ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた、光り輝くパンドラ銀河団

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  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 佐藤信彦/Word Connection JAPAN
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ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた、光り輝くパンドラ銀河団
Image: NASA、ESA、CSA、I. Labbe氏(スウィンバーン工科大学)、R. Bezanson氏(ピッツバーグ大学)、A. Pagan氏(STScI)

ウェッブ宇宙望遠鏡で新たに撮影されたディープフィールド画像には、銀河団の衝突により3億5000万年かけて形成されたパンドラ銀河団(Abell 2744)の、明るい領域が写っています。

パンドラ銀河団が撮影されたのは、これが初めてではありません。米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡やチャンドラX線観測衛星など、多くの望遠鏡が何度もその姿を捉えてきました。

そして、ついに100億ドル(約1兆3303億円)かけて作られたウェッブ宇宙望遠鏡が、遥か彼方にあるこの銀河団に輝く5万個もの光を写し出したのです。

時空の歪みを活用して光をキャッチ

欧州宇宙機関(ESA)のプレスリリースによると、この写真はウェッブ宇宙望遠鏡で撮影した4枚の画像を合成したもの。撮影は約30時間かけて行なわれたといいます。

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Image: NASA、ESA、CSA、I. Labbe氏(スウィンバーン工科大学)、R. Bezanson氏(ピッツバーグ大学)、A. Pagan氏(STScI)
ウェッブ宇宙望遠鏡が先ごろ撮影したメガクラスター「パンドラ銀河団」

今回、遠くから届く微かな光を観測するため、重力レンズという時空の歪みを利用。遠方から地球へ届く光は、途中にある強大な質量を持つ物体の近くを通る際、強力な重力に影響されて進行方向を変えます。これが重力レンズによって起きる現象です。

光が曲げられると、基本的には拡大されるように焦点が変化するため、隠れていたり暗すぎたりして観測しにくいはずの天体も、ウェッブ宇宙望遠鏡などで見やすくなるのです。

重力レンズを通すと、観測対象は歪んで見えることが多く特徴的な弧の形を描きます。たとえば、天文学者のグループが2022年に発見した観測史上もっとも古い天体は、130億年近く前に形成されたガス雲で、重力レンズ越しに見ると細い光の弧になっていました。

超深宇宙を探査するプロジェクト

先ごろ撮影されたパンドラ銀河団の画像は、近赤外線分光器(NIRSpec)と近赤外線カメラ(NIRCam)で超深宇宙を探査するプロジェクト「UNCOVER」の成果です。

ちなみに、UNCOVER(秘密を暴く)という見事なプロジェクト名は、「Ultradeep NIRSpec and NIRCam ObserVations before the Epoch of Reionization(再電離期以前の超深宇宙をNIRSpecとNIRCamで観測)」から捻り出されました。活動目的である宇宙初期に形成された銀河の撮影に成功すれば、宇宙再電離の原因となった銀河を見つけられるでしょう。

今後もUNCOVERの活動は続きます。チームのメンバーはNIRCamの画像データを参考にして、この画像に写った天体までの距離をウェッブ宇宙望遠鏡のNIRSpecで求め、これら銀河の誕生に関する情報を集める計画です。ESAのプレスリリースによると、この観測は2023年夏に予定されています。