耳の感覚に従うべし。
2023年9月に、Jabraの最新ワイヤレスイヤホン「Jabra Elite 10」が発表されました。約3年ぶりのフラッグシップモデル更新ということで僕もずーーっと気になっていたのですが、先日ついに購入しました。
みなさんはワイヤレスイヤホンで何を重視しますか? 音質、デザイン、ノイキャン、製品の珍しさ、多機能さなどなど…。いろいろありますが…僕はフィット感を何よりも重要視しています。
で、装着したときの心地良さや違和感のなさを重視すると、必然的にあるブランドにたどり着くんです。コペンハーゲンに本社をおくGNグループのオーディオブランド。それがJabraです。
「耳」のノウハウがすさまじいメーカーの新作
さかのぼると、僕がJabraのファンになったきっかけは「Jabra Elite 75t」でした。耳に入れたときのフィット感のよさに驚いて、そこからずっと信頼しています。少し前に「Jabra Elite 5」もレビューしましたが、これも隠れた名機でした。
GNグループは補聴器やヘッドセットで知られた会社です。約150年の歴史があり、「耳」に対するノウハウの蓄積はすさまじいものがある。スピーカーなども手掛けていますが、これも音楽向けというより会議などのオフィス向けが多いです。
こうした姿勢が、いわゆる一般的なオーディオ趣味としてのイヤホンに比べて「シブくていいじゃん」と感じたのも、好きになったきっかけ。
歴代でもっとも「耳当たり」がソフト
Jabra愛を語ったところで、最新モデル「Jabra Elite 10」を見ていきましょう。
イヤホンの形状はコロンとしたカナル型で、重量は片耳あたり約5.7g。重量だけを見るならもっと軽いイヤホンもありますね。
でも、これがまたフィット感いいんですよ。いろいろな比喩言葉を考えたんですが、「耳に吸い込まれる」「イヤホンが耳と一体化していく」「え、着けてた?」みたいな言い方をしたい。
耳に当たる部分をじっくり確認すると、その理由がわかります。大豆やそら豆を思わせる絶妙な湾曲を描いており、どこから触っても角張った感じがありません。高速道路には急カーブにならないよう緩やかに曲率を上げる緩和曲線が用意されていますが、それの三次元版という感じ。
メーカーいわく、「Jabra Elite 10」は6万2000もの耳の形状を検証し、パーフェクトなフィット感を実現したとのこと。耳穴に入るイヤージェル(イヤーピースの部分)も、フィット感向上のため楕円形になっています。
さらに珍しい要素として、イヤホンそのものがシリコンのような柔らかなカバーで覆われています。これがかなりいい仕事をしていて、一般的なプラスチックなどの硬質素材に比べて、圧倒的に耳が痛くなりにくい。個人的にはここが「Jabra Elite 10」最大の個性だと思いますよ。
フィット感が大事な理由
イヤホンはいい位置にハマってくれないと聞き味が安定しません。イヤホンの性能を引き出せるか否かに、フィット感が影響することがある。音質やノイキャンの消音具合がガラっと変わることもあります(近年はコンパニオンアプリを介して、イヤホンを正しい位置で装着できているかをテストできるものもありますが、あれはとてもいい機能だと思います)。
そういったフィット感の打率が、Jabraはとても安定しているんです。しっかりと装着できているなら、イヤホンが出す音も正しく受け取れるというもの。フィット感が悪いとイヤホンの性能をフルに引き出せないから、イヤホンにおいて装着感が重要になるわけです。
ワイヤレスでの視聴に最適化された「高水準スタンダード」
肝心の「Jabra Elite 10」の音質について触れていませんでしたね。正直言うと、抜群に良いって感覚はなく高水準スタンダードみたいな感じです。音の広がりや解像感は高めで、バックコーラスも埋もれず高音の粒まで見えてきます。
最近ではおなじみの立体音響化機能として、「Dolby空間サウンド」も搭載。体感的な音圧レベルは下がりますが(ボリューム上げれば解決)、臨場感が一気に増大します。アンビエント系にはかなり有効な一方で、ジャンルによってばボーカルやベースが変な位置になる感じも。
コーデックはAACまでしか対応していないためハイレゾには非対応。フラッグシップなのにそこはスルーなんだと思われるかもですが、これもある種の割り切りだと思うんですよ。ワイヤレスイヤホンを使うような環境でハイレゾを味わえるのか、そもそも音源などを揃えているのかと聞かれるとね…。人によっては「そっち向け」の機材は別でお持ちなこともあるでしょうし。
一方でノイキャン性能、こっちはかなりすごいです。大型車が目の前を通過しても目を閉じていれば気づかないほど。高音域に対する消音性も高く、雑談カット性能も高し。かなり自然な消音具合で、やろうと思えばノイキャンの静けさを頼りに眠れちゃいますね。
タッチではなくカチっと押した感のある物理ボタンなのも嬉しい。フラッグシップで物理ボタンを選ぶ、そういうとこもいいじゃない。
「耳への優しさ」をイヤホン選びの軸にするなら、外せない選択肢
耳のかたちは千差万別。自分にとってジャストフィットなイヤホンが、他人にとってそうでないことはザラにあります(ゆえに音質を求めるとIEMのような耳型採取に行き着く)。ゆえに、数多の耳に相応しい医療機器を作ってきたJabraへの信頼はアツいというのが、僕の考えです。
だもんで「Jabra Elite 10最強! これ買えばまちがいなし!」とは耳がもげても言えないのですが、あなたの耳にJabraのイヤホンがハマる可能性は統計的に高いですよ、とは言えます。
イヤホンを選ぶときは、スペックではわからないフィット感を軸にするの、激しくオススメです。最近は家電量販店でもワイヤレスイヤホンの試着ができるエリアもあったりするので、自分の耳の相棒を探す旅に出てみませんか?