いつの間にかiPadは教育変革のキーアイテムになっていた

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  • author 大野恭希
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いつの間にかiPadは教育変革のキーアイテムになっていた
Image: 三重県松阪市久保中学校

小学校からプログラミング学べるって、最高にうらやましいですね。

GIGAスクール構想が動き出して約2年が経過しました。2019年度から5年近くかけて環境を整備していく予定だったGIGAスクール構想は、コロナの影響で前倒しとなって進めている学校が増えています。

GIGAスクール構想はみなさんご存じの通り、ICT活用を小中高等学校などの教育現場で実践していく取り組みで、パソコン・タブレットが生徒一人一人に配布され、授業中や帰宅後の学習をデジタル前提で進めていくものです。

学校の視聴覚教室にあったパソコンを取り合いしていたアラフォー世代の僕からしたら、夢のような環境です。(ネットで遊びたかっただけ)

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Image: 三重県松阪市久保中学校

そんなGIGAスクール構想が動き出した背景では、「時代が変化したことで、学びのあり方に対して学校現場の変革が求められている」と三重県松阪市の久保中学校校長先生は言います。

解のない課題に挑戦する力、課題を試行錯誤し、失敗から学ぶ能力が10代の学生に求められていると校長先生。変化の最中にiPadを選択し、教育現場へ導入してどのような変化があったのか、三重県松阪市久保中学校の先生方にお話を聞きました。

コロナによってICT導入は待ったなしの状況に

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Image: 三重県松阪市久保中学校

安定の時代は過ぎ去り、変化する時代へ突入している令和では、学校現場も例に漏れず対応に迫られているといいます。

時代の変化=教育・教職員の変化が求められている中、コロナによって変化のスピードが上がり、ICT環境の整備は待ったなしとなったそうです。オンライン授業をやるにもデバイスがなかったら授業は受けられませんからね。

久保中学校では、2~3年前まではブラウン管テレビが1台教室に配置されていて、パソコン教室にだけ生徒用のPCが用意されている状況でした。それが令和3年度から各教室にはプロジェクターを常設し、生徒・教員には1人1台のiPadが支給されました。

これによって、iPadを使った授業が行なわれるようになりましたが、学校の先生がアナログからデジタルへ移行するにはハードルが高かったといいます。デジタルが得意で興味のある先生を中心に、自主的に試行錯誤し、どのように授業へiPadを導入していくか教員同士で教え合うようになったそうです。

10代の生徒はすんなりデジタルを使いこなせるようになるものですけど、先生方の授業進行が紙からiPadとなれば、それは苦労があっただろうと思います。

多様な選択肢の中でiPadを選んだ理由

GIGAスクール構想が動き出し、デジタルデバイスが学校に組み込まれるようになると、OSは大きく3つから選ぶことになります。Windows・Chrome OS・iPadOSです。

個人でどのOSを使うか?は人によってさまざまな考えがあるので置いておくとして、松阪市では、GIGAスクール構想の前からiPadを市内のモデル校(GIGAスクール導入前に試験的にICT活用を進めた学校)で使っており、GIGAスクール構想の整備によって三重県松阪市ではiPadを導入するのが自然の流れだったといいます。

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Image: 三重県松阪市教育委員会 脇教導主事

それに加えて、iPadは耐久性がよく、9年間モデル校の現場で使ってきた経験・ノウハウがあり、学習支援・研修支援アプリケーションが無料で使えることが導入の決め手だったと教育委員会の脇先生が教えてくれました。 小中高等学校向けのクラスルームアプリケーション、 教育者向けの支援プログラムApple Teacherなどです。

アップルのページにあるように、教育関係のアプリケーションは豊富にそろっています。以外と知られてませんが、アップルは40年以上教育に携わっていて、そのノウハウがiPadやiPadOSにも継承されているのかもしれません。

こういった背景から、iPadを教育現場へ採用することになったのも納得ですね。

動画アプリのClipsを活用したiPadのある授業

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Image: 三重県松阪市久保中学校

授業では、生徒が数学の解答を「Clips」を利用して解説する課題に取り組んでいるそうです。ここでは二等辺三角形の角度の求め方を生徒が話している事例を紹介してくれました。

僕の小中学校時代には、問題の解答を生徒自身が説明する経験はなかったので、まずそこがびっくりでした。問題の解答に対してなぜこうなるのか?を生徒が解説(アウトプット)する過程は、より学びが深くなる手法のひとつですし、有効な方法だと感じます。というか、教育のレベル上がってません......?

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Image: 三重県松阪市久保中学校 湊川先生

久保中学校の数学教員である湊川先生によると、子供達に身につけてほしい力があるといいます。

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Image: 三重県松阪市久保中学校

数学の課題で言えば、見た目が少し変わっても考え方が同じであったり、一見別々の課題であっても共通項を見いだして同じような課題として捉える力です。これは社会でも必要な力ですよね。

こういった力を身につけるのに効果的なツールがiPadで、Clipsというアプリを活用することに行き着いたそうです。Clipsは写真・動画をすぐ取り込めて、フィルター・音楽・文字入れなどの機能が簡単に使えるアプリです。

数学の授業では、生徒が先生になりきって問題を説明し、生徒が動画を使って発信することをゴールとしてループを組んでいるそうです。

「説明する」といっても、どう解説すればいいのか?問題がどういう意味を持っているのか?を自分で考える必要があり、理解していないと説明できません。iPadと数学を使ったうまい課題ですね。

教育現場でiPadを活用することで得られるメリット

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Image: Apple

教育現場でどのようにiPadが導入されているのかを見てきましたが、iPadを使うことでどのようなメリットがあるのかも先生方が教えてくれました。教育委員会の脇先生は、iPadを使う一番のメリットは「発信力が付く」ことだと強調されていました。

さきほどの数学の説明動画の例だけではありません。たとえば生徒会活動の記録を紙で作って配布して終わっていたのが、iPadでビデオを作って多くの人に見てもらおうと工夫するようになり、生徒が活躍できるフィールドが大きく広がったそうです。

また、タブレットで誰かに見せるためにアウトプットを作り、新しいフィードバックを取り入れて改善していく良いサイクルが生まれたと言っていました。

...気になる「YouTubeは校内でいつでもどこでも見られるのか?」という質問にたいしては、制限する機能があるとのことで、自由には見られないようですよ。ちぇっ。

変わる教育現場について、三重県松阪市の事例をもとに取材してきました。アップルでは教育現場におけるiPad活用のヒントを掲載するページがアップされています。教育のアイディアがPDFでダウンロードできるのでぜひご覧下さい。

Source: Apple