ハリウッドのストライキ、脚本家側が勝利。AI対応はどうなる?

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  • author Linda Codega - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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ハリウッドのストライキ、脚本家側が勝利。AI対応はどうなる?
Image: Mario Tama / Staff (Getty Images)

AIの考え方やストリーミング対応などなど。

AIへの対応や脚本家の待遇改善などをめぐって150日近くにわたりストライキを継続していた、全米脚本家組合(WGA)。今週、ついに全米映画・テレビ製作者同盟(AMPTP)との合意に達し、事態は収束に向かいつつあります。WGAはAMPTPとの了解事項の覚書と、彼らが勝ち取った権利の詳細を発表しました。

ハリウッドで脚本家と俳優たちによるストライキ。これってどうなっているの?

ハリウッドで俳優労組と脚本家組合がストライキに突入。待遇改善とAI利用制限を訴えている。

https://www.gizmodo.jp/2023/07/hollywood-on-strike.html

AIの手綱は脚本家が持つ

まずはAIに関して。

AMPTPにとっては、脚本家に代わってAIに台本を書かせる権利がカギだと想定されていました。でも今回の合意では、プロジェクトの中でAIをどう使いたいか、どう使ってほしいかは脚本家側で判断できるようになっています。

WGAの要約によると、

・AIは作品の執筆や加筆はできず、AIの生成物は原作としては認められない。つまりAIによる生成物は、脚本家のクレジットや分離権(訳注:TVなどの作品の著作権から派生して脚本家に認められる権利)の侵害に利用されてはならない。

・製作会社が同意し、脚本家が企業の方針に従う限り、脚本家は執筆活動にAIを使用できる。ただし制作会社は、脚本家の執筆活動にあたり、AIソフトウェア(例:ChatGPT)の使用を要求してはならない。

・製作会社は脚本家に対し、脚本家に与えられた文書がAIにより生成されたものであるか、AIにより生成された文書を含むものであれば、それを告知しなくてはならない。

・脚本家の作品をAIの訓練に利用することは、この合意または他の法律により禁止されている、と主張する権利をWGAは有する。

この最後の部分があることで、AIが合意に反するような形で使われたとき、WGAはAMPTPを再度交渉の席に着かせることができるわけです。

待遇の改善

番組制作時に製作会社が脚本家の作業部屋として設置する「ライターズルーム」についても、WGAの要望が認められました。脚本家の最低賃金も底上げされ、製作会社から脚本家の年金や健康保険への拠出も増額されました。

待遇改善要望の背景には、ストリーミングサービスの台頭による番組の短期化・小規模化があります。かつてはライターズルームに複数の脚本家が集まり、長期間共同作業して台本を書き上げることが一般的で、その間脚本家には安定した賃金が支払われていました。でも最近は製作会社のコスト削減のため、「ミニルーム」と呼ばれる簡易な方式が濫用されていたのです。X(旧Twitter)には、そんなミニルームの体験談があふれています。

私は4週間のミニルームにいた。

脚本家2、3人で、10エピソードのシーズン全体のプロットを、たった4週間で書かされた。

その後ミニルームは閉じられ、我々はエピソードを同時並行で、書くように丁重に依頼された。ルーム退去後に。執筆にかかる時間は、無償で。

2021年、Netflixで、アニメーション・ギルドのアニメ番組の会議要請があった。Netflixは「新たなプロセス」のための「新たな声」を求めていた。

そのプロセスとは? シーズン全体のプロットを、1回の週末で書き終えることだった。その後、脚本家はフリーランスになる。

シーズン全体での支払いは9,000ドル(約130万円)だった。

またストリーミングサービスに関しては、脚本家が「視聴数ベースのボーナス」を受け取れることになりました。

製作会社はWGAに対し「自社製作の高予算ストリーミング番組(例:Netflixオリジナルシリーズ)が、国内外でストリームされた総時間」を明らかにする必要があります。WGAはこのデータを「集計した形」で組合員に共有できます。

脚本家への還元が増加

WGAの組合員は、今回の合意を受け入れるかどうかの投票を行いますが、全体的には脚本家に有利になる内容です。

WGAの当初の要求では、AMPTPのコスト負担は毎年4億8800万ドル(約730億円)と見積もられていましたが、今年5月のAMPTPの回答では年間8600万ドル(約130億円)とはるかに小さくなっていました。

でも今回の合意では、それが2億3300万ドル(約350億円)となっていて、当初の要求の半分以下ではあるものの、だいぶ認められた形です。

ちなみにWGAと一緒にストライキを行っていた映画俳優組合-米国テレビ・ラジオ芸能人組合(SAG-AFTRA)は、まだストライキ継続中です。

WGAは引き続き、SAG-AFTRAの活動も支持していく方針です。