AppleのiPhoneセルフ修理プログラムが米国から開始

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  • author Phillip Tracy - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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AppleのiPhoneセルフ修理プログラムが米国から開始
Image: Caitlin McGarry - Gizmodo US

ちょっと引っかかるとこはあるけど、修理する権利的には一歩前進。

壊れたiPhoneを自分で修理できる、Appleのセルフ修理プログラム「Self Service Repair」が米国で始まりました。これで、Apple認定修理業者じゃない普通のユーザーでも、iPhone 12・iPhone 13・第3世代iPhone SEの修理に必要なパーツとマニュアルを正規に入手でき、自分で修理できるようになりました。 Appleユーザーにはワクワクですが、やり方には微妙に批判も出ています。

米国・iPhoneから開始

このSelf Service Repair、今のところ米国だけでしか利用できませんが、Appleは他の国にも広げると言っていて、対象製品もおいおいはMacまで含めるそうです。サードパーティの運営らしいのですが、バッテリーやカメラモジュール、SIMトレーといったOEMのパーツを買える専用Webサイト(サイトにApple感がなくてちょっと驚く)も立ち上がりました。パーツの交換に必要なツールも、ごくベーシックなネジとかドライバーのビットから接着剤まで、このSelf Service Repairストアで直接買えます。または買わなくても、Appleはレンタル用のツールセットを用意してて、7日間49ドル(約6,400円)で借りられます。Appleのプレスリリースではユーザーに対し、ストアに来る前にSelf Service Repairのページを見て、直したいデバイスの修理マニュアルを確認しておくように勧めてます。

今のところSelf Service RepairストアにはiPhone 12・iPhone 13・第3世代iPhone SE修理用の200以上のパーツとツールをそろえてるそうです。Macのパーツや、マニュアル、ツールは今年中に追加になるとのこと。パーツはApple公認のリペアショップと同じ価格で販売され、指定のリサイクルできるパーツを持ち込むとクレジットがもらえます。たとえばiPhone 13のカメラモジュールは111.75ドル(約1万5000円)ですが、外したカメラパーツを持ち込んでそのクレジットを差し引くと59.25ドル(約7800円)になります。画面修理は269.95ドル(約3万5000円)とけっこうなお値段ですが、古い画面を持ち込むと33.60ドル(約4400円)差し引かれます。他のパーツはそこまで高くなくて、下部のスピーカーは38ドル(約5000円)、ナイロンのプローブは2.78ドル(約360円)。ただ、Torxのセキュリティビットが13.33ドル(約1700円)だったりするので、お買い得というわけじゃありません。あとこういうパーツのスペックがサイト上に全然書かれてないのもちょっと気になるところ。

修理する権利への方針転換?

AppleがこのSelf Service Repairを発表したときは、独立系ショップに冷たいとか「修理する権利」の敵とか言われてたAppleの大きな方向転換だと受け取られました。Appleは今まで、ユーザーがDIY修理をしないように、または独立系リペアショップを使わないように、誘導したといって批判されてきました。

たとえば、修理する権利のエバンジェリストともいえるiFixitは2019年、iPhoneをセルフ修理したユーザーに対して警告が出てるのを発見しました。iOS 13.1以降、iPhone 11は「このiPhoneで正規のApple製ディスプレイが使用されていることを確認できません」というメッセージをロック画面に表示するようになってたんです。同じメッセージは、iFixitが純正パーツを使って修理したときにも表示されました。このメッセージを消すには、Apple公式認証の技術者のところにデバイスを持ち込む必要があったんです。

現在、問題のメッセージは削除できるようになりましたが、それにも条件があります。iFixitが指摘してるんですが、Appleはシリアルナンバーで承認された修理だけを有効にしてるのです。つまり、シリアルナンバーかIMEI(端末識別番号)を提示しないとパーツを買えないんです。さらにパーツの装着が終わったら、OTAの設定ソフトウェアを使ってパーツとiPhoneをペアリングしなきゃいけません。パーツと本体をペアリングするってことは、あとあとそれをバラして使えないってことじゃないかとiFixitは指摘しています。

「チェックアウト手続きにシリアルナンバー確認を入れ込んだのは非常に悪い兆候で、今後Appleからさらなる修理をブロックできるようにする可能性があります」iFixitのElizabeth Chamberlain氏は書いています。「個々の修理を承認するような技術を作ることで、Appleは今後の修理を承認(または否認)するゲートウェイとして機能しやすくなります。」

まずは一歩前進

そんなわけで、やり方としては理想じゃないですが、AppleのSelf Service Repairが始まったことは、「修理する権利」推進派にとって一歩前進です。最近はGoogleやValve、Motorola、Samsungなどなど他のテック大手もみんなスペアパーツを売るとして、ユーザーが自分でより安価に、都合良いタイミングで修理できるようにすると言ってます。米国のジョー・バイデン大統領も2021年に大統領令を発し、メーカーによる独立系修理の制限を防ぐような草案作りを米連邦取引委員会(FTC)に指示しています。

そんな流れがある中、今回iPhone 11みたいな古めのモデルがAppleのプログラムの対象外なのは残念です。バッテリー交換とかいろんな経年劣化とか、古いものほど修理が必要ですよね。今対象になってる中ではiPhone 12が一番古いんですが、これから次期iPhoneが発売になっても対象外にならないのかどうか、気にしていきたいです。