ソニーがゲームギア参入! PlayStationあるんだから当然、むしろ遅すぎたくらいですと思いきや、PlayStationだけでなくPCゲームも視野にいれた全方位的ゲームギア。モニターのInzone MシリーズとヘッドセットのInzone Hシリーズ。
今回は、米Gizmodo編集部がInzone H9を触ってみました。感想は「さすがソニー!音とノイキャン最高!だけど…」。だけど、とは一体、見てみましょう。
ソニーのInzone Hシリーズヘッドセットがついに発表されました。ソニーがゲームギアに正式に参入するのはこれが初。レビューとしてInzone H9を使った感想を先にまとめちゃうと、やっぱり初参入端末だなってこと。つまり、ソニーの強みを生かしてはいるものの、ゲームという使用シーンの想定がまだ甘いなと。
Sony Inzone H9
これは何?:ソニー初のワイヤレスPCゲームヘッドセット
価格:3万6300円
良いところ:デザイン、装着感、アクティブノイキャン。
残念なところ:ソフトウェアがいまいち。マイクのクオリティも低い。
PCゲーマーのみなさーん!
見た目のデザインでいうと、PS5の公式アクセサリという印象ですが、作ったのはPlayStationチームではありません。ノイキャンヘッドホン最高峰とも言われるWH-1000XM5の開発チームが手がけています。オーディオファンから絶大な支持を受けるプロダクトチームが作ったとなれば、普通の初参入とは違い、鳴り物入りの大型ルーキー枠です。
チームが違うとはいえ、PlayStationブランドではなく、新たにInzoneというブランドにする必要があるか?という思いはあります。Inzoneヘッドフォンの第1ターゲット層はPCゲーマーなので、差別化したいという気持ちもわかるのですが、「PlayStationヘッドセット、PCゲームでも使えますよ」じゃいかんの?デザインがかなりPS5によってますからそう思っちゃうんです。
マットなホワイトとブラックの2トーンは、一目でPS5を連想します。左右イヤーカップの上部にあるLEDがあるんですが、Bluetooth接続で青に光ります。ゲームギアお馴染みのRGBではなく、ブルーなところがやっぱりPlayStationなんです。
あぁ、そうか。つまりそれが狙いなんですね。自分で言って気づきましたが、ゲームゲームしていないこのクリーンさがいいんですね。好きです。ゲームギアだけどゲームギアぽい見た目ではない、そこがソニーらしいのかもしれません。クリーンなデザインを意識したらPS5に寄っちゃっただけで、寄せたわけではない?
ただ、この白いプラスティックのイヤーカップ、めっちゃ埃をひきつけます&汚れや傷が目立ちます…。ちょっとした汚れは簡単に拭き取れますけど、専用ケースがあったらよかったのにとは思いますね。
ストレスフリーな装着感
イヤーカップ内側のレザーレットのおかげで、見た目の高級感だけでなく、装着感もよし。つけ心地がとてもいいです。メガネをかけていても、柔らかくフィットするので、ヘッドホンしていることを忘れてしまうくらいのノーストレス。イヤーカップのサイズ感も(私的には)ぴったり。左右のバランスもノッチを動かして簡単に調整できるのもよし。重さ約330gという軽量。長時間装着していたもモワっと熱くなりません。家でゲームするなら何時間でも着けていられるし、夏のニューヨークのサブウェイ(モワッモワに暑い)でも、不快感なく着けていられました。
ワイヤレスに必須の機能も盛り込まれています。ヘッドホン自体に、音量ホイール、電源ボタン、Bluetooth接続、ゲーム音量/チャット音量の切り替えスイッチ、アクティブノイキャン(ANC)のスイッチあり。ボタンのコンボ操作(ダブルタップとか長押し)でタスク発動するパターンもありますが、それだと忘れちゃうし、間違いやすい。独立スイッチだと、使い始めてすぐからわかりやすくて好きです。
マイクはよくあるタイプ。左からアームがでているブームマイクです。このマイクの存在によって、外(電車など)でヘッドフォン使いするとちょっと恥ずかしい気もするのですが、ゲームギアと思えば当然の仕様です。マイクを上にあげておくとミュートになるというのも、ヘッドフォンの物理スイッチ同様にわかりやすくてよき!
Inzone Hシリーズは3モデル
Inzone Hシリーズには3モデルあります。今回レビューしたのは、最高位モデルのInzone H9。ざっくりスペックと価格をいうと、Inzone H9はBluetoothと2.4 GHz接続対応で、アクティブノイキャンあり。バッテリー持ちは32時間で3万6300円。Inzone H7は、接続はH9と同じでアクティブノイキャンなし、バッテリー持ち40時間で2万8600円。Inzone H3は、有線かつアクティブノイキャンなしの1万2100円。機能と価格にはかなり幅があるものの、音質では大きな差を感じません。H9のレビュー期間中に、H3も使ってみましたが、ANCとワイヤレスがないだけで、音響体験としてほぼ同じに思いました。
ソニーといえばノイキャンだ!
見た目のPS5感から、ソフトウェアも同じ?と思ってしまいますが違います。そこもPlayStationブランドではなく、Inzoneブランドならでは。(PS5のTempest 3Dオーディオエンジンには対応。)Inzone最大の狙いは、最高峰のANCと空間オーディオ技術のコンボをユーザーがカスタマイズし、ゲーム業界でWH-1000XM5の地位を築くことです。
実は、ゲーミングヘッドセットにノイキャンはちょっと贅沢な装備。家のデスクトップでプレイするPCゲーマーにとって、没入感は重要な一方、ノイキャンはマスト装備ではありません。冷却装備の方が重要なので、私はマシンのすぐ横にエアコンがあってそこそこうるさくはありますが、むしろあの音がホワイトノイズとなり集中できるような気も。とはいえ、アクティブノイキャンがあるならそれにこしたことはない!
H9は、ゲームギアだけでなく、今まで使った全ヘッドホンの中でも最高クラスのノイキャン体験。イヤーカップの形状で、まずはパッシブノイキャンを確立。ANCをオンにせずとも(つまり電力不必要な状態で)、隣のリビングでテレビを見ている彼氏の声がほぼ聞こえなくなりました。ここからANCをオンにすると…、他のゲーミングヘッドフォンとは一線を画す静けさ。静寂という孤独。
マシン横のエアコンの音も聞こえません。彼の声もいっさい聞こえず、肩を叩かれるまで呼ばれていることにも気づきませんでした。猫に太ももを叩かれるまで、(どうやらけっこう長いことニャーニャー呼んでいたみたい)気づきませんでした。完全に周りの世界から音が消えてましたね。前述した通り快適なつけ心地なこともあって、世界が消えた!という気持ちになります。
移動中のサブウェイでもつけてみましたが、30%ほどのボリュームでお気に入りのポッドキャストを楽しめました。ちなみに、いつもはAppleのAirPods Proを使っていますが、ボリュームは最低でも50%ないと聞こえません。
アンビエントサウンドモードがあり、周辺音の取り込みも可能(これもヘッドホンのボタンで切り替えできてわかりやすい)。どれほど周りの音をキャッチするかはソフトウェアで調整できます。もちろん、ヘッドホンを外した時と同じ聞こえ方にはなりませんが、会話もリビングの音を聞くのも問題なし。
空間オーディオに関しては、少なくても私のレビューではちょっとビミョー。設定には、耳の形を撮影したりなどあるのですが、これがうまくいってないのか、どうもいまひとつ。『Overwatch』プレイ時には、敵の足音がクリアに聞こえるものの、どっちから来ているかはわからず。空間オーディオがきちんと設定されていれば、そんなはずないんですけどね。『Batman: Arkham Knight』のオープニングシーンではしっかり作用していたので、もっといろんなシーンで長く使ってみないとハッキリ良いとも悪いともいえません。
ちなみに、ソニーがセットアップしてくれた体験イベントで『Counter-Strike: Global Offensive』プレイしたのですが、それはもう見事な空間オーディオでした。敵の足音、方向も完全再現。
その他の機能は、2.4 GHz/Bluetooth接続なので、ゲームマシンとスマホに同時接続可能。前述のゲーム音量/チャット音量の切り替えスイッチについて、ゲーム中にチャットすることってちょいちょいあるのですが、だからといってこのスイッチが重宝するかというとそうでもなくて。編集部とSlackでテストしてみると、ゲームとチャットの音量が調整され確かに聴きやすい。ただ、人によって使用するチャットサービスも異なると思うので、チャット音量をブーストするよりも、会話中はゲームの音量下げておけばいいのではとも思ってしまいます。
ソフトウェアが足引っ張ってる?
Inzone H9の音質を語ろうと思うと、どうしてもソフトウェアの粗が気になります。レビュー中にゲームをプレイしていて、音のこもりや低音の弱さを感じたのですが、これハードじゃなくてソフトの問題だと思うんです。
Inzoneの音響ソフトInzone Hubには、フラット/ベースブースト/ミュージックの3パターンのプリセットがあります。で、ここから選ぶとどうにも物足りない。もちろん、ユーザーがイコライザーをフルカスタムすることもできるのですが、それはオーディオエンジニアのように音響のことがよくわかっていればの話。私のようにゲーム好きでも音響には疎い人はイコライザーを思うように設定できず、結局プリセットに頼るしかないんです。
てことで、サウンドクオリティ体験としては満足とはいい難いのですが(ミュージックモードで聴いたクイーンの『We Will Rock You』は感動ものでした)、逆にいえばポテンシャルは非常に高いとうこと。イコライザーさえうまく扱えれば、『We Will Rock You』と同じ感動がゲームでも味わえるってことですから。サードパーティのサウンド系ソフト、私はSteelseries Sonarのソフトが非常に使いやすく(Steelseriesヘッドフォン以外でも使えちゃう)、これでカスタマイズすると感動音質でした。ソニーのInzone Hubソフトウェア、もうちょっと頑張って欲しいな。
おーい、マイクどうした?
ヘッドホンではなく、ゲーミングヘッドセットを欲する人たちの最大の目的は、ゲームのプレイヤーたちと会話する必要があるから。つまりマイクが重要だということになります。なのに…、それなのに、Inzone H9はなぜマイクがいまいちなんだー!どうしてこんなことに!?
レビュー開始前に、ちょっと編集部と通話しただけで「声がこもって聞き取りにくい!」と言われてしまいました。レビューのため録音した音声を聴いてみると、確かにこもってる。正直、H9のマイクはノートPCやウェブカムセット以下かと…。周辺音はもちろん、キーボードのタイプ音まで聞こえてしまいます。声もこもっちゃいます。通話やチャット多用のゲームには向かないということになり、ここが本当に残念。
結局Sony Inzone H9は買い?
デザインよし。装着感サイコー。ノイキャン感動。一方で、ソフトの扱い辛さ(プリセットの少なさ)とへなちょこマイクは絶対的マイナス。となると、ノイキャンにどれだけ重きを置くかで買いかどうか意見がわかれます。
本格ゲームギア初参入だけあって、まだまだ伸び代があるプロダクトというの全体のまとめ。ソニーの強みであるノイキャン、デザイン、サウンドクオリティは活きているので、ゲームギアという今最もアツイ市場でもうちょっと揉まれてみてから、ですね。
Source: Sony