「世界最古の都市遺跡」チャタル・ヒュユク、複雑な埋葬の風習が明らかに

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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「世界最古の都市遺跡」チャタル・ヒュユク、複雑な埋葬の風習が明らかに
35~50歳の男性の人骨で、頭蓋骨には辰砂の顔料が施されている
Photo: Marco Milella

まだ謎が多い古代の風習。

新石器時代の古代都市チャタル・ヒュユクには、死者の骨の一部に顔料を塗り、一度掘り起こした骨を再び埋葬するという複雑な弔いの風習があったことが分かりました。

先日、ジャーナル『Scientific Reports』に掲載された論文は、新石器時代のアナトリア人、具体的には現在のトルコ南中部にある重要な古代遺跡チャタル・ヒュユクの住民についての新たな見識をもたらすものでした。

なぜ埋葬時に顔料を使用したのか?

チャタル・ヒュユクは全盛期には8,000人以上が暮らしていた、「世界最古の都市」だと言われています。この新石器時代の都市は紀元前7100~5950年にかけて存在し、過密化や対人暴力、感染症の蔓延に虫歯の流行、公衆衛生の問題、環境悪化など現代にも通じる多くの問題を抱えていました。チャタル・ヒュユクの住民たちは泥レンガでできた住居に住み、木の繊維から作られた衣服をまとい、人間のを宝飾品として身に着け、籠や縄、ござなどを作っていたのです。

住民たちはまた、壁の装飾と埋葬に色とりどりの顔料を使っていたようです。どちらも同一の建物内で用いられることが多かったとか。研究の共著者でベルン大学の形質人類学学部、犯罪科学研究所の研究員Marco Milella氏は、「こういったタイプの調査結果は別々に研究されてきた」と教えてくれました。「しかしながら、私たちはそれらが関連している可能性に興味をそそられた」とコメントしています。

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男性の頭蓋骨において細長く辰砂を塗られた部分の拡大写真
Photo: Marco Milella

Milella氏たちの研究チームは、この遺跡で使われていた顔料、それらが塗られた方法、そして壁画に存在する色と埋葬で使われた色との間に関係性があるとすればそれの解明を試みることに。

顔料が文化において使われるようになったのは数万年前、いや数十万年前の可能性もあります。中東だと、顔料が葬儀で使われるようになったのは紀元前9000~8000年前に遡ります。今回の研究の著者たちが指摘するように、こういった慣行のこれまでの調査では、再埋葬の前に取り除かれる頭蓋骨など人骨と儀式に関する特異な点に焦点を当てており、このような習わしを工芸品や建築といったコンテクストに結びつけることはありませんでした。最新の研究はそんな潜在的な見落としを克服しようとするものです。

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チャタル・ヒュユクの建物内の幾何学的な壁画
Photo: Jason Quinlan / Çatalhöyük Research Project

遺骨は二次葬の儀式でも使われていた

チャタル・ヒュユクでは数種類の顔料が使われていたことが判明。最も多く見られた顔料は代赭(赤鉄鉱由来の黄色味のある褐色)で、成人(男女ともに)と子供の人骨でも使われていました。鮮やかな辰砂(硫黄と水銀の化合物で褐赤色)は主に男性に、一方で青/緑の顔料は女性と結び付いていたのです。これらの顔料は「死者に直接塗られていたか埋葬に合わせて墓に入れられていたかのどちらか」だとMilella氏は語っていました。

また考古学者たちは、建物内に埋葬された遺体の数と、その建物の壁が上塗りされた回数が一致することも発見しました。「住居の壁は、同じ建物内で埋葬が行われた際に上塗りされていた」と同氏は説明し、個人の埋葬とその空間への色の塗付とのつながりを指摘しています。

チャタル・ヒュユクの人々は、掘り起こされた故人の骨と頭蓋骨がその共同体内で持ち回される二次葬の儀式にも参加していました。こういった遺骨は再び埋葬されるまでしばらくの間、順々に回され続けるそうで、論文によれば二次葬もまた壁の塗装と関連があったようです。

この研究において最も興味深いのは、疑問を提起するも答えてはくれない点だとMilella氏は語っていました。なぜ顔料で彩色された人もいれば、されていない人たちもいるのか、特定の個人の遺体が掘り出され、共同体の中で回された理由もわかっていません。着色されている骨々には年齢や性別と関連はなさそうでした。もし選択基準があるとしても、依然として不明です。

最新の研究は「この新石器時代社会の象徴主義的な世界と生者と死者の間の関係性を深く理解するうえで役立つ」とMilella氏。こういった視覚表現と儀式は、「共通の社会文化的な風習が融合した部分だった」と述べていました。

Source: nature