やっぱり人間は支配者か? 『ジュラシック・ワールド』最新作を通して、人類が向き合わなければならないこと【ネタバレあり】

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  • author 中川真知子
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やっぱり人間は支配者か? 『ジュラシック・ワールド』最新作を通して、人類が向き合わなければならないこと【ネタバレあり】
Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

もはやただの夢物語じゃない。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』がついに日本で公開されました。これにて『ジュラシック・ワールド』シリーズと、『ジュラシック・パーク』シリーズが終わってしまいましたねぇ。寂しくなる。

こんなことを書くと、とっても安っぽく感じるけれど、『ジュラシック』シリーズは、夢と感動と好奇心を与えてくれました。

私は、VFX関係の仕事についていたこともあるので、周りには『ジュラシック』シリーズの影響を受けた人がたくさんいたんですよね。『ジュラ』を語り出したら止まらない人ばかりでした。

そんな、影響力のある『ジュラシック・パーク』シリーズが、30年の時を経てついに完結。試写で一足先に鑑賞しましたが、『新たなる支配者』はすっごくよかったです。「恐竜を現生に蘇らせること」を真面目に考えた作品だと思いましたね。

というわけで、ネタバレもいれつつ感じたことを書いていきますね。

恐竜と共生すること

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Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の舞台は、恐竜と人間が共生する世界です。なにせ『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のラストで、メイジーが恐竜をアメリカ本土に解き放ってしまったので、そこかしこに恐竜がいるんです。しかし、人間はこれまでと変わらない生活を維持しようとしているから、なんだかカオスな世界になっています。

ちなみに、ことの発端となったメイジーは自責の念に駆られることもなく、結構普通に暮らしていました(少しは自分の行動と向き合った方がいいと思う)。

『ジュラシック』シリーズでは、常に「恐竜と人間が同じ時代を暮らすことなどできるのか」と問いかけてきました。オリジナルの『ジュラシック・パーク』ではそのメッセージが顕著で、最終的に「無理」という結論に至ったはずでした。だから『ジュラシック・ワールド/炎の王国』では、間違いを正せるチャンスだから噴火で絶滅してもらおう、という意見もでてきたわけですね。

②<©2022UniversalStudiosandAmblinEntertainment.AllRightsReserved.>
Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

ところが、いざ恐竜が解き放たれたら、人間は普通に受け入れているんです。『ロスト・ワールド』のときはレクシー1頭ですらパニックになっていたのに。

この「不自然なまでの受け入れ感」が気になったので、コリン・トレボロウ監督に「なぜ当たり前のように生活できるの? 」と聞いたのですが、「だって恐竜がいるからって撃ち殺すことはできないでしょう。共生するしかないんですよ」との答えが返ってきました。

これを聞いて、私自身が恐竜を脅威と捉えていて、人間が生きるためには排除しなければならないと考えていたのだと思い知らされました。ちょっとショックでしたね。だって、私は動物が大好きで、全ての生き物に生きる権利があると信じていると思っていたから。しかし、恐竜に関しては人間の生命を脅かすもので、共生なんてできないと考えていたのです。

ところが、監督にとって恐竜は血の通った生物であり、体の大きさや人間の生活に与える影響力が他の生き物のそれとは大きくかけ離れていたとしても「クマのように我々の生活圏の近いところにいる脅威の一つ」でしかなく、実際そのように描いているんです。

恐竜は人類の敵ではない

③<©2022UniversalStudiosandAmblinEntertainment.AllRightsReserved.>
Image: © 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

恐竜と共生しているとしたら、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の脅威はなに?となりますよね。食いつくし系のモンスターイナゴです。

巨大化したイナゴが食物を食いつくすので、これには人間も慌てます。だって、食料がどんどんなくなっていってしまうのだから。しかも、そのイナゴの存在の裏には何やらとんでもない組織の影も見え隠れしています。そりゃ、サトラー博士だってアラン博士のもとに行って、最終的に新旧の登場人物が手を組んで戦いますよね。

つまり『新たなる支配者』は、恐竜よりもモンスターイナゴをどうするかが課題であり、恐竜は人類の脅威とは言えず、受け入れるしかない段階にきていると伝えているんです。

新たなる支配者は誰?

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Image: ©︎ 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

では、副題の『新たなる支配者』は誰のことを指しているのでしょう? 原題だと『Dominion』で、意味は「支配」とか「主権」、「統治」みたいな意味になります。「新たなる」は邦題で加えられた部分みたい。

「新たなる」と言われると、すぐに思いつくのは、恐竜ではないでしょうか。解き放たれた恐竜が地球を新たに支配する、みたいな。しかし、映画の内容を見る限り支配しているとは思えず、むしろ利用されているケースが多い。確かに、人間の生活圏にドスンドスンとやってきて本能に忠実な行動をとって惨事を引き起こしますが、制圧されるし被害も少ないんですよ。

ではモンスターイナゴかというと、それも違う。彼らは人間に脅威をもたらすけれど支配はしていません。

そう考えると、やはり人間だと思うのです。邦題を前提に考えるなら、「恐竜が闊歩する世界において新たなフェーズを迎えた人間たち」が『新たなる支配者』。原題の『Dominion』なら、やっぱり人間が支配しているという念押しの意味になるのでは。

先ほど、私は「自分は恐竜を脅威と捉えているみたい」と書きました。しかし、恐竜というより、耳触りのいい言葉を並べながらエゴを押し通す人間のほうが怖いです。生態系に天変地異が起こっても、人間は「支配者ポジション」を維持するんだろうなぁ、とも思いますしね。

とまぁ、人間に対して棘のあることを書いてしまいましたが、それもこれも私たち人間はこれから「リアル・ジュラシック・パーク」と向き合わなければならないからなんです。

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Image: Shutterstock

以前から、「マンモスは蘇るのか?」みたいな夢が語られていましたが、いよいよその「マンモスの復活プロジェクト」が本格始動したみたいで。CNNの報道によれば、すでに16億円もの資金を調達しており、まずはアジアゾウとマンモスを掛け合わせて「マンモファント」なる雑種を誕生させる計画が動いているのだとか。2021年には「4〜6年以内に赤ちゃんを誕生させる計画」と語られていたので、もしかすると『ジュラシック・パーク』でハモンドとオリジナル3人キャストがダイニングテーブルを囲みながら議論を交わしたようなことが起こるかもしれないわけ。

『ジュラシック・ワールド』と『ジュラシック・パーク』は、シリーズの終焉を迎えましたが、私たちはこれから始まるかもしれない。こんな直近の未来も加味して『Dominion』という副題を付けたのかな、といろいろ考えたりして。深読みしすぎかな。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は7月29日(金)全国公開です。

Source: 映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』公式サイト, CNN

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