スマートフォンやPCがとてつもない速さで高性能化していく昨今。
米GizmodoのKyle Barr記者は、自身が16年前に組み立てたデスクトップPCを分解してみたそうです。ノスタルジアとホコリに溢れたPCの内部を見ながら何を思ったのでしょう。
以下Kyle Barr記者が実際に分解しながら語ったログをご紹介します。
私が今よりずっと若い時代に使っていた古いデスクトップタワーの内部には、3m後ろのソファに座るルームメイトがくしゃみをするほどのホコリが溜まっています。最初に組み立ててから長い時間が経ったことを改めて感じつつ、時を経て自分も30歳になったことを感じました。
時間が必ずしも知恵をもたらすわけではありませんが、感傷は確かに生み出します。
改めて昔のコンピューターの内部を見て気づいたのは、16年前の2008年に私がPC全体に費やした費用は、今日では高性能のGPU1つに必要な金額と一緒だったことです。そんなGPUを搭載したデスクトップPCが売られている今を考えると、今の若者たちが限られた予算で同じようなことができるのだろうかと疑問を感じたりします。
PCゲームをしたくて仕方がなかった
さて、初めてPCを作ろうと決めたとき、私はどんなだったかといえば、当然思春期真っ盛りでした。周囲の人と比べてもPC構築を始めたのは遅かったですし、もっと前に強い興味を持ちながらも、DIYの趣味からは距離を取っていました。
私は高校1年生でXboxに熱中していましたが、中学時代の友人は同じころには、はるかにハードコアなオタクになっていましたね。
当時の私は、コンピューターを使うのに古いHPのラップトップか、父のPCを使用しなければならないという状況にうんざりしていました。とにかくPCゲームをプレイしたくてしょうがないのに。
そこであるとき、SteamをDirectX 7の起動オプションで強制的に実行させて、『Team Fortress 2』をプレイしようと試みました。実際にプレイしてみると、かなり制限されたマップで、フレームレート15fpsで辛うじて動作した後にクラッシュしたのを覚えています。
500ドルの予算で組み上げたPC
当時できるだけ安価なミッドレンジPCを作ろうと決めていたため、パーツのアイデアを得るためにいくつもの異なるブログを見て回りました。
予算の上限は500ドル(約7万4000円)だったのです。ですので、ほんのわずかな違いでも金額をよく見て、すべての部分を慎重に選びました。
専門用語も学ぶ必要がありました。電源ユニットの階層や認証について、放熱グリスの適切な塗布、部品の接地についてなどなど、学ぶ必要があったのです。今見るとグリスの塗り方はひどかったと思いますが…。
GPUにはAMDのATI Radeon 4850を選びました。これはその当時高品質でミッドエンドからハイエンドのGPUで、その赤いデザインは今も記憶に残っていますね。
そうして部品と知識を集めて準備を始めましたが、それでも組み立てにはかなり失敗しましたね。
例えば調達したIntel Core i5 750に付属していたCPUファンは、強く固定されていたので調整しなければなりませんでした。ほかにもマザーボードの向きを変えなければならなかったり、元のRAMの調整がうまくいかず問題が発生したり、簡単にはいきませんでした。
あ、そういえばこのときPCに強制的にインストールしたOSは、あのいわく付きのWindows Vistaでしたね。
アップグレード可能なPCを作りたかった
このPCを作るのに、アルバイトで稼いだお金とこれまで貯めていたお金で賄えました。それでもまだお金に余裕がありましたね。
改めて見ると、私が作ったPCはLEDできらびやかに装飾もしていない、非常に質素で控えめなデスクトップPCであることがわかります。
こだわった点としては、最初からアップグレードができるように設計したことです。
始めはわずか4GBだったRAMも、最終的に8GBまで増やしました。また、GPUもRadeon 4850をもう1枚購入し、CrossFire経由で2枚を同時に利用できるようにしました。
その後、こちらのNvidia GeForce GTX 759 Tiに交換することになります。PCI-Express 2.0のスロットに挿し込まれたまま、ホコリをかぶっていました。
PCを開けてみて改めて見ると、放熱のグリスの塗り方やケーブル類の管理もなかなか雑な仕上がりになってしまっていますが、そのあたりはご容赦ください。
私のデスクトップタワーはそこからさらに進まなければなりませんでした。
というのも、数年して大学に入学するころには、アップグレードしたにもかかわらず、PCの耐用年数はすでに超過していたのです。
その後マザーボードを交換するというめんどくさい作業もありました。しかもCPUファンがサポートされていなかったことに気づいて、追加でCPUファンを購入せざるを得なかったりも。
これはかなり困難な作業でした。
このあたりで停滞していた私を前に進めてくれたのは、故郷を旅立つ友人でした。彼はお下がりのデスクトップを私にプレゼントしてくれたのです。
500ドル以下でPCを組み立てられるのだろうか
ホコリをかぶっていたデスクトップタワーと共に、私自身も歳を重ね、時代もまた変化してきました。私にはゲーム以外にもお金をせがむ趣味があります。
ゲームに関して現在は、PlayStation 5とSteam Deckで満足できています。さらに私は頻繁に移動するので、強力かつ安価なモバイルプロセッサーと、APUを搭載した高性能なラップトップや、その他のポータブルデバイスをよく使います。
現在、主要なGPUやチップのメーカーは、2010年以前に組み立てた私のPC全体と同じか、それ以上の価格の"ミッドレンジ"グラフィックカードを採用する傾向にあります。
確かに8GBのGeForce RTX 4060はある程度のパフォーマンスを発揮し、ほとんどのゲームは1,080pで動作します。ですが、その価格は300ドル(約4万4000円)はするのです。
さらに先日発売された最新のGeForce RTX 4070 Ti Superなどを求める場合は、800ドル(約11万8000円)かそれ以上を支払う必要があります。
例えばPS5やXbox Series Xなどに近い価格でPCを組み立てる方法がないわけではありませんが、それは年々難しくなっていると思います。
簡単にPCをアップグレードするパスも少なくなっていますし、コンポーネントはより高価なものを購入しなければならないのです。
今日のPC構築環境で、私と同じ予算でミッドレンジのCPUとGPUを搭載したPCを組み立てられる人は多くはないと思います。
今、改めて自分で組み立てた古いPCと対峙して、真の低予算ゲームの時代は遠い昔のように感じます。そして私のPCもまた、忘れ去られた古代テクノロジーとして霞んでいく過去の中に沈むもののように感じるのです。