親は子どもの投稿も閲覧可能に。
米ユタ州が子どものSNS利用について、結構強めの法案を成立させました。まず1つめは、18歳以下がInstagramやTikTokなどのSNSアプリを利用する際に親の同意が必要。2つめは、18歳以下は22時半から朝の6時半までSNSを利用禁止。
子どもとインターネットの関係に新しいスタンダードを作った形となります。アメリカ人の多くは、子どものSNS利用について何か対策が練られるべきと考えていますが、この方法はまた新たな問題を生むのではないかと賛否両論があります。
プライバシー侵害の拡大も
SNSの利用に関する取り組みは、珍しく民主党と共和党が団結しあって進めているプロジェクトの1つ。アーカンソー州、ルイジアナ州、オハイオ州、ニュージャージー州、テキサス州が、今回のユタの州法と同じような規制を進めているとのことです。去年カリフォルニア州では子供のプライバシー保護のための「年齢適正デザインコード(The Age Appropriate Design Code)」という法案に署名がされています。
子どもを守りたい気持ちは誰だって同じ。でも、どうやって守るかが大切ですよね。ユタの州法ではソーシャルメディアを運営するテック企業に、利用者の身分証明書や公式の書類を提出させることを義務付けるようですが、それによってテック企業がさらなる個人情報を手に入れることを許してしまうわけです。
テック企業の中でもこれについては賛成意見と反対意見に別れていて、「オンライン上で子どもを守るための第一歩だ」、「年齢確認のためだけはなく、親子関係も証明することになる」と賛成するところもあれば、「子どものプライバシーや言論の自由を侵害している」というところもあります。
米企業も大量の個人情報を握っている?
今回のユタの州法ですが、実は中国が2021年に制定した「子どものゲーム時間は週3時間まで」というゲーム中毒対策にとても似ています。ちなみに中国といえば、政府が企業に対してデータがが欲しいといえば強制できるため、TikTokは中国政府に情報を共有しているとささやかれています。そんなTikTokをアメリカは、政府で働く人たちの公用スマホでは利用禁止する動きを見せています。
本当に中国政府がTikTokを通してユーザーのデータを収集していたとしたら、ゾッとするくらい世界中のTikTokユーザーのデータが握られていることになります。そんな状況を怖がっているアメリカ政府も、実は過去に国内でテック企業からデータを頂戴していたことが明らかになっています。
ユーザーのデータを横流ししている疑惑はTikTokだけの話ではありません。2020年に米ギズモードが行なった調査では、Facebook、Instagram、YouTube、そしてTwitterも中国の複数の企業とデータをシェアしていました。またアメリカ連邦政府は、テック産業にユーザーのプライバシー保護を破ることを許しているため、中国政府はアメリカの企業からデータを購入することができるのです。
プロパガンダも思慮すべき問題です。でも、Facebook、Instagram、Twitter、YouTube、そしてGoogleは社外の人では理解できない方法でコンテンツを操作しているんです。では、なぜそんなにTikTokばかりが怖がられる対象なんでしょうか?
おそらくそれは、中国に厳しい対応をすることは政治的にポイントが高いからです。アメリカの企業に対して厳しくすると、自分の党を支持してくれている有力な支援者を敵に回してしまうからですね。
アメリカ連邦政府は、過去4年間ずっとTikTokに対して国家安全保障の不安への解決策を出さない限り、禁止にするぞと警告してきました。3月23日にアメリカ議会はTikTokのCEOであるShou Chew氏を招いた5時間にも渡る公聴会を行ないましたが、中国政府に情報提供をしていることについての疑惑の払拭はできず、アメリカがTikTokを禁止にする可能性は高まってきています。
ただ、アメリカ政府がアメリカで運営をしている企業を合法的に排除することができるのかどうかは不明です。確たる証拠が出てくればできるでしょうけどね。というわけで、TikTokを含むSNSに子どもの「門限」を作ったユタ州、もしかしたら先駆けになるのかもしれないですね。