最近あった“スケール”がデカい発見 5選

  • 118,651

  • author かみやまたくみ
  • 福田ミホ
  • 湯木進悟
  • 岩田リョウコ
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
最近あった“スケール”がデカい発見 5選
Image: Schmidt Ocean Insitute, Guo et al., Front. Cell Dev. Biol. 2024, Aston University, NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS Image processing: Kevin M. Gill

物理的な大きさ、規模感、量、タイムスケール。「スケール」にもいろいろあります。

2024年前半、科学技術分野であった「いろんな意味で大きい発見」を4つほど、紹介しましょう。

1. 世界一高いビルの2倍の高さの海底山

1
Image: Schmidt Ocean Insitute

チリ沖の海底から新たに4つの海山が見つかりました

今回発見された海山の高さは5,220フィート(1,591m)から、なんと8,796フィート(2,681m)と推測。ちなみに、世界でもっとも高いビルであるドバイのブルジュ・ハリファはその半分の高さで、2,717フィート(828m)です。

ブルジュ・ハリファより遥かに高い海山が海底に存在するということ…。海って深い。

海底の75%はまだマッピングされておらず、解明されるべきことはまだまだたくさんあります。海洋地図は、地球を理解し、ひいては(地球の)保全と持続可能なマネジメントを確実にするためにも非常に重要だと考えています。

と、10年後までに海底を完全にマッピングするすることを目指す「Seabed 2030」のプロジェクトディレクターのジェイミー・マクマイケル・フィリップス氏は語ります。

2. ジャングルに潜む2,500年前の古代都市がレーダー技術で発見される

5
エクアドルのアマゾン流域
Image: Shutterstock

自動運転車やスマホに入ってるLiDAR(Light Detection and Ranging=光検出と測距)。レーザーを飛ばし、それが障害物に当たって跳ね返ってくる時間を測ることで、道路上の障害物からカメラの被写体まで、いろんな物との距離や立体的な形を把握できます。

LiDARは考古学でもその威力を発揮して、いろんな遺跡の発見や調査に役立ってます。最近南米エクアドルのアマゾン流域では、熱帯雨林の下に隠れた大規模な都市の遺跡が発見されました。

今回Scienceに掲載された論文には、エクアドルのウパノ地域に点在する巨大プラットフォームや広場、街路や道路、農業用排水路などが報告されています。道路システムは「数十kmにも及び、異なる中心的都市部を結び、地域規模のネットワークを形成していた」とあります。この遺跡に人間がいた時期はかなり長く、紀元前500年ごろから、西暦300年〜600年ごろに及ぶと考えられています。

この論文共著者でフランス国立科学研究センターのAntoine Dorison氏は、APに対し「複数都市のネットワークには少なくとも1万人、多いときは3万人もの人が暮らしていた可能性がある」と語りました。排水路があったのも不思議ではありません。ヨーロッパによる植民地化以前の時代、メソアメリカの人々は低湿地を農耕に使えるよう調整して暮らしていたのです。

3. 木星の衛星エウロパ、100万人が呼吸できる酸素を生成していると判明

2
Image: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS Image processing: Kevin M. Gill

人類は地球外知的生命体の存在を発見すべく、これまで数々の惑星探査を試みてきました。

なかでも木星の衛星エウロパには、地表面を覆う氷の下に液体の水があるとされ、二酸化炭素の存在まで明らかに。そして新たに豊富な酸素の存在を突き止めたという研究が発表されました。

木星の周囲の荷電粒子がエウロパの地表面の氷に衝突すると、水素と酸素が生成されているそうです。驚くべきことに、酸素の生成量は24時間ごとに1000トンと推定されています。これは単純計算で100万人が呼吸するのに足る量だということですね。

次なるNASAの観測は、2030年に到達が予定される「Europa Clipper」に委ねられる予定。欧州宇宙機関(ESA)もやはり2030年代に「JUICE」を飛ばし、エウロパの観測が続けられます。これからどんな新発見があるのか、楽しみです。

4. 光ファイバー回線で30万1000Gbps! 超爆速ネットスピードが達成可能に

3
イアン・フィリップス博士と波長管理装置
Image: Aston University

ネットが遅い。待たされる。このストレスって、けっこうありますよね? ですが、そんなストレスを感じることがない光ファイバー回線のブロードバンドが、本当にやってくるかもしれませんよ。

英アストン大学は、トンでもないスピードでのブロードバンド通信を実現したと発表しました。達成されたスピード記録は301T(テラ)bpsとされています。

これは、もう少し身近な単位だと、30万1000Gbpsに相当。もっとわかりやすく、いま日本で非常に高速なインターネット回線というと、10Gbpsの契約を引けると思うんですが、その3万1000倍の通信速度です。これだけあったら、どんな高画質の映画をダウンロードしようとも、一瞬で完了。

日本の情報通信研究機構(NICT)や米国のNokia Bell Labsの協力を得つつ、Eバンド向けに新しく開発された光増幅器での通信テストを実施。C/L/E/Sバンドすべてをフル活用したそうです。

光ファイバー通信で一般的に用いられている波長帯域は、CバンドとLバンドとされています。アストン大学では、これに加えて、新たなEバンドとSバンドも活用することに挑戦(これまでEバンドでの通信を安定的に制御する技術はなかったそうです)。

この技術の本当にスゴいところは、なにか特別な通信網をイチから構築せずとも、既存の光ファイバー回線に使用帯域を追加するだけで、理論的には実現可能な点です。

5. 「あるものがデカすぎるマウス」のイラスト

4
Image: Guo et al., Front. Cell Dev. Biol. 2024

はい、見ての通り、まずナニがデカすぎて笑ってしまうんですが、この画像のポイントはまちがいがあまりに多いことにあります。

ラットの上半身は「senctolic stem cells」と解説されていますが、「senctolic」という英単語は存在しませんし、上半身が「幹細胞(stem cells)」とラベリングされているのはおかしいですね。

ラットの体よりも大きく天に伸びている陰茎らしきものは「Dissilced」と書かれていますが、そんな単語も存在しません

お尻のところには「Testtomcels」とありますが、これも意味を成さない単語です。

右側の拡大図には「iollotte sserotgomar cell」、「dck」、「Retat」とありますが、意味不明なアルファベットの羅列です。

このイラストは、科学ジャーナル「Frontiers in Cell and Developmental Biology」に掲載されたもの。中国の研究チームによる哺乳類の精巣の細胞についての論文が発表されたのですが、その中にAI生成プログラムMidjourneyで作ったこの画像が入っていたのです。

AIの人気の高まりにより、科学的に正確でない画像が科学出版物やニュース記事に登場するようになりました。AI画像は簡単に作成できる上に、視覚的にも美しいものばかりですが、科学の正確さのニュアンスすべてを伝える図表やイラストをAIで生成するのは非常に難しいのです。

今回の論文に関しては、研究そのものは問題なかったのですが、Midjourneyで生成された画像が含まれていることで、研究全体が疑問視されています。