ロケット打ち上げ失敗、4カ月間で6回。画像で振り返る

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  • author George Dvorsky -Gizmodo US-
  • [原文]
  • R.Mitsubori
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ロケット打ち上げ失敗、4カ月間で6回。画像で振り返る
Image: Shutterstock

宇宙はやっぱり、近くない。

先日、リラティビティ・スペース社の完全3Dプリントロケット「Terran 1」の初打ち上げが実施されましたが、軌道に乗らず、失敗に終わりました。実は、宇宙産業全体でロケット打ち上げ失敗はこの4カ月間で6回目。世界中で失敗が続いているのは残念ですが、驚くことではないかもしれません。

人類が初めて宇宙にロケットを飛ばしてから幾星霜、状況は刻々と変化しています。今や民間企業が参入し、急ピッチで革新的な計画を次々と打ち出す時代。宇宙業界では「失敗は成功のもと」という言葉が真実味を帯びています。その言葉を胸に、この4カ月を振り返ってみましょう。

ランドスペース社の朱鷺2号

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Image: LandSpace via Gizmodo US
朱鷺2号の打ち上げイメージ。

絶望の連鎖は昨年12月14日、中国のランドスペース社が開発した中型ロケット「朱鷺2号」の初打ち上げから始まりました。第2段エンジン(バーニアエンジン)が早期に停止したことから、ロケットと搭載された14基の商業衛星が失われたのです。

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Image: LandSpace via Gizmodo US
朱鷺2号の飛行イメージ。

もし「朱鷺2号」が打ち上げに成功していたら、メタンエンジン搭載ロケットとして初めて軌道に乗ることができた記念すべきミッションになっていたはず。結果は失敗でしたが、中国の民間宇宙飛行産業にとっては大きな出来事であり、大事なマイルストーンとなりました。

アリアンスペース社のヴェガC

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Photo: ESA/CNES/Arianespace/Optique Video du CSG/S Martin via Gizmodo US
ベガCの初号機打ち上げ、2022年7月13日。

アリアンスペース社の中型ロケット「ヴェガC」は2022年12月21日、2度目の軌道ミッション中に失敗しました。このロケットは、フランス領ギアナのクールーにあるギアナ宇宙センターから2基の地球画像衛星を搭載して飛び立ちました。

ロケットは4段式で、1段目から3段目までは固体ロケット、4段目のみ液体ロケットでした。トラブルが起きたのは切り離しの直後で、2段目の固体ロケット「ゼフィーロ40」に壊滅的な異常が発生し、予定していた飛行経路を外れて飛行を始めたのです。

調査の結果、ノズルに付いている「スロートインサート」という部品が失敗の原因であると判明。ゼフィーロ40の製造元であるイタリアのアビオ社は、必要な材料をウクライナの会社から調達しているとして、その責任を追及。ウクライナ国家宇宙庁を困惑させたといいます。

ヴァージン・オービットのランチャーワン

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Photo: Virgin Orbit via Gizmodo US
打ち上げ準備中のランチャーワン。

今年一発目のロケット打ち上げ失敗は、ヴァージン・オービット社の“Start Me Up”ミッションが実施された1月9日に起こりました。空中発射型ロケット「ランチャーワン」は母機コズミックガールから無事発射されましたが、搭載した7つの衛星を軌道に届けることはできず、すべてのペイロードが破壊されました。同社のダン・ハートCEOによると、打ち上げ失敗の原因はエンジン内のフィルターが外れ、「下流にいたずらをした」ためだそうです。

“Start Me Up”ミッションが成功していれば、イギリス国内初の軌道上発射となったはずですが、今回の失敗により同社の投資家は大混乱に。リチャード・ブランソン氏が設立したヴァージン・オービット社は今月はじめ、従業員を一時解雇する事態に陥りましたが、テキサスの億万長者と2億ドルの投資契約を結んだとのことなので、なんとか倒産の危機から脱するかもしれません。

ABLスペースシステムズのRS1

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Photo: ABL Space Systems via Gizmodo US
打ち上げ前のRS1。

1月11日、ABLスペースシステムズの「RS1ロケット」が打ち上げ失敗。これで1カ月間に3つのロケットが失敗したことになります。アラスカのパシフィック・スペースポート・コンプレックスから打ち上げられたこのロケットは、飛行開始数秒で9基のE2エンジンが停止。95%の燃料を搭載したまま地球に落下するという悲劇に見舞われました。このとき発生したキノコ雲は、約25マイル離れた場所でも見えたそうです。

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Photo: ABL Space Systems via Gizmodo US
エンジン作動時のRS1。

この事故でケロシン系のジェット燃料約5,200ガロン(約1万9680リットル)が流出したほか、作動油や鉱物油、潤滑油、灰、燃焼したバッテリー、炭化した瓦礫などが周辺環境に散乱。アラスカでは現在も清浄作業が続いています。

JAXAのH3ロケット

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Photo: JAXA
地上を離れて宇宙に向かうH3ロケット試験機1号機。

3月6日、日本のH3ロケットが初飛行に失敗し、高価な地球観測衛星が破壊されてしまいました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業の共同プロジェクトであるH3ロケットは、日本の次世代主力ロケットになるはずでした。その栄誉は、2段目エンジンの点火に失敗した原因をしっかり調査し終えるまで、おあずけということに。

地上管制官は自爆指令を出すことを余儀なくされ、H3と高度地球観測衛星ALOS-3は太平洋に落下。JAXAが試験機であるH3に2億ドル(約280億円)の衛星を搭載するというリスクを選択したことについて、JAXAを退職した宇宙飛行士の野口聡一さんは「ダミーでも良かったのでは?」といった趣旨のツイートを投稿しています。

リラティビティ・スペースのTerran 1

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Photo: Relativity Space via Gizmodo US
Terran 1の初飛行。

直近の打ち上げ失敗は、3月22日に起こりました。ケープ・カナベラル空軍基地の第16号復号発射施設から夜間発射されたリラティビティ・スペースの「Terran 1」の第2段エンジンは点火したものの、その後噴出。ロケットが失われることとなりました。“Good Luck, Have Fun”と名付けられたこのミッションには、顧客ペイロードは含まれていませんでした。

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Photo: Relativity Space via Gizmodo US
Terran 1のエンジン(9基)が作動。

「Terran 1」は軌道に乗ることができませんでしたが、カリフォルニアに拠点を置くリラティビティ・スペース社は「重要な目標が複数達成された」と今回の打ち上げを前向きに受け止めています。ロケットは離陸しただけでなく、Max-Qという最も強い空力的ストレスに耐えることができたため、同社はGLHFミッションについて「3Dプリントロケットが構造的に成立するという我々の仮説を証明した」とツイートしています。

心配される今後のプロジェクト

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Image: SpaceX

このように、わずか4カ月の間に宇宙業界には色々な苦難がありました。今後、心配されるプロジェクトとしてはSpaceXのスターシップ(イーロン・マスク氏はミッション成功率50%と予想)、Arianspaceのアリアン6、ULAのバルカンケンタウルス、Blue Originのニューグレン(来年打ち上げ予定)などがあります。2023年になっても、宇宙は簡単じゃないのです。