HIVの実験的なワクチンがヒトでの初期臨床試験を通過

  • author Ed Cara - Gizmodo US
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HIVの実験的なワクチンがヒトでの初期臨床試験を通過
上、エイズ啓発の「レッド・リボン」 Image : Shutterstock (Shutterstock)

この研究が期待通りにいけば、C型肝炎、インフルエンザ、Covid-19など、他の病気も永続的に予防できるようになるかもしれません!

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の実験的なワクチンヒトでの初期臨床試験を通過したようです。新しく発表された研究では、このワクチン候補はなんと97%の被験者で、研究者チームが期待していたような免疫反応を示したという結果です。重要なことは、このワクチンが安全免疫トレランス(免疫寛容、自分の体の構成成分に対しては免疫反応を示さない)が高いということです!

その名もeOD-GT8 60mer

このワクチン候補は「eOD-GT8 60mer」として知られ、スクリプス研究所(TSRI)の研究者によって開発されました。国際エイズワクチン推進構想(IAVI)がスポンサーとなった、このフェーズ 1(第1相臨床試験、全3段階ある臨床実験のうち、初めてヒトに行なう臨床実験)の結果は、2018年に初めて発表されました。これは、スクリプス研究所、米国国立衛生研究所(NIH)、フレッド・ハッチンソンがん研究センター、そして米国とスウェーデンの他のグループなどの科学者による大規模な共同研究の一環です。48人の健康な被験者が参加し、そのうち36人は8週間間隔で2回、ワクチンを接種されました(低用量投与群と高用量投与群で実施)。

現状、HIVに対する持続的な免疫には手が届かない

現在、HIV感染症は生涯にわたる抗ウイルス療法によって効果的に管理できます。しかし、ひとたび体内に入るとウイルスはその構造を巧みに変化させるので、ヒトの免疫系が長期間にわたってウイルスを認識することは困難です。このため、少なくともほとんどの場合、ウイルスに対する持続的な免疫には手が届かないのが現状です。しかし数十年前、ウイルスに対して幅広い中和抗体を産生でき、うまく対抗できる人もいることがわかって以来、この抗体を産生できるHIVワクチンを研究者たちは追い求めているのです。

新しい戦略がうまくいった

このような抗体を得るための新しい方法として、eOD-GT8 60merが目的としているような生殖細胞を標的にする方法があります。簡単に言うと、1回目のワクチン投与で免疫を担うB細胞の中でも希少な細胞群を、抗体産生できる状態に誘導しようとするものです。そして、その後の2回目以降のワクチン投与(ブースター接種)でこれらのB細胞を再び活性化させ、最終的にHIVに対して持続的で、幅広い中和抗体をつくるようにするのです。何と、今月12月2日『Science』誌に発表されたこの新しい試みの結果では、この戦略の最初の部分がうまくいっているようです!

その結果、36人中35人のボランティアがこの広域中和抗体の前駆体を生成し、この免疫反応は2回目のワクチン投与で初めて増強されることがわかりました。

重要な第一歩

今回の研究に関与してはいない、ミネソタ大学医学部のHIV医学プログラムディレクターであるティモシー・シャッカー氏は「ヒトにこの種の免疫を誘導することができれば、これまで効果的なワクチンの設計が難しかったウイルスから大勢の人を守れると期待しています」と、CNNに語っています。「ですから、これはとても重要な第一歩です」。

フェーズ 1 は、主に実験的な治療法の安全性を検証するために行なわれるものです。それによってこのワクチン候補の安全性は確認され、ワクチンに関連した重篤な副作用は認められないと発表されています。12月1日が世界エイズデーだったことを考えると、とってもタイムリーな結果です。

そうはいっても、この研究は概念実証に過ぎないと、この研究著者らはつけ加えています。今回得られたごく初期の知見を確かなものにして、ブースター接種によって広範な中和抗体を確実に誘導できることを示すためには、ヒトでのさらなる治験結果が必要です。真に効果的なワクチンは、HIVに対する広範なT細胞反応も起こさせなければなりません。なぜならT細胞は多くの場合、病原菌に対する免疫の決定的な役割を担うからです。しかし、もしこの研究がうまくいけば、HIVだけでなく、C型肝炎やインフルエンザ、Covid-19などの予防ができ、さらに継続的に予防効果を発揮するワクチンをつくれるかもしれませんね。

目下、eOD-GT8 60merの別のフェーズ 1 がすでに進行中で、他の類似のワクチン候補も試されています

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https://www.gizmodo.jp/2022/12/why-we-get-sick-cold-winter-nose-immune-response.html