火星探査車パーサヴィアランス、岩石サンプル投下を完了

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火星探査車パーサヴィアランス、岩石サンプル投下を完了
パーサヴィアランスと(探査車の左側、地面にぽつんと置かれた)9本目のサンプルチューブ
Image: NASA / JPL-Caltech / MSSS

NASAの火星探査車パーサヴィアランスは、2021年2月18日に着陸して以来、ジェゼロクレーター西側を探査したり火星の地表を撮ったり、2030年代初めに地球へ輸送される予定の岩石サンプルを集めたりしながら日々を過ごしてきました。

赤い惑星でのサンプル採取・格納を経て、同探査車はようやくサンプルチューブの投下作業を完了。1月28日に最後の1本を地面に置きました。ちなみに最初に投下したサンプルは、1年近く前の2022年1月31日に岩石から採ったものだったそう。

岩石サンプルを採るにあたっては出だしでつまずいたパーサヴィアランス。しかし、地球からの汚染がないか判断するために火星の大気だけを詰めた比較対照用のサンプルも合わせて、今では計27本も集めました。

貴重な火星の研究資料となる

探査車は、ミッションチームが科学的に重要だと判断した岩石からサンプルを採取。それらが火星の地質学的、水文学的、気候学的、そしておそらく宇宙生物学的な過去についての知見をもたらすことになるでしょう。

サンプル投下作業では、10本のチューブを不規則なジグザグ線を描くように15~50フィート(約5~15m)ずつ空けて地面に散りばめました。しかし、これらはあくまでバックアップで、探査車内に保管されたままの17本こそが、火星から何百万マイルもの旅をする最初のサンプルとなるのです。

もしすべてが計画通りに進めば、10年後にはパーサヴィアランス内に格納されていたチューブがサンプル回収ランダーに引き渡され、マーズアセントビークルに積まれて火星を飛び立ち、最後に火星の軌道上で別の宇宙機に回収されて無事に地球へと運ばれます。この試みが滞りなく進めば、火星に送られて戻ってくる初の人工物となるはず。

これがマーズ・サンプル・リターン(MSR)ミッションの全体像で、パーサヴィアランスのサンプルの魅力的な未来ではありますが、そのフィナーレはだいぶ先。ミッションは2033年以降に予定されていますからね。

下の動画はカリフォルニアにある原寸大レプリカOPTIMISMを使って、探査車の投下能力をテストしているNASAエンジニアたちの様子です。

生命体の存在を探査

作業を終えた探査車は、三角州Three Forksから次の目的地へと移ります。この三角州は、火星の地表に水が流れジェゼロクレーターが湖だった数十億年前に形成された地形です。

NASAがこの場所を選んだのは、宇宙生物学的なポテンシャルがあるからでした。地上における最古の生命の痕跡とされている約35億年前のストロマトライトは、古代微生物によって固定した層状の岩石です。ストロマトライトは今でも地上に生息していて、西オーストラリア州の浅瀬の珊瑚礁にいるそう。

現存するストロマトライトが水流が浅いところで形成されていることから、パーサヴィアランスは火星にある似た環境を探査すべきとNASAは決めたのでした。現在の火星は乾燥し荒れ果てた場所ですが、三角州Three Forksとその近辺は、火星で生命(もし存在していたのであれば)を探すには理にかなった一帯です。

サンプル収集が終わった今、探査車はRocky Topという露頭を通過して三角州の上部へと、さらに三角州を進んでいきます。

カリフォルニア工科大学でパーサヴィアランスプロジェクトの科学者を務めるKen Farley氏は、JPLのリリースで述べています。

三角州の麓からRocky Topがある高度までの岩石は、湖水環境の中で堆積していたようだとわかった。三角州を上って河川の環境に入ると共に、より大きな粒子(砂から大きな玉石へ)で構成された岩石に移ると見込んでいる。それらはジェゼロの外の岩石から生じ、浸食してからクレーターの中へと流された可能性がある。

バックアップのサンプルはジェゼロの地表に横たわり、探査車の車内のサンプルは格納されたまま、回収ミッションの実現を待つことになります。地上のミッションスタッフが2030年代に向けて準備を進める間も、パーサヴィアランス(と火星ヘリコプターのインジェニュイティ)は、引き続き火星で新たな発見を続けていくでしょう。

火星でサンプルを回収するロボットアームのコンセプト動画

マーズ・サンプル・リターン(MSR)ミッションは、人間の介入なしに火星の岩石や土壌などの貴重なサンプルを持ち帰るという思い切った計画です。この計画の一端を担うの...

https://www.gizmodo.jp/2023/02/sample-transfer-arm-video-mars-sample-return-mission.html

Source: NASA JPL, NASA Mars(1, 2,), Britannica