James Gathany/CDC

合衆国にいるマダニはライム病の原因となるものなど多くの細菌を媒介することから、すでに公衆衛生の大きな脅威となっています。ですからニュージャージー州の研究者たちが2017年に新種のマダニ、フタトゲチマダニ(学名Haemaphysalis longicornis)を発見したという発表は、あまり良い知らせではありませんでした。このマダニは合衆国にやってきたペットや他の動物の背に乗ってたどり着いたのでしょう。それ以降ニューヨーク州、ジョージア州、テネシー州を含む17の州で観測されています。

フタトゲチマダニは急速に単為生殖できて動物に群がって吸血するので、家畜への脅威です。ですが、人間にどの程度害を及ぼすのかは現時点ではあまり分かっていません。このマダニは元々の生息地では人間の病気を引き起こす細菌をもたらし運べたものの、それらはライム病の主な原因にはならず、人間の皮膚をそれほど望んでいないかもしれないと初期の研究は示唆していました。それでも、生息範囲はやがて米国の半分に広がると予測されていますし、ロッキー山紅斑熱のようにマダニから伝染する病を広めうると示唆する別の証拠があります。

シタベニハゴロモ

SpottedLanternflies
Photo: Shutterstock

芋虫にゾワっとしたり不快感を抱いたりすると、潰してしまいたい衝動にも駆られることもあります。専門家と野生生物局員が心からその欲求を奨励することはめったにないですが、シタベニハゴロモ(学名Lycorma delicatula)に関しては駆除を奨励しているのです。

原産地の中国南部、台湾とベトナムの各地から、2014年頃にペンシルベニア州にやってきたと考えられており、それ以来、この印象的な見た目の虫は北東部全体に広まりました。人間に害はありませんが、果樹や他の農作物を荒らすだけでなく、植物の成長を阻む粘性のあるを残してもいきます。この虫の卵は、私たちの靴や衣服といった面にいとも簡単に付着してさらに広まっていくのです。

昨年の夏に状況があまりに悪化したため、ニューヨークとペンシルベニア州の職員らはシタベニハゴロモを見かけたら踏み潰すようにと住民たちに通告し、大勢が実行した模様。しかし一般的には、化学殺虫剤で抑制されています。

野生化したブタ

wildferalpigs
Photo: Jeremy Woodhouse /Getty Images

野生化したブタ(学名Sus scrofa)は1500年代には食料源として、1900年代には狩猟用の家畜として、大規模な移住の際に米国へ持ち込まれました。裏庭にやってくる野生ブタはミーム化していますが、全米各地の生態系にとっては深刻な脅威となっています。アメリカ国内だと、南東の塩性湿地にある二枚貝への激しい飢えがゆえに同地域を荒らし放題。そして世界的に見ると、土壌を掘り返すことで二酸化炭素を大気中に放出してしまうため、温室効果ガスの排出に驚くほど大きく貢献しているのです。ごくまれに、ブタたちを食べる狩猟者に危険な感染症を広めることもあります。

野生ブタはネットの世界では猫と犬に次いで気に入られている動物ですが、現実はそうはいかないものですね。

ビルマニシキヘビ

BurmesePythons
Photo: Shutterstock

フロリダ州にいる恐ろしい生物で最も有名なのはアリゲーターかもしれませんが、この貴重な生態系への真の脅威は増えつつある外来種のビルマニシキヘビです。

ビルマニシキヘビは捕らわれていたペットが意図的あるいは偶発的に放たれたために、この地域に持ち込まれた可能性が高いです。どんな経緯で南フロリダの大自然に行き着いたにせよ、彼らは大問題となりました。このツルツルとしたヘビが南フロリダのどこに定着したとしても、餌にされた動物たちの地域個体数は減少。アライグマ、オポッサム、ボブキャットの個体数はこのニシキヘビが長く住み着いた地域では1997年以降およそ90%かそれ以上減っていたのです。ヒメヌマチウサギ、ワタオウサギとキツネなど他の動物は消えてしまいました。

昨年、このニシキヘビはエバーグレーズ北部の野生生物保護区で初めて目撃されており、蔓延しつつあるという憂慮すべき兆候です。

アジアンカープ

bighead-carp
コクレン
Photo: Shutterstock

カープ(コイ)はヨーロッパとアジア原産ですが、100年ほど前に合衆国に広まってから厄介者となっています。近年のコクレン、アオウオ、ソウギョとハクレンなど新たな品種の移入で頭痛の種が増えました。

こういった魚類は養殖されるために、米国へと一般輸入されます。しかし洪水や不慮の放出によって、野外へこぎつけたのです。この非常に飢えた侵略者は、資源のために他の固有種を打ち負かし、USDAの言葉を借りるなら「環境破壊の痕跡を残していく」そう。今のところ、カープの影響はほぼミシシッピ川に限られていますが、たくさんの支流に繋がっているため、影響はそこで止まらないかもしれません。

アメリカフクロウ

BarredOwls
Photo: Shutterstock

アメリカフクロウは、侵入種の興味深い例です。その原産は実は北アメリカの東部。しかし20世紀を迎える頃、人間の活動が周辺の環境を劇的に変えてしまったためにこのフクロウは西へ拡大したと強く疑われています。そして拡大したアメリカフクロウは、太平洋岸北西部と最近ではカリフォルニアに生息していてすでに絶滅が危惧されている北マダラフクロウを圧倒し始めたのです。

近年、オレゴン州はアメリカフクロウの排除が北マダラフクロウの盛り返しに一役買うかどうかをテストするプログラムを始めました。排除することによって地域のフクロウの生息数における長期的な減少に歯止めをかけたようで、今までのところ励みになる結果が出ています。マダラフクロウには全体的な生息域の喪失など他にも対処すべき問題があるものの、絶滅の危機にあるフクロウに対して多くの問題を生じさせてきた人間がその1つを解決できるかもしれません。

オオスズメバチ

AsianGiantHornets
Photo: Shutterstock

米国にはたくさんの侵入生物種がいますが、「殺人スズメバチ」ほど刺激的なあだ名をつけられる品種は珍しいです。正式名称はオオスズメバチ(学名Vespa mandarinia)。

このデカい厄介者は、貨物コンテナの中に紛れてまずはカナダにやってきました。人間を脅かす存在ですが、その残忍な評判は彼らが餌食にするミツバチへの蛮行のためです。たった数匹のスズメバチが巣全体を数日で壊滅させ、多くの場合はミツバチも大量に殺すのです。おまけに彼らに刺されるのは「赤く焼けた針で刺される」ように感じると報告されています。殺人スズメバチの本来の生息範囲にいるミツバチは防衛手段を進化させましたが、米国にいるミツバチにそんな機能はなく、すでに減少しているミツバチの個体数がさらに打撃を受けるのではないかという懸念が上がっています。

これまでのところ事例報告がたくさん上がっているものの、オオスズメバチの目撃例はワシントン州に限られていました。昆虫学者は発見した巣を根絶できていたかもしれないですが、全米へと拡大するのも時間の問題のようです。

Source: U.S. Fish & Wildlife Service(1, 2, 3, 4, ), Smithsonian magazine, The Wildlife Society, National Invasive Species Information Center(1, 2,), Agricultural Research Service, U.S. Geological Survey(1, 2, ), Journal of Medical Entomology, CDC, First Detectors, abc27 News, USDA Animal and Plant Health Inspection Service, The A.V. Club, Field & Stream, National Geographic,