恐竜と人間は共生できるの? 『ジュラシック・ワールド』最新作の監督が語る、恐竜が"野生化"した世界【ネタバレあり】

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  • author 中川真知子
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恐竜と人間は共生できるの? 『ジュラシック・ワールド』最新作の監督が語る、恐竜が"野生化"した世界【ネタバレあり】
Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

恐竜が野生化したら世界はどうなる?

この夏、待ちに待った『ジュラシック・ワールド』の完結編『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が公開! 第2作目で街に解き放たられた恐竜たちと人間の共生の行方が気になっていた人は多いでしょう。

そのアンサー編となる今作には、『ジュラシック・パーク』(1993年公開)のオリジナルキャストも集結するとあって期待とエモだらけの展開が約束されているのは、皆さんもご存知かもしれません。

一足早く鑑賞させてもらった筆者は、『ジュラシック・パーク』を観た感動と興奮を追体験して大興奮。

この気持ちをいろんな人に伝えたい〜と思っていたら、何と、コリン・トレボロウ監督にインタビューする機会に恵まれたではありませんか。

ということで、監督の『ジュラシック』シリーズへの愛やこだわりなど、いろいろと聞いてきましたよ。

実在した素晴らしい恐竜たちを改めて紹介したかった

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Image: ©︎ 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

──『ジュラシック・ワールド』シリーズの締めくくりの物語を作るにあたり、何を1番大切にしましたか。

コリン・トレボロウ監督(以下トレボロウ監督):観てもらえればわかる通り、たくさんのことを大切にしています。中でも、観客が満足してくれるかどうかを重要視しましたね。みんなが愛してやまないキャラクターや恐竜たちが無事かどうか、すごく気にしましたよ。

感覚的にいえば、素晴らしいおもちゃを箱から取り出して手渡して、しばらく遊んでもらってから、再び箱に入れて持っていくようなものだったと思うのです。そのおもちゃはどこにいくのか、大事にされるのか、心配になりますよね。だから、私たちは「恐竜たちは無事だよ。大丈夫なんだよ」とファンの皆様に伝える必要があると考えていました。

──今作ではリアルな恐竜にこだわったようですが、その理由は? 『ジュラシック・ワールド』シリーズの前2作では、遺伝子組み換えした新種の恐竜を出てきましたよね。

トレボロウ監督:子どもたちに、本物の恐竜も最高であって、偽物やハイブリッドを作る必要はないと念押ししたかったのです。

ギガントサウルスも、テリジノサウルスも、ピロラプトルも実在した恐竜です。今作では古生物学に立ち返って、実在した素晴らしい恐竜たちを改めて紹介したいと思ったのです。

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Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

──『ジュラシック・パーク』はVFXの使い方という点で映画史に残る作品です。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では特筆すべき技術が使われましたか?

トレボロウ監督:100年にわたって使われている技術を使いました。フィルムで撮影し、セットを建設したのです。112ものセットですよ。それと、アニマトロニクスの恐竜を使いましたね。

一方で、CGの恐竜を動かす技術も年々向上しています。なので、新旧の技術の組み合わせですね。これまでも、そしてこれからも上手く表現していきたいです。

恐竜を復活させたキーパーソン、ウー博士は企業戦士だった?

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Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

──本作ではヘンリー・ウー博士の立ち位置がこれまでと変化していたようですが、監督にとってヘンリー博士はどんな人物なのでしょうか?

トレボロウ監督:彼のことはとても大切に思っています。物語を構築するという意味でも、重要な役どころですし。

とはいえ、『ジュラシック・パーク』ではそこまでの登場時間はありませんでしたよね。原作では丁寧に描かれていたのに。私たちはウー博士という人物を映画の中で十分に伝えきれていないと感じていたので、今回は彼の葛藤や不当に扱われていることへの不満などを描きたいと思いました

彼はいつでも何かに届きそうなのに、届かない。でも、その「何か」は映画の中では語られていない。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では、ウー博士が類まれなる発見をしたことと、その発見のおかげで人類を救ったという流れにしました。彼は間違いを犯しましたが、その間違いをちゃんと正したのです。

──ウー博士はマッドサイエンティストだったと思いますか?

トレボロウ監督:いや、彼は決してマッドではありません

ただ、技術に魅入られていくつかの間違いを犯してしまっただけなのです。そして、企業戦士だったという点も忘れてはいけません。彼は、パークのためにより大きく、より凶暴な恐竜を作れと命じられていたのですから。

そして、与えられた機会を活用した。上司の責任だと責めることだってできるのです。

とはいえ、いろんなタイミングで選択することはできたはず。結果的に数々の過ちを犯した彼には贖罪が必要だったと思います。今作ではそのチャンスを与えたかったのです。

初作から28年経過したオリジナルキャストたちはどうやって過ごしてきたの?

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Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

──この作品を作るにあたってオリジナルのキャストから注文はありましたか?

トレボロウ監督プロセスの一環として、毎日3人(サム・ニール/アラン・グラント博士、ローラ・ダーン/エリー・サトラー博士、ジェフ・ゴールドブラム/イアン・マルコム博士)とすり合わせをしました。28年経過して、変わっていることと変わっていないことがありますからね。

脚本を書き始める前に、3人はどうやって過ごしてきたのか、お互いの関係はどうだったのか、といった疑問が次から次へと湧いてきたのです。

ディレクターが決めたことを3人に伝えるのではなく、彼らに思い思いのアイディアを伝えてもらいました。

──彼らのアイディアで作品に最も影響したことは?

トレボロウ監督:僕と脚本家のエミリー(・カーマイケル)は、エリーとアランの間にロマンスがあるのかどうか質問しました。2人がどんな感情を持っているのか定かではなかったので。

ローラは、エリーの人生が今どんなポイントにあるのか、本当によく考えてくれていました。結婚と子育てを経験したわけで、28年前のアランとの関係を繰り返したいとは思っていないだろうと考えたようでした。

一方のアランは、特に何が変わったというわけではありません。人生に対して異なる見方を持った2人が、以前うまくいかなかったことを、うまくいかせることができるのか? 私たちは「YES」だろうと考えました。

こういったことはエリーとアランに限ったことではありません。多くの人が関連づけて考えられることなので、その答えを出した上で、映画の骨組みにしたいと思いました。

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Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

──『ジュラシック・パーク3』で2人が別れたことを知ったときは、とても悲しかったです。

トレボロウ監督:そのときに終わったからといって、それで完全に終わりというわけではないのです。20数年前の出来事で、物事や関係性は変化します。人生も人も変わる。エリーにとって、とても自然な変化なのです。

そういえば、今回の映画にはドジスンが出てきますよね。『ジュラシック・パーク』でシェービングクリームに入った恐竜の胚を受け取った人物です。彼はあれっきりの役かと思っていたのに、今作では問題の中心にいます。そこで気になったのですが、ドジスンはあの後どんな人生を歩んできたのですか?

トレボロウ監督:その部分はNetflixのオリジナルシリーズ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』のシーズン5で少し語られていますよ。

Video: Netflix Japan/YouTube

──トレボロウ監督も制作総指揮として参加されているアニメーションシリーズですね。『ジュラシック・ワールド』の理解を深められるので気に入ってみていますが、実写映画との兼ね合いや補完を意識しているのですか?

トレボロウ監督:あくまでアニメーションなので、実写のキャラクターの裏話などは特に意識していないのですが、同じユニバース内に存在するし、ファンにとっても重要なショーだと理解しています。

制作期間中にコロナのパンデミックが広がり、とても苦労しましたが、ふたつの世界を平行させながら、どこで結びつきを感じさせるか頭を悩ませたりもしました。

あるところで実写版の1人のキャラクターがアニメーションにも登場していますよ。全ては同じユニバースで起こっていたことなのだと印象付けられましたね。

恐竜との共生は、同じ地球に住むものとして自然なこと

──ところで、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では恐竜との共生が描かれていますが、監督はそれが可能だと思っていますか? 恐竜が自由に動き回る世界でも一般人がそれまでと同じ生活をしようとしている姿に驚きました。

トレボロウ監督:できるか、ではなく、そうせざるおえないのではないでしょうか。

だって、私たちは外に出て動物を殺しまくることはできないでしょう。一部のエリアでは、免許を持った人たちがやっていますが、それだって法律で厳しく取締られています。同じ地球に住むものとして、共生は自然なことではないでしょうか。

2作目と3作目の間に、『Battle at Big Rock』(2019年)という『ジュラシック・ワールド』シリーズのショートフィルムを作りましたが、その作品でも恐竜はクマのように描かれています。キャンプ場に恐竜が入り込んでしまうんですね。

Video: Jurassic World/YouTube

この、人間と恐竜の暮らしが近いというのは、描く上で重要だと考えました。

──恐竜と人間の暮らしが近くなり、いつでもみられるようになったのに、アランは化石を掘り続けていましたが、それはなぜでしょう?

トレボロウ監督:アランは、答えは本物の化石の中にあると信じているからです。『ジュラシック・パーク3』でも言っていましたが、彼にとって目の前を歩く恐竜は本物の恐竜ではないのです。いつだってアランはアランで変わりません。今いる恐竜たちがテーマパーク用のクリーチャーだという考えも変わらないんですよ。


この他、トレボロウ監督は、「オマージュはあるけれど、あまりノスタルジックにならないように努力した」といったことなども話してくれました。

どんなオマージュだったかというのは観てからのお楽しみです。シリーズのファンなら、すっごく嬉しくなることの連続だと思いますよ。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は7月29日公開。Netflixの『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』も、ぜひ併せてお楽しみください。

Source: 映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』公式サイト, YouTube(1, 2)