2009年、バラク・オバマ氏が大統領に当選した時は、わかりやすく語りかけるスピーチの上手さとともに、SNSの使い方も勝利の鍵になったと絶賛されました。時は流れ2023年。来年行なわれる米大統領選はAI合戦になるかもしれません…。
バイデン大統領がもし再選したら?をAI生成
バイデン大統領が再選へ向けて大統領選へ出馬を表明後、共和党が公式YouTubeアカウントに動画を公開。バイデン大統領を批判する内容ですが、実はこの動画、AIによって作られたものでした。
共和党がアップした動画のタイトルは「Beat Biden(バイデンを倒せ)」。2024年にバイデン大統領が再選したらどうなってしまうのか、国が直面するかもしれない未来をAIに生成させています。
内容は、中国の台湾侵略、経済崩壊、押し寄せる移民、犯罪増加。そして、そのすべての責任がバイデン政権にあると強い批判メッセージを発しています。
共和党が動画制作に使用したAIは明かされていないものの、The Vergeは、MidjourneyやDALL-E 2は政治的コンテンツの出力には制限があることから、ユーザー好き勝手に作れるStable Diffusionが有力だと予想。
AI生成だと気がつかない人も
共和党の動画は、左上に小さくですがAI生成画像で作った動画という注意書きがあります。YouTubeページの詳細にも、AI生成という説明があります。
が、問題は見る人全員がこの注意書きに気づくとは限らないということ。つまり、AI生成とリアルの見分けが難しい場合があるというのが、AI生成コンテンツの問題の根幹にあります。
バイデン氏の出馬で「打倒バイデン!」とバチバチに対抗意識を燃やしているトランプ前大統領。そのトランプ前大統領は、先日、逮捕偽画像が世界中でバズってしまいました。画像の不自然さ(顔周りのボケ)から、フェイク画像というのはすぐにわかるのですが、そこはやっぱりネット。急速に拡散された上に、近日逮捕の話がでていたこともあって信じてしまった人もいたでしょう。
同じくAI生成画像で大きな注目を集めたのが、真っ白なダウンジャケットのローマ教皇。こちらもフェイクなのですが、教皇の着こなしがなかなか見事で思わず信じてしまった人もいたはず。
トランプ前大統領の逮捕フェイク画像拡散後、Midjourneyは無料トライアルを終了しています。ただ、フェイク画像との関連は否定しており、無料版終了はあくまでも乱用が理由としています。
リアルすぎるテクノロジー、どう扱えばいい?
今回のバイデン政権批判動画によって、少なくとも共和党は生成系AIを選挙活動に表立って利用していく方針であることはわかりました。
AI生成とリアルを見分けるのは、テクノロジーのいたちごっこ。ならば、そのテクノロジーを提供する側が、ウォーターマーク付けなど、何かしらの対策を講じる必要があるのかもしれません。来年の米大統領選挙を前に、いよいよその必要性が高まりそうです。