スタンフォード中退生が創業したAI企業がスタンフォードを襲う⁉
AIなんでも回答マシン「Chat GPT」の開発元OpenAIにマイクロソフトが100億ドル(約1兆3000億円)もの巨額追加投資を決めて、グーグルやアマゾンの足元を不気味に脅かしていますが、地元の名門スタンフォード大学では早くも期末試験においてChat GPTを大いに参考にする学生が現れ、大学側が対応に追われています。
1兆円の賭け
100億ドルの投資はMicrosoftにとっても創業以来最大規模となります。
23日の公式ブログの発表には具体的な金額は盛り込まれていませんが、9日付けのSemaforの記事によれば、VC投資との合計でその金額になるとのこと。
投資分を回収するまでマイクロソフトはOpenAIの利益の75%を手にし、その後はOpenAI株式の49%を保有するほか、初期投資の見返りとしてOpenAIはマイクロソフトのクラウドサービスAzureを独占的に使用するアレンジメント。
Amazonのクラウドに斬り込む
「ChatGPTは何か質問するたびに数セントの処理コストがかかっている」とSam Altman CEOがツイ―トしているように、OpenAIはまだ赤字です。それなのに会社の評価額は、新規投資分を含めて290億ドル(約3兆8000億円)。今月第1週にはこの評価額をベースに社員と初期投資家に株を売っていいと許可が出ました(5日付けWSJ)。
赤字企業の評価としては破格値ですけど、Microsoftとしては、とにもかくにも世界3大AIに数えられるOpenAIをAzureに引き入れることで、AWS(Amazon Web Service)のクラウドのシェアを切り崩したいとの思惑があるようです。
OpenAIにはChat GPTのほかにも、人間ゲーマーに勝てるOpen AI Five、文字を入力するとイメージどおりの絵や写真が生成される「Dall-E(ダリ)」もありますし、マイクロソフトのOfficeやBingで使えるようになったらグンと身近になりそうですね。
Googleの検索コアビジネスも「コードレッド」
AIが人間の言葉でなんでも答えてくれるんなら、広告リンクを押さなくても用は足ります。
検索広告売上が会社の売上の8割を占めるGoogleにとっては死活問題!ということで、Google上層部は「コードレッド(会社のコアビジネスを揺るがす緊急事態)」を宣言。サンダー・ピチャイCEO自らがDALL-Eの対抗馬を急ぎ用意するよう檄を飛ばしているとNYTは報じています。
LaMDAに魂が宿ったと騒いた社員をクビにしてる間に、世の中はChat GPTに恋しているわけでして、確かにこの状況は”コードレッド”かも。
ところでOpenAIって何?
OpenAIはテック投資家Altman CEO(スタンフォード大は2005年に中退)とイーロン・マスクTesla CEO(スタンフォード大に実はいなかった)らが2005年に共同設立したAIリサーチラボです。
イーロンは2018年に会社を退きましたが、今も同じPayPal共同創業者のピーター・ティール、LinkedIn共同創業者リード・ホフマンらと10億ドルの初期投資をしたことで影響力を持っています。Twitterでコケてもただでは起きませんね…。イーロンが絡んでると大風呂敷が心配だけど…。
司法試験も期末試験もMBAもChat GPT
Chat GPTは昨年11月一般リリースになるなり1週間待たずにダウンロード100万回の大台に乗り、学生にも大量にダウンロードされました。カンニングを心配したNY、シアトルの教育委員会が学校での使用を禁じ、禁止の動きは全米のキャンパスに広まっています。
現にOpen AIのおひざ元のスタンフォード大学生新聞が行なったラフなアンケートでも期末試験で学生多数による使用が確認されました。「許可されていないデバイスの使用は禁じられています!」と大学側は注意喚起に大わらわ。
だいたいどれぐらいの実力があるかというと、世界屈指の名門ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールのMBA課程の期末試験で一丁前にBをとってパスできるほどのレベルにChat GPTは到達しちゃってるんですね。
高給取りのビジネスコンサルタントが泣く難問もお茶の子で、 正鵠を射る回答にChristian Terwiesc教授が舌を巻くほどです。
司法試験をやらせても意外と正答が多くて、ミネソタ大ロースクールの試験ではC+でした。大学の授業1回も受けてないAIがC+って、もう頭にろうそく立てて過去の判例記憶するのがバカバカしくなるほどです。不審なところといっても「怪しいぐらいに文法がパーフェクトなことぐらい」(教授)でした。
いや~Googleの心配してる場合じゃないですね…!