それは倫理観の問題…。
AIが作り出すコンテンツが急速に広まっており、テキストはもちろん、音楽や画像、動画とあらゆるジャンルが良くも悪くも盛り上がっています。著作権やフェイク画像など、問題視される部分も多々あります。
フェイクコンテンツは人を楽しませるネタですむ場合と、人を深く傷つけてしまう場合がありますが、今回は明らかに後者。ドイツのタブロイド誌Die Aktuelleが、ミハエル・シューマッハ氏の偽インタビューを公開。家族から怒りの声が上がっています。
AIにシューマッハ役をやらせてインタビュー
4月中旬、Die Aktuelleが公開したインタビュー記事の見出しは「ミハエル・シューマッハ、初のインタビュー」。小見出しには「騙されるほどリアル!」とあります。騙されるほどリアルとは…?
実はこれ、シューマッハ氏本人にインタビューしたものではなく、AIがなりきって答えたAI生成の偽インタビューだったのです。記事には「」を使い、あたかも本人の言葉をそのまま引用したかのように見せるレイアウトも…。記事の最後の方には、AIが生成した架空のインタビューであると書かれていますが、全体的に本物っぽさ全開の作りになっています。
偽物と記してはいるけれど、全部をよく見ないとわからない。それがAI生成コンテンツで、今、まさに不安視されている問題の1つです。トランプ前大統領の逮捕画像や、ローマ教皇のホワイトダウンジャケットが世界中で拡散され、少なくない人が騙されました。
シューマッハ氏の家族は、この記事に対して法的対処をとる方針。出版社は家族に謝罪、編集長はその職を解かれました。シューマッハ氏は2013年のスキー事故以来、表舞台にでることはほぼなく、家族もプライバシーを最優先に考え、氏の健康状態も最小限の公表にとどめています。
AIにキャラ設定をつけてそれっぽく話をさせることは可能です。AIやってみた系でSNSでもみかけるネタです。
ただ、今回のように雑誌が本人・家族の許可なく偽インタビューを掲載してしまうのは、明らかにメディアの倫理観の失念。AIのキャパと人が倫理的に許されるキャパはイコールではない。もう一度気持ちを引き締める必要がありそうです。
Source: CNN