EUではどうなる、ChatGPT。
アメリカでは好かれているChatGPTですが、ヨーロッパとはあまりうまくいっていません。ヨーロッパのAIに対する政策も、ChatGPTの生みの親OpenAI サム・アルトマンCEOの姿勢も、変わったり戻ったり、また変わったりです。
どういった状況下を紹介します。
<目次>
EUで見せた、協力姿勢といらだち
アルトマン氏は世界各国を巡って要人たちとAIやChatGPTについて意見交換をしています。先週5月24日にはロンドンで開催されたイベントに出席。
アルトマン氏はここで「EUが準備しているAI規制をできるだけ順守してみる」と言いつつも、「EUの定義するハイリスクついてはいらだちを隠せない」とも発言。
「ハイリスクなAI」には厳しい規制がかかる
EUは2021年にAI規制法案を公表。AIを「許容できないリスク」「ハイリスク」「限定的なリスク」そして「最小限のリスク」の4段階のリスクに分けるものです。
基本的権利の侵害をしている「許容できないリスク」のAIは禁止され、「ハイリスク」のAIはEU当局による適合性評価を受けたり、情報提供の義務など厳しい規制がかかります。
「EUではChatGPTを停止」発言
アルトマン氏は、現在の法案ではChatGPTもGPT-4もハイリスクに分類されてしまうと懸念していて、24日のロンドンでは「順守できるものはするつもりだが、できない場合は事業を停止するつもりだ。やるだけやってみるが、技術的な制限でできないこともある」と発言しています。
EUが規制強化を進める理由
実際のところこの法案は、中国の社会信用システムや顔認証機能のようなAIが誕生する可能性を牽制するためのものでしたが、OpenAIなどのAI企業が続々と現れてきたので、なんだか動きが激しくなってきたというわけ。
去年12月、EUは新しい規定草案を法案に入れAIチャットボットを動かす「基盤モデル」に関しての安全チェックとリスクマネージメントを課すようにしました。この変更は今月5月に承認されています。
EUはアメリカと比べてOpenAIに対してめちゃめちゃ厳しくて、欧州データ保護議会はChatGPTがしっかりプライバシー法を守っているか、専用タスクフォースを結成してゴリゴリに監視していました。
AI法案はまだ定まっておらず条文も変わっていく段階ということもあって、アルトマン氏は今回、意見交換世界ツアーをしているのでしょう。
アメリカ政府とはいい感じ
EUとは苦労しているアルトマン氏ですが、ChatGPTが好きなアメリカでは逆に、政府と協力したい気満々。AIに対する安全基準の規制を設けることや、基準を満たしているかどうかプロダクトを検査する政府機関を作る提案まで先日のアメリカ議会でしています。
ただ一点だけ、アルトマン氏が反対したのは「ユーザーがAIを利用することを制限するような規制」は行なってほしくないと話したそうです(ロンドンでも、小さな会社が苦労するような状況や、AIのオープンソースの動きを規制するなどは起こってほしくないと発言しています)。
EUはAI法案を修正、アルトマン氏は発言を撤回
これまでChatGPTを禁止した国はいくつかあり、イタリアは3月に禁止をしていましたが、OpenAIがユーザーが自身の間違ったプライバシー情報へアクセスできるように迅速に動いたため、ChatGPTの使用を解禁しています。
また、EUもChatGPTのような生成AIの登場を踏まえてAI法案を修正しています。「そんなきついならもうヨーロッパいいわ」と強気発言していたアルトマン氏もそれは撤回、「やっぱりEUを去ることはない」と述べていますが…。
ヨーロッパ vs OpenAIのせめぎ合いは続いています。