イーロン・マスクの後継にふさわしいのは? Twitter次期CEOの有力候補9人

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イーロン・マスクの後継にふさわしいのは? Twitter次期CEOの有力候補9人
Image: mundissima / Shutterstock.com

Twitterを破壊して、自らの資産も好感度も壊れ気味のイーロン・マスク。

自らの進退を問うネット投票でYESが過半数(57.5%)を占めたのを受けて「交代してくれる人がいれば今すぐにでも辞める」と言ってますが、ここまで壊れてしまうと火中の栗を拾う人物はそう簡単には見つかりそうもありません。

Twitterに関する赤字は年間15億ドル

思えば、イーロン自身、買収をなかったことにしようとしてTwitterに訴えられて渋々買った会社ですしね。Tesla(テスラ)がおざなりになって「パートのCEOの割には報酬が560億ドルって破格すぎないか」と訴えられて11月に出廷したときにも「TwitterはいずれほかのCEOに任せる」と言っていましたが、あのときなんでまじめに探していなかったんだろうと今ごろは後悔の嵐かもしれません。

上場停止前の最後の四半期決算でTwitterが計上した損失は2億7000万ドルでしたが、イーロン・マスクは買収資金440億ドルのうち170億ドルを会社に背負わせたので、その借入金の利息だけで年間15億ドルもの赤字が加わっています。赤字脱却は夢のまた夢。

テスラの株も落ち込み中

買収前は「テスラ株は売らない」と言っていたのに、イーロン・マスクはかれこれ400億ドル近くのテスラの持ち株を売ってTwitterに注ぎ込んでいます。テスラ株は今年7割下がって、時価総額はここ2年で最低水準に落ち込み中です。

米主要メディアの記者や競合SNSのTwitterアカウントを一斉削除したときにはウォール街のOppenheimer & Co社アナリストがテスラ株の格下げを行ない、「報道の自由が脅かされていると受け止める消費者も多く、マスク体制のテスラはこれ以上支持できないと感じている」と懸念を表明。すぐ削除は撤回になりましたが、Facebook、Instagram、Mastodon、Postなどへの外部リンクが禁止になった際には、イーロンのリストラを”貴重な試み”と応援してきたシリコンバレーの著名VCポール・グレアムまでもが抗議の声をあげTwitterから一瞬消されたりしてます(後日禁止は取りやめになってアカウントも復活)。

Twitter CEO後継者候補9人を独自にピックアップ!

会社におんぶに抱っこで要求ばかりが吊り上がる社員をバッサリ切りたい経営者からは喝采の声も上がってるイーロン・マスクですが、じゃあ、一緒にやるか?って言われてハイって手を挙げる人はそういないでしょう。

イーロンは言ってることがコロコロ変わるので世論と板挟みになるのは必至。それよりは、焼け野原からイーロンが生きて這い出てくるか高みの見物を決めてるほうがずっとラクに決まってます。

そんなわけで難航が予想されるCEO探し。米Gizmodoもひと肌脱いで、カテゴリ別に9人の有力候補を選んでみました。当たる確率の「低いほう」から順に紹介していきます!

9)トラビス・カラニック

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Image: Joe Seer / Shutterstock.com

カテゴリ:シリコンバレーの企業経営者

地元の同業他社からトップを起用するなら、Uber元CEOあたりが適任でしょう。

イーロン・マスクは「後任人事はあまり歓迎されないだろう」と言っていますので、カラニックなら「嫌われるCEO」の条件も余裕でクリアです。

エクスペディアCEOのダラ・コスロシャヒを後任に据えるまで、カラニック体制のUberは、パワハラとセクハラ、女性差別が連日報じられて散々な嫌われようでした。組合結成を妨害したり、実地調査の規制当局職員のスマホを特定して乗車をブロックしたりとスレスレのこともやっていて、何から何までがイーロン好みです。CEOを辞めてからのカラニックは厨房レンタルビジネスに再起をかけているので、声をかけられてもウンと返事するかはわかりませんけどね。

同じ穴のムジナでWeWorkのアダム・ニューマン元CEOもいますが、ちょっと変人すぎるのと、WeWorkの凋落を思えば、スルーされそうな予感。

女性起用なら、Google(グーグル)の女帝からYahoo CEOになったマリッサ・メイヤー、Facebook COOを最近辞めたシェリル・サンドバーグがいますが、どちらもTwitterの経営には興味を持ちそうにありません。興味を示したとしても破格の報酬と独立性の確保が条件になるでしょう。

8)ジェイソン・カラカニス

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Photo: Wikimedia Commons

カテゴリ:やる気

春のTwitter買収表明からずっとイーロン・マスクを応援してきたポッドキャスターのカラカニスも有力候補です。…と、自分で言ってるんですけどね。

9月に公開になった法廷資料を見ると、「Twitter CEOになるのが夢だ」と言って次のCEOにしてくれとイーロンに何度も頼み込んでいて、読んでるこちらが恥ずかしくなります。

カラカニスといえば、ブログ黎明期にWeblogs Inc.を立ち上げて2005年AOLに売却した人ですよね。その売却益をエンジェル投資に回していた時期もありますが、あまりうまくいかなくて、今は「All-In Podcast」が主業務。Weblogs Inc.は見る影もなくなってしまって、何の価値もない会社でも早く立ち上げて売り抜ければひと財産築けるんだなあとため息。同じ黎明期にイヴ・ウィリアムズ(エヴァン・ウィリアムズ)が立ち上げたBloggerはGoogleに買収され、その売却益でイヴが立ち上げたODEOから生まれたのがTwitter。そうやって考えると、そのCEOになるのが夢という心理はなんとなくわかりますよね。

Twitter本社にチーム・イーロンの一員として缶詰めになったカラカニスはこまめに内情をツイートしていたのですが、おしゃべりが過ぎたのか、イーロンから黙れって一括されていました。CEOには指名しないだろうなあ。

7)ジャレッド・クシュナー

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Image: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

カテゴリ:サウジ王子と親密なトランプ王子

言わずと知れた、ドナルド・トランプ前大統領の娘婿で元・大統領上級顧問

イーロン・マスクと一緒の姿がワールドカップ決勝戦で目撃され、その直後に「CEO辞めるべき?」というネット投票が公開されたもんだから、もしや本命? と騒がれました。

両氏の間には、オイルマネー以外に共通点はないんですけどね。五番街666のビルを米不動産史上最高額の18億ドルで買った翌年にリーマンショックで価値が半減して中東、ロシア、中国に助けを求めたクシュナーを見習って、イーロンも金策に駆け回っていただけなのかもしれません。

トランプ前大統領はTwitter永久追放がイーロンに赦免されてからも契約上の縛りがあってTruth Socialに残っていますし、クシュナー自身、当分は政界とは距離を置いておとなしくしたい方針。何よりも貴公子然とした佇まいで、イーロン好みのスワッグ(ヤバさ)がないので、噂で終わりそうな気配ではあります。

6)ブレイク・マスターズ

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Image: Wikipedia

カテゴリ:ピーター・ティールの忠臣

裁判所命令で大量開示されたイーロン・マスクの通信記録を読むと、「右翼をTwitterに復帰させて、ボスともうまくやれる人間というと、次期CEOにふさわしいのはブレイク・マスターズみたいなタイプの人間だろう」とイーロンに進言する声もあったことがわかります。

氏がトランプ推薦で上院選に出馬して落選する11月より前の日付けのものなので今はどうかわかりませんが、スタンフォード在学中から講師のPayPal共同創業者ピーター・ティールにかわいがられてきた人ですので(「スタートアップは民主主義ではない、絶対君主制だ」という講義内容までウェブで拡散していた)、イーロンに合わせるのは如才なくできそうです。Twitterアカウントを今確かめたら「Twitterの仕事はきついだろうし(選挙より10倍以上たいへんw)、もっといい適任者がいるので(@elonmusk自身、@DavidSacksなど)別にやりたいと言ってるわけじゃないけど」と前置きしたうえで「仮に自分がCEOになるならこうする」と長々と所信表明していました。

しかしまあピーター・ティールは、イーロン・マスクがPayPalをダメにして役員会でCEOの座を追われてから後釜でCEOになったドンですし、ふたりって仲いいのか悪いのかよくわからないところもあります。どちらも無政府主義のリバタリアンではあるのですが、ティールはマスクのことを「大ぼら吹きの詐欺」だと思っていて、マスクはティールのことを「ソシオパス」(良心の欠けた人)だと思っていると伝記「Max Chafkin」には書かれています。どっちもある意味当たってるので、ティールに忠義の厚いマスターズは恐ろしすぎて、あまりそばに置きたくないかもしれません。

5) レックス・フリードマン

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Photo: Wikimedia Commons

カテゴリ:無給で働く人

誰よ? となりますが、「Lex Fridman Podcast」でテクノロジーについてお話しているポッドキャスターです。Twitter上で出馬を申し出て「なんだったら無給でいい。全力でやる」「自分のような者でもよければ喜んで力になりたい」とラブコールを送りました。

すぐイーロンから「全財産貢ぐ覚悟はあるの? 会社は倒産まっしぐらなんだが、それでもいいの?」と返事がきて「自分がターンアラウンドします!」と言ってます。「NO」と断ってるわけじゃないところに注目。

4)ジェームズ・マードック

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Image: Wikipedia

カテゴリ:マードック2世

Foxニュース創始者ルパード・マードックの子息。テスラ役員兼務で、2018年にはイーロン・マスクに代わってテスラ会長就任かとが立ったこともあります。Twitterのトップの座だって狙っていないとは限りません。

2世としてメディア帝国を受け継いだ経営実績もあれば、 Vice Mediaの株主でもあるため、広告に疎いイーロンとは補完性がありますしね。

ただ、父マードックは大手IT企業を家業の旧メディアを脅かす存在と考えていて、MySpaceを買収して大失敗しているので、2世が乗り気でも、やめとけと言われそうです。

それにテスラの野望をまだ捨ててない可能性もあります。7月にイーロンの巨額報酬の裁判で証言台に立った際、「次期CEOを誰にするかはこの数か月で決まったと話していた」と言ってましたしね。Twitterより実入りの大きい投資先はほかにいくらでも見つかるんでしょう。

3)ジャック・ドーシー

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Image: Wikipedia

カテゴリ:経験者

イーロン・マスクに売るしか生き残る道はないと言って買収を後押ししたTwitter共同創業者ジャック・ドーシーですが、イーロンの行きすぎには抵抗も感じている様子。

「児童虐待の対策を長年拒否してきたのは犯罪だ!」というイーロン発言には「違う」とツイートしたし、外部リンク禁止についても「 なんで?」「わけがわからない」 とやんわり釘を刺しています。

復帰も囁かれているけど、ドーシーは仮想通貨のBlock(旧Square)のCEOで、分散型TwitterのBlueskyプロトコルの立ち上げも忙しそう。 このなかでは一番有望かもですが、それが故に見送られてしまう存在。

2)デイビッド・サックス

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Image: Wikipedia

カテゴリ:イーロンのお気に入り

またまたポッドキャスターで恐縮ですが、ジェイソン・カラカニスと「All-In Podcast 」共同ホストを務めるデイビッド・サックスのほうがイーロンとの付き合いは古く、PayPal時代に遡ります。カラカニスと違って、サックスにはイーロンも一目置いている様子

サックスはハードコアな右翼で、既成概念を疑うところがイーロンそっくり。1995年には「ダイバーシティ神話:スタンフォードにおける多文化主義と不寛容政治」という本をピーター・ティールと共同で書いたんですが、「レイプ反対運動の目的は男を可能な限り悪者にすること」といった不適切表現があって20年後に謝罪を発表しています。そういうダメなところが、むしろTwitter CEOレースでは有利に働くように感じるんですよね。

次期レース全般を見回すと、いちばん経営戦略に関する発言が活発なのがサックスです。イーロンから次期CEOの声がかかって飛びつくかどうかは不明ですが、カラカニスとポッドキャストやるよりはマシなんじゃ…。

1)どこにでもいるいい人

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Photo: Wikimedia Commons

カテゴリ:虚報新聞OnionがCEOのニュースに入れるストック写真のような人

こちらはセクハラ騒ぎでDraper Fisher Jurvetson(聞いてすぐ忘れる社名がVC好み)のパートナーを辞めてSpace XにきたSteve Jurvetsonという役員です。Twitter次期CEO最有力候補ってわけじゃないけど、最有力候補のイメージそのものなので写真を使わせてもらいました

アクのない顔で、身長188cm、スタンフォードMBA取得者で、歳は50代半ば。髪に白いものが混じりはじめる年頃です。下の名前はたぶん単一母音のToddとかBillとかRay(Jackは便宜上除外)。黙々と仕事をこなし、広告主の不安を鎮めてくれる人がイーロンの求めるCEOです。意見することはなく、あり余るほどの資産家でもなくて、出世欲も適度にある人。

となると、白羽の矢が立つのは女性かもしれません。自らが共同創設したOpen AIの研究員でNeuralink役員でもある才媛との間には双子ちゃんも生まれていますしね。SpaceXもプレジデント兼COOのグウィン・ショットウェルに経営はまかせっきりです。イーロンがTwitterにかまけてて大丈夫かってNASAのビル・ネルソン長官が問い合わせたときにはショットウェルが「大丈夫」と答えて安心させ、「会社は彼女が切り盛りしているものね」とまで言われていました。

あんな風に表に名前が出ることはなくても、仕事はデキて、大人の対応もできる縁の下の力持ちが早く見つかるといいですね。Twitterは最初の創業者の存在が消されて、CEO交代のたびに創業話が上書きされていった歴史があり「まるでゲーム・オブ・スローンズだ」と言われています。ロード・オブ・ザ・リングの指輪みたいで少し怖いな。