有人宇宙飛行の「新時代」へ…宇宙探索の新たな一歩を踏み出した

  • author Passant Rabie - Gizmodo US
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  • R.Mitsubori
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有人宇宙飛行の「新時代」へ…宇宙探索の新たな一歩を踏み出した
Photo: NASA/Bill Ingalls via Gizmodo US

火星に降り立つ日も遠くない、はず。

2022年11月16日未明(現地時間)、フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターの39B発射台から、無人宇宙船「オリオン」を搭載したNASAのSLS(スペース・ローンチ・システム)ロケットが宇宙へと飛び立ちました。人類が再び月面着陸を目指すミッション「アルテミス」が幕を開けたのです。

歴史的瞬間

ロケット打ち上げを、ケネディ宇宙センターにほど近い見学スペースのバナナクリークで見守っていたアリゾナ州立大学地球宇宙探査学部のジェームズ・ライス副部長は、「今日、私は歴史の1ページを目にしました」と米ギズモードのインタビューに答えています。ライス氏は惑星科学者で、NASAの火星探査機「パーサビアランス」のミッションにも携わり、8月と9月にSLSロケットの打ち上げが中止・延期になった時も宇宙センターにいたそうです。

そして11月16日午前1時47分、満を持して巨大なSLSロケットが地球を出発し、月面および宇宙探査の新時代が幕を開けたのです。

ライス氏は「(打ち上げ時には)光がまばゆいばかりで、文字どおり夜が昼へと変わったようでした」と感想を語っています。「発射から数秒後には不吉に思えるようなゴロゴロ…という音が轟き、徐々に振動を伴うように大きくなって、燃え盛る炎が腹にズンズン響くみたいな…そんな跳びはねる音へと変わっていきました」。さらに同氏は、「私は何年もシャトルの打ち上げを見てきましたが、そのどれよりも激しくパワフルでした」と興奮を伝えています。

今回のミッションは単なる「アポロ時代の延長」ではなく、月とその先の宇宙を探索する「新時代」の幕開けとして、大きな一歩を踏み出すことになります。

将来は火星を目指す

無人の探査カプセル「オリオン」はこれから約25日間にわたって月面探査の旅を続けます。今回のロケット打ち上げは、「早ければ2025年までに人類が再び月面着陸する」というNASAの悲願を達成するためのファーストステップ。今後の計画に必要な統合システムを初めて試行する大事なミッションです。

1972年にアポロ11号が月に到達して以来、誰一人として月面に降り立つことはありませんでした。その状況を打破するため、そして当時とは大きく異なる環境で月面着陸を実現させるべく進められているのが、アルテミス計画なのです。

ネバダ大学で物理学・天文学を研究するジェイソン・シュテフェン教授は、「アポロ計画が立ち上がった際、科学的にそれをどうするのかよくわかりませんでした」と米ギズモードの電話インタビューに答えています。「アポロ計画は”科学的な試み”を装っていましたが、その実、軍事的なプログラムだったのです」。

あれから50年以上過ぎ、宇宙探査はアポロの時代よりはるかに進歩しました。科学者もまた、他の天体から持ち帰ったサンプルをどう扱うのか、ということをより意識するようになったそうです。「この半世紀でNASAや科学者は皆、サンプルの扱い方に関するプロトコルを洗練させてきました」とシュテフェン氏は言います。

この50年の間に、月や火星、その先の宇宙へ向かうミッションは無人化・ロボット化が進みました。しかし、「アルテミス」は有人ミッションへの回帰を意味します。その大きな目標は月に持続的に滞在すること、さらにはいつか火星に宇宙飛行士を着陸させることです。つまり、アルテミス計画は人類を月に帰還させることだけでなく、将来の火星探査のための先行プログラムとしての役割も担っているのです。

「探査車を作るのは、宇宙飛行士を送り込むよりよっぽど安上がりです。探査車は(任務が済んだら)壊してしまえばいいわけです。持ち帰る必要がありませんから」とシュテフェン氏は言います。確かに今、宇宙飛行士を別の惑星に置き去りにすることはできないけれど、月面に滞在し、その場に応じて必要な判断を重ねていく経験は、このミッションの価値をさらに高めてくれるでしょう。

「アルテミス計画を通して、人類が自分の靴を再び汚すことにより、”別の世界を探索する”というエキサイティングで大切なミッションを取り戻せるのです」とライス氏は言います。

人類の月面着陸が再び実現し、その偉業をこの目で見ることができたら素敵ですね。「地球以外の宇宙天体に再び降り立つこと、それは長らく人類が訪れなかった場所を取り戻すという事だと思います」とシュテファン氏は言います。「そして、それはとても感動的なことだと思うのです」。