街着でも放置はダメ。GORE-TEXの機能を維持するメンテナンス

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  • author 山田卓立
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街着でも放置はダメ。GORE-TEXの機能を維持するメンテナンス
Image: shutterstock

ウエアやシューズ、手袋など、あらゆるプロダクトで採用されている「GORE-TEX」。防水性、透湿性、防風性を兼ね備えた、とても頼りになる機能素材です。

ところで、そんなGORE-TEX製品のメンテナンスはどうしていますか? まさかほったらかし…!? 実は、素材の機能をきちんと維持させるには、それなりのお手入れが必要なんです。

たとえば洗ってしまうと、「撥水機能が落ちてしまうのでは…」とか、「そもそも自宅で洗えるの?」なんて不安がよぎりますよね。そこで、GORE-TEXウエアのメンテナンスについてご紹介します

GORE-TEX製品って自宅で洗えるの?

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Photo: 内山めぐみ
お話をお伺いしたReBIRD™(リバード)サービスカウンターの山口泰一さん。

多くGORE-TEX商品を展開するアウトドアブランド・アークテリクスでは、「アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア」に、国内初の修理窓口「ReBIRD™(リバード)サービスカウンター」が併設されています。

サービスカウンターには、GORE-TEX商品に関する問い合わせが多く、サービスカウンター専任スタッフの山口泰一(たいいち)さんが、カウンターでどのような対応をしているのか教えてくれました。


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Image: ARC'TERYX

山口さん:GORE-TEX商品のメンテナンスについて、我々がカウンターでお伝えしているのは、『とにかく洗ってください』ということです。 一般的な衣類と同じ頻度でご自宅でのお洗濯をおすすめしています。ここは“修理受付カウンター”として営業していますが、多くの問い合わせがGORE-TEXのメンテナンスについてです。


GORE-TEXは、「防水」「透湿」「防風」の機能を持つGORE-TEXメンブレンに、表生地と裏生地を貼り合わせた構造です。表生地には、「撥水」加工が施され、透湿性を妨げる表生地表面上の水の飽和を防いでいます。これがGORE-TEXの機能ですが、GORE-TEXの機能的な劣化を早める原因のひとつが洗濯不足による汚れによるものです。

「洗っていいの?」そんなやりとりがサービスカウンターでは日々行われているようです。

どうしても機能性のことを考えると、撥水加工が剥がれてしまうだとか、生地が傷んでしまうと考えてしまいがちですが、むしろ「洗わない」はウエアにとても良くないとのこと。早くも目から鱗です。

GORE-TEXウエアの洗い方

さっそく山口さんに自宅でのGORE-TEXウエアの洗い方について伺いました。基本的には下の流れになります。ただし、必ず洗う前に、洗濯タグに記載された「洗濯取り扱い表⽰」にて注意事項などの情報を確認してください。

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Image: ARC'TERYX

①洗う前の準備

ドローコードを緩めます。やはりシワになっている部分は汚れが落ちにくいので、すべてのドローコードを緩めましょう。洗濯のたびにしっかり汚れを落とすことが機能性のキープ、ウエアの長持ちにもつながります

次に、フロントのファスナーがついている場合、上までしっかりと閉じ、ポケットはすべてファスナーを開けましょう

フロントのファスナーは、開けた状態のままだと洗濯機内でほかの洗濯物と絡まったり、それによって引っ張られるのを防ぐため。一方、ポケットを開ける理由は、ポケット内に水が入ってしまうと脱水してもそのまま水が抜けないことがあるためです。

「ドローコードは緩める」「フロントファスナーは締めて、ポケットはすべて開ける」。これでひとまず準備は完了です。

②液体洗剤を使用

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Image: shutterstock

使用する洗剤は、粉末ではなく、水に溶けやすい液体の中性洗剤であればなんでもOK。 ただし、柔軟剤や芳香剤、漂白剤入りのものは避けましょう。 アウトドアショップなどで売っているウエア専用の液体洗剤でももちろんOK。とにかく液体洗剤であることがとても重要です。

ただし、柔軟剤や芳香剤、漂白剤入りのものは避けましょう。また、家庭用の洗剤は洗浄力が高いので、通常よりも少量で問題ありません。それよりも、大切なのは洗った後のすすぎ。汚れも洗剤も残さずにしっかりとすすぐことがポイントになります。

③すすぎは通常のプラス1回

洗剤によってすすぎの回数が表記されているものがありますが、その表示回数のプラス1回すすぐようにしましょう。汚れの付着同様に洗剤の残りも機能性を損なう原因となるので、2回以上しっかりとすすぐことがGORE-TEXの機能性を持続することにつながります

④脱水は短時間。乾燥は陰干し

次に乾燥です。推奨しているのは陰干しでしっかりとウエアを乾かすこと。脱水が終わった後、製品を洗濯機から取り出すと、水が垂れ落ちるこちがありますが、素材自体が水分を吸収しないため、生地の表面に残っている水がおちている状態。ある程度水が切れたら、干しましょう。

洗濯機の脱水機能を使用しても構いませんが、GORE-TEXウエアの撥水素材はもともと水を吸収するものではないので、脱水より陰干しを推奨しています。

⑤仕上げは熱処理

乾燥が完了後、撥水機能を回復させるために熱処理を加えます。低温で乾燥機を使用するか、当て布をしてアイロンを当てることで、生地表面の産毛状の撥水基が熱で立ち上がり、撥水効果を復元することができます

アイロンの場合はスチームせずに当て布をしてゆっくりと熱を加えていくことがポイントです。

GORE-TEXメンテナンスのコツ

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Photo: 山田卓立

GORE-TEXのメンテナンスについて、よく問い合わせがある内容について、アークテリクスのマーケティングの三原淳也さんに回答いただきました。

Q:どれくらい着用したら洗濯すべき?

三原さん:洗い方としてご紹介した上記の工程を毎回行うのは大変だと思います。ただし特に冬場は着用する機会が増えると思いますので、たとえば、1泊2日のキャンプや登山をしたら、一度洗うなど、とにかく汚れたらメンテナンスをするということを心がけていただきたいです。

ウエアの汚れは必ずしも外側だけではなく、汗や整髪料、日焼け止めなど実は内側も汚れています。これらの機能性を損なう原因になりますので、「汚れたら洗う」「使ったら洗う」という心がけが大切ですね。

Q:乾燥にはどれくらい時間をかけるべき?

三原さん:GORE-TEX商品は撥水機能がありますので、 生地自体は洗ったあとにビショビショということはないと思います。葉っぱのうえに水の気泡が乗っているような状態ですね。

なので、乾燥機の場合は目安としては低温で20分。自然乾燥の場合、ある程度湿気がなくなるまで乾燥させれば大丈夫です。目安としては低温20分。ある程度乾燥させて、そのあとにしっかりと熱処理をすることの方がウエアにとっては望ましいです。

Q:洗剤はどのようなタイプがいい?

三原さん:弊社としては石鹸はおすすめしていません。石鹸はどうしても油分が残りやすく水に溶けにくいので、しっかりとすすいでも落としきれないことがあります。

したがって、シンプルに柔軟剤などは使わずに液体洗剤で汚れを落とすということだけを考えて洗ってください。

街着で着用しているGORE-TEXはよりメンテが必要

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Photo: 内山めぐみ

アークテリクスの特徴のひとつとして、アウトドアユースはもちろん、タウンユースとしても広く受け入れられています。山口さん曰く、ここにも見落としがちなメンテナンスの盲点があるといいます。

山口さん:普段使いしているお客様の方が圧倒的に洗濯不足で、機能が落ちていることが多いと感じます。

アウトドアユースであれば、多い方でも使用頻度は週1、2日程度ですが、タウンユースはほぼ毎日使われる方が多いですよね。すると、首周りの皮脂や整髪料、袖口・裾の摩耗もその分劣化が激しく、かつ洗うタイミングもシーズンが終わるまでしないという方がほとんどです。

使用頻度はアウトドアよりも、普段使いの方が高いことから、日頃のメンテナンスがとても大切なんですね。まずは、習慣化できるように心がけたいところです。


どのブランドでも、「GORE-TEX」タグがついていると、思わず触手が伸びてしまう人も多いはず。でも、ファッションとして消費されるウエアであっても、「ギア」としてメンテナンスをきちんと行うことで、機能とウエアの寿命を延ばすことができれば、ユーザーとしてはこんなうれしいことはありません。

今回ご紹介したGORE-TEXのメンテナンスを自宅で試してみて、「GORE-TEX」の“防水機能の復活”を肌身に体験すればメンテナンスも楽しくなってくるはず。

ぜひ動画も参考にしてみて。

Source: ARC'TERYX