テクノロジーには抗うべきか、歩み寄るべきか。
カナダの歌手、グライムスはテクノロジーとの共存を選んだようです。
生成系AIが作った楽曲の著作権が問題になっていますが、グライムスは自ら使用OKにする考えを発表。使用OKとは、AIを使って彼女の声を再現し曲を作って発表してもいいということ。
ただし、これにはAI楽曲のロイヤリティ(印税)の取り分を折半するという条件があるんです。
AI生成楽曲にポジティブな姿勢
グライムスは、AI楽曲についてTwitterに意見をポスト。ドレイクとザ・ウィークエンドのAI生成楽曲がリリースからの取り下げで注目されましたが、グライムスはその関連記事を一緒にツイートしました。
私の声を使ったAI生成楽曲で成功したら、ロイヤリティを折半すればいい。これは、ほかのアーティストとコラボする時と同じ条件。罰則なしで私の声を自由に使っていい。レーベルや法的な拘束はなし。
I'll split 50% royalties on any successful AI generated song that uses my voice. Same deal as I would with any artist i collab with. Feel free to use my voice without penalty. I have no label and no legal bindings. pic.twitter.com/KIY60B5uqt
— 𝔊𝔯𝔦𝔪𝔢𝔰 (@Grimezsz) April 24, 2023
また、「マシンと融合するのはクール」だと語り、すべてのアートのオープンソース化と著作権の廃止に賛成という意見も付け加えています。
AI楽曲で使用された場合の自身の立ち位置(クレジット表記するかどうかなど)はまだどうなるかわからないとし、そこも含めてグライムスは実験的な取り組みに前向きなよう。
ロイヤリティの折半のほかに、有害な歌詞や政治的コンテンツには自分の声を使用しないよう呼びかけています。悪用された場合は著作権違反として取り下げを求める姿勢ですが、著作権廃止に賛成しているだけに少々矛盾も感じつつ…。
現実的な話はまだこれから…
彼女の声をサンプルとして作られたAI楽曲がヒットすれば、グライムスは何もせずともロイヤリティを得ることができます。
が、声の再現とはどの程度の話なのか、使用楽曲のチェックはどうするのか、有害な歌詞の判定とその対応はどうするのか…、現実的な話はまだこれからの様子。これらの対応を加味しても、「何もせずに生まれる利益」がプラスになるのか、そこも実験的取り組みなのでしょうね。
余談ですが、グライムスといえばイーロン・マスクの元彼女で、2人の間には子どももいます。AIやオープンソースへの興味は、マスクと共通しているのかもしれませんね。
AI普及においてアートの著作権は最も大きな課題の1つ。たとえば、ユニバーサルミュージックグループは、SpotifyやApple Musicなどの音楽配信サービスに対して、自社アーティストの著作権素材に対するAIのアクセス制限を申し入れています。
自分の作品(グライムスの場合は声)を、AI生成コンテンツへの貢献として報酬をもらうのか、それとも禁止していくのか。生き残るのは、うまみがあるのはどちらなのでしょう。