次世代のXRを牽引するのは誰だ? 「NEWVIEW AWARDS 2021」受賞者決定!

  • author Jun Fukunaga
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次世代のXRを牽引するのは誰だ? 「NEWVIEW AWARDS 2021」受賞者決定!
Image: 『My Painting World』Yuhi Namai

次世代XRの担い手、決まりました。

「メタバース」というキーワードがバズになり、コロナ禍で加速したXRのギアがもう一段階上がった感ある昨今。ギズモードでも、VR音楽フェスやVRレストランなどを取材したり自前でVRコンテンツを制作してみたりと、このムーブメントに注目しています。

そんななか、3次元空間での新たなクリエイティブ表現と体験のデザインを開拓するプロジェクト「NEWVIEW」によるファッション/カルチャー/アート分野のXRコンテンツアワード「NEWVIEW AWARDS 2021が開催。

ギズモード・ジャパンもメディアパートナーとして参画した本アワード、そのテーマは「ポストリアリティとノーノーマル」。「真の多様性が生み出すXRの世界には、標準や基準、規範やスタンダードは存在しない」という概念を軸に、あらかじめ「超越」「逸脱」「変質」という3つの評価軸が設けられていました。

VR/AR/MRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を使った作品が、15ヶ国から152作品応募され(AR:43作品、VR:97作品、MR/XR:12作品)、ファイナリストとして26作品が選出されていましたが、本日映えある受賞作品が発表となりましたので、一部をご紹介しましょう。


GIZMODOプライズ 受賞作品:『My Painting World』Yuhi Namai

あまり絵心がない筆者でも、その昔クロード・モネによる名絵画『睡蓮』を見たときにはなにかとてつもない波動のようなものが込み上げてくるような体験をしたことがあります。そのときは、なんだったらもう絵画の中に入り込んでしまいたいと思ったものですが、Yuhi Namaiさんによる『My Painting World』は、そんな願望を叶えてくれるXRならではの作品です。

やさしいタッチで描かれた美しい街並みに全身でダイブできる本作では、どなたでも絵画の世界の住人になることができます。まさに夢が実現する感じがあって良いですよね。

世間はメタバース、NFTはとにかく金になる!!との大狂騒曲。ノイズだらけのVRテクノロジーをめぐる喧騒の中で、なんだかほっとしてしまうような牧歌的、かつとても真面目な作品と感じました。そんなことを抜きにしても、このナラティブ(物語)的なアプローチは魅力。個人的には、東京ディズニーシーのような物語世界にいくと、この街角の片隅でずっとひっそりと生きていきたい、もう帰りたくない、みたいな郷愁に襲われることがあるのですが、このやさしい絵画のような世界も、確実に帰りたくなくなるような吸引力のある名作だと思います。細かい部分の作りこみも素晴らしい!

(ギズモード・ジャパン編集長/尾田和実)


GOLDプライズ 受賞作品:『Neo Tengri』Ardak Mukanova

摩訶不思議な世界観です。でも、癖になる。

Ardak Mukanovaさんによる『Neo Tengri』は、岩面彫刻と古代遊牧民の宗教の「テングリ信仰」をテーマにした作品です。未知のクリーチャーが生息する、“ここではないどこか”感でいっぱいの光景は、文明が崩壊した後に新たに再生していく未来の世界の姿なのかもしれませんし、はたまた現実世界とは別に存在する並行世界の姿なのかもしれません。つまり解釈は自由ってこと。

“誰かが思い描く世界”を形にできるのがXRの魅力であり、それを誰かが別の視点で考察する。そんなアートライクな楽しみ方もまたXRの魅力なり。

カザフスタン出身のArdak Mukanova氏は、モンゴルにおける民俗シャーマニズムに基づく古代遊牧民の宗教、テングリをテーマにVR空間を演出した。氏は、トランスメディア空間のクリエイティヴを得意とするアーティストとして、このテーマとの出会いは必然であったかのように、ヴァーチャル空間においてのミステリアスな世界秩序の構築に成功している。そこに描かれた古代の神々は逸脱し果てたクリーチャーとして、今世紀的ファンタジーを描いている。また、一神教であるテングリの物語は、ヘッドマウントディスプレイでのVR体験によって極めて深い没入感を生み出し、崇高なイニシエーションのような儀式空間を彷彿とさせる。

(NEWVIEW AWARDS 2021審査員長/宇川直宏・現"在"美術家/DOMMUNE主宰)

*その他の受賞作品についてはこちらから見られます。


冒頭でも述べたように、着々と私たちの社会に浸透しつつあるXR。今回の受賞作をはじめ、XRコンテンツが今よりもっと増えていけば、私たちが思っているよりも早く「ポストリアリティとノーノーマル」な世界に到達できそうです。その時が来るのが今から楽しみだな〜。

Source: NEWVIEW